インドでコロナの感染爆発が起こっている。毎日30万人が感染し、3000人が死亡するという昨年のヨーロッパと似た状況だ。その原因がインドで変異した新型コロナウイルスの「二重変異株」だという人がいるが、これは疑問である。モンゴルの感染増加率はインドより急速で、これは変異株が原因とは考えられない。
図2:アジア各国のワクチン接種率(累計)
タイとカンボジアでも感染が増えているが、これはインド変異株の影響があるかもしれない。感染爆発の起こっている国の共通点は、ワクチン接種率の高いアジアのBCG接種国である。ワクチン接種の始まる3月まで感染ゼロに近かった国で感染(および死亡)が急拡大しており、時系列にも強い相関がみられる(図2は累計であることに注意)。
ファクターXは消えたのか
これまでアジアのコロナ感染率が低い原因の一つとして、BCGによる訓練免疫などのファクターXが想定されたが、これはインド変異株にはきかないのかもしれない。むしろアジア特有の条件がワクチンの副反応に悪い影響を与えている疑いもある。
今のところワクチン接種者に感染が増えたというデータはないが、接種者がスプレッダーになる可能性もある。ワクチンの種類との関係もはっきりしないが、インドではアストラゼネカと国産ワクチン、モンゴルではアストラゼネカと中国製ワクチンが多い。
いずれもmRNAではない従来型(不活性化)ワクチンで、インフルエンザでは3年ぐらいかかる治験を半年ぐらいで(ほとんど欧米人で)すませたので、アジア人に副反応が出ることは考えられる。
これはあくまでも統計データの話であり、この原因としてどういう医学的なメカニズムがあるのかは今のところ不明である。ワクチンのリスクを誇張する意図もないが、2月までこれらの国の感染率は日本より低かったことに注意が必要である。
もしファクターXがインド変異株にはきかない、あるいはワクチンによって無効化されるとすれば、これからワクチン接種の本格化する日本が、アジア諸国の後を追う可能性もゼロではない。専門家による原因の解明を期待したい。
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【追記】WHOが変異株についての報告を出した。それによると、変異株には大別すると3種類あり、インドで増えている変異株B.1.617には、イギリスなどで見つかった変異株L452、P681R、E484Kの3種類の変異がみられる。
ワクチンは新型コロナウイルスの「スパイク蛋白質」に反応するので、ワクチン接種が増えると、そのきかない変異株が増えることは考えられる。インド型の感染力は従来型より弱いとされるが、変異株のスパイクは従来とは異なるので、ワクチンの効果が弱まる可能性がある(WHOは効果があると発表している)。