心ときめくJazzの名演名盤/「ジャコ・パストリアス」

奇人・変人と呼ばれた奇才ベーシストで天才コンポーザー、究極のフュージョン・バンドであるウェザー・リポートの一員としても抜群の知名度を持つ、日本では「ジャコパス」の愛称で親しまれたジャコ・パストリアス Jaco Pastoriusが、1976年にリリースしたソロ・デビューアルバムです。

このアルバムでは、創造性あふれるジャコパスの才能が一気に開花した究極のフュージョン・ミュージックが愉しめます。

主役のジャコパスに対して、準主役としてプレイしているのが当時全盛だったピアノのハービー・ハンコック、助演がコンガのドン・アライアスです。パーソネルは、コンボ編成であったりビッグバンド編成であったり曲によって様々です。天才ジャコパスが、フォーマットにとらわれないアルバム制作を行っていた証左と言えます。

[Jaco Pastorius]

1. Donna Lee
2. Come On, Come Over
3. Continuum
4. Kuru/Speak Like a Child
5. Portrait of Tracy
6. Opus Pocus
7. Okonkole Y Trompa
8. (Used to Be a) Cha-Cha
9. Forgotten Love

なんといっても、当時のジャズ・ファンの度肝を抜いたとされる1の”Donna Lee”は、ジャコパスのベース・テクニックを余すことなく聴かせてくれます。チャーリー・パーカー作曲(一説にはマイルス・デイヴィス作曲)の[ビ・バップの名曲]に対して、ジャコパスは自身のエレクトリック・ベースとドン・アライアスのコンガのデュオというユニークなフォーマットを選択しました。スケールとコード・チェンジを巧みに操り、奇抜な音使いとグルーヴィーなリズムで構成される唯一無二のソロ演奏を2分30秒にわたって展開します(詳細は、[Rick Beato 先生の解説]を)。

サム&デイヴのヴォーカル、デイヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー、ハワード・ジョンソンのサックス・トリオ、ランディ・ブレッカーのトランペットというオール・スターを揃えた2は聴きどころ満載です。

ジャコパス作曲の”Kuru”からハービー作曲”Speak Like a Child”に続く変化に富んだ展開の4、ウェイン・ショーターのソプラノ・サックスにハービーのフェンダー・ローズが絡む6も素晴らしいの一言に尽きます。

ストリングスをフィーチャーした9はジャコパスの甘く切ない美しい感性をたっぷりと聴かせてくれます。アルバムで表現したアートな物語の最後を飾るに相応しい佳曲です。

光眩しい美しい新緑の季節を愉しむには欠かせない快適な傑作アルバムです!


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2021年4月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。