東京五輪は客観的検証の上で、来年秋に再延期を

■無観客による赤字は税金で穴埋め?

オリンピック・パラリンピックを観客制限あるいは無観客で開催した場合、資金不足となり、最終的に、国民が税金で穴埋めする可能性があるのではないか?

10日に行われた衆議院予算委員会で、菅総理に質問しました。

たまきチャンネル」より。オリンピックの質問は6:53あたりから

既に外国人観客を入れないことは決まっています。さらに、日本人観客についても入場を制限したり、完全に無観客の可能性も十分考えられます。その場合、期待されたチケット収入(900億円)は入ってこないし、「バブル方式」と言われる完全隔離の感染症対策を講じるためには、追加の費用も当然かかることになります。

つまり、コロナ禍の中でのオリンピック・パラリンピック開催は、「完全な形」で実施する場合に比べて、収支が悪化することは明らかです。そして、立候補した際の契約によれば、資金不足が生じた時には、一義的には組織委員会が、次に開催都市である東京都が、そして最終的には国が負担することとされています。(財政保障)


東京都「東京2020オリンピック・パラリンピック 競技大会における業務と経費について」(平成28年12月)より

1年延期で既に追加負担(2940億円)が生じていることやチケット収入が見込めないことから、組織委員会に潤沢なお金はありませんし、コロナ対策に多額の予算を使った東京都にももうお金はありません。したがって、資金不足が生じた場合には、国、つまり国民の税金で穴埋めする可能性が高いのです。

そこで、国として、現時点でどのような収支予測を行っていて、最終的に国民負担が発生するかどうかを菅総理に質問しましたが、総理からは、

収支と支出なども含め、大会運営の主体である組織委員会で、現在、様々な想定をしながら準備を進めているものと承知している。

と他人事のような答えしか返ってきませんでした。残念です。

もちろん税金による穴埋めの有無だけでなく、オリンピック・パラリンピック開催によってコロナの感染がさらに拡大し、国民の生命と健康を脅かすことはあってはなりません。

■7月開催の可否は、客観的に判断すべき

東京オリンピックまで約70日となった現在、組織委員会、東京都、国、そして国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)は、観客の入場を制限した形での大会開催を前提に準備を進めています。しかし、私も大学時代に陸上部で十種競技をやっていたのですが、多くのアスリートの皆さんも、観客の大きな声援のもとで最高のパフォーマンスを披露したいのではないでしょうか。

だからこそ、昨年3月に1年の延期を決めた際に安倍前総理が述べた「完全な形」、すなわち「規模は縮小せず、観客にも一緒に感動を味わっていただく」形での開催が望ましいと考えます。「不完全な形」で本年7月の開催を強行するのでなく、いつなら「完全な形」で開催できるのか、また「完全な形」で開催するための客観的基準は何なのか、以下の3つの観点から検証・判断する必要があります。

【東京五輪開催の3条件】
①コロナで逼迫する医療提供体制への負担
②追加の国民負担(税金による穴埋めの有無)
③実効性のある感染症対策、水際対策

■来年秋に再延期して「完全な形」で開催を

政府は、医療関係者を含む関係者をメンバーとした第三者機関を速やかに設置し、上記3つの観点から、予定どおり7月に開催できるかどうかを今月中に検証し、困難だと判断した場合には、再延期すべきです。

再延期の幅については、今後、必要なコロナワクチンが供給され、国民の多数が接種している状態になれば、来年には感染が抑え込まれ、医療提供体制への負荷も軽くなっていると期待されること、またアスリート・ファーストの観点から酷暑を避けるために、来年秋に開催することを提案します。

なお、開催の判断は最終的にはIOCの権限ですが、開催都市契約の第71条には「予測できない困難が生じた場合、組織委員会は合理的な変更を考慮するようIOCに要求できる」と規定されています。昨年延期を決定したように、我が国にも実質的な権限はあります。

日本人の命と安全や納税者負担に責任を持ち、組織委員会の顧問会議議長でもある菅総理は、「合理的な変更」として再延期をIOCに要求すべきです。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2021年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。