日米首脳会談を受けて思うこと

日米首脳会談。何はともあれお互いリアルは初対面なので冒頭、行われた自己紹介的な二人と通訳だけのプロローグは20分で通訳の手間を考えると実質10分だったとされます。写真を見ると二人のテーブル上には典型的な北米スタイルのハンバーガーがドンと置かれていますが、結局手を付けなかったとも報じられています。

NHKより

あの北米スタイルのハンバーガーは食べ方があります。まず、初めにナイフで半分(あるいは更に半分に)に切り、それから手を放さず、一気に食べるのです。途中でやめると必ず崩れて醜くなります。会食のタブーにカニ料理があります。何故かと言えば殻を割るのに一生懸命になり会話が止まるからです。ならば20分しかないこの会談でなぜ食べにくいハンバーガーだったのか、そのセンスのなさには閉口ですが、それはジョークとしましょう。

今回の日米首脳会談が何処まで踏み込んだものだったのか、報道と実際には差があるはずですのでそのあたりは多少斟酌しなくてはいけません。以下ポイントです。

日米同盟は今まで二国間という観点でしたがインド太平洋という表現が多々出ていることから明らかに地域の安定平和に変わっています。より広い意味で協業していくことを確認しています。台湾海峡への言及もその枠の中です。

次に中国を名指しし、深い懸念を表明したことが上げられます。これは踏み込んだと思います。北朝鮮については非核化についての言及はありますが拉致問題には非常に簡単に触れているだけです。ただ、全体的に北朝鮮問題へのウェイトは小さいように見えます。これは今後、要チェックとなります。

日米関係の深化のために「日米競争力 コアパートナーシップ」を立ち上げ経済、気候変動を含む多岐な分野での提携を進めること、またコロナを踏まえた「ヘルスセキュリティ」の構築も入っています。これは実務ベースでの今後への期待感を込めたものと思われます。

オリンピックについては「総理の努力を支持」「競技に参加する日米両国の選手達を誇りに思う」と述べていることからバイデン大統領はブレーキはかけないものの極めてニュートラルで言葉を選んだ感じがします。

さて、ここからいくつか、予想をしたいと思います。

まず、ワクチンですがファイザーのブーラCEOと電話会談をしています。多分ですが、アメリカの高官からの後押しもあり、日本へのワクチンの供給のアロットメント(割当)が大幅増になることで調整が進むと思います。これはアメリカ土産ですから月曜日以降の株価に影響すると思います。日本は他国と違い、現在許可されているのがファイザー社製だけという弱点を持っています。5月にも他の2社(モデルナとアストラゼネガ)も許可される見通しですが、ブランド好きの日本ではファイザー社製が圧倒的に人気の的になるとみています。

日本と中国の関係はどうでしょうか?今回、アメリカおよびその同盟国との関係強化を十分に確認したので中国とはやや雪解け感があったものがまた凍り付くことになりそうです。その場合、中国に進出している日本企業に圧力がかかる点は留意だと思います。政権が明白な態度をとったことは評価でき、習近平氏の来日はしばらくないとみてよいでしょう。これを受けて韓国の二股外交が再び議論の対象となるかもしれません。

これだけ見ると力強さがありますが、個人的には立派な共同声明ながらも、これを実務ベースで進めていく力が今の内閣にあるのかこれは疑問です。正直、今の組閣は弱くて内外へのアピール度も十分ではないと思います。選挙に打って出るのか、ある意味、やるなら今が最後のチャンスかもしれません。

ただ今、コロナが最悪の状態で大阪の緊急事態宣言も見えてきている中で解散総選挙を企てれば政治空白を作ることで与党への恨み節は尋常ではないものになります。解散総選挙は国民からのスカンを食うと思います。野党も本望ではないでしょう。

日米首脳会談、無難にこなした、ということかと思います。少なくともバイデン氏の就任100日前で28日に予定される施政方針演説の前に実際に会えた唯一の外国首脳という点ではトランプ/安倍会談を含め、日米関係の維持は言葉以上に強固だと感じています。菅総理は少し肩の荷が下りてパワーアップするかもしれません。

今がとにかく脂っこいところ。日本のプレゼンスを会談だけではなく、実利あるものにしてもらいたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月18日の記事より転載させていただきました。