米4月小売売上高は前月比横ばいと、市場予想の1.0%増に反する結果となった。前月の10.7%増(9.7%増から上方修正)から急速に伸びを巻き戻し、過去6ヵ月間では3回減少、2回増加。1回横ばいに。3月は、①20年12月末に続き21年3月に成立した追加経済対策を通じて支払われた現金給付、小②ワクチン普及、③大寒波を受け急減した前月の反動――などの要因で大幅増となったが、4月は勢いを失った格好だ。米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値で購入見通しが低下していた結果と、整合的だ。
自動車とガソリンを除いた場合は前月比0.8%減と、市場予想の0.6%増からマイナスに転じた。前月の2.4%増(2.1%増から上方修正)から、遠く及ばず。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は1.5%減と、市場予想の0.2%減より下げ幅を拡大。前月の7.6%増(6.9%増から上方修正)を下回り、過去6ヵ月間で4回目の減少となる。
前月比の内訳をみると、主要13カテゴリー中5項目増加し、前月の13種全てから減少した。今回、最も力強く増加したのはワクチン普及や経済活動の再開を背景に外食で、続いて自動車・部品、電気製品など3月に続き裁量消費が並んだ。逆に服飾や一般小売、スポーツ用品などは減少、ガソリン価格が上昇するなかでもガソリンスタンドも弱い。前月比の項目別詳細は以下の通り。
(プラス項目)
・外食→3.0%増、2ヵ月連続で増加<前月は13.5%増と20年6月以来の高い伸び、6ヵ月平均は2.7%増
・自動車/部品→2.9%増、2ヵ月連続で増加<前月は17.1%増と20年5月以来の高い伸び、6ヵ月平均は3.6%増
・電気製品→1.2%増、2ヵ月連続で増加<前月は17.5%増と20年7月以来の高い伸び、6ヵ月平均は2.2%増
・ヘルスケア→1.0%増、2ヵ月連続で増加<前月は8.0%増と20年6月以来の高い伸び>前月は1.1%減、6ヵ月平均は1.4%増
・食料/飲料→0.4%増、2ヵ月連続で増加<前月は0.7%増と過去5ヵ月間で3回目の増加、6ヵ月平均は0.5%増
(マイナス項目)
・建築材/園芸→0.4%減<前月は13.9%増と20年5月以来の高い伸び、6ヵ月平均は2.9%増
・無店舗(主にネット)→0.6%減<前月は4.7%増、2ヵ月ぶりの高い伸び、6ヵ月平均は1.2%増
・家具→0.7%減<前月は5.9%増と2ヵ月ぶりの高い伸び、6ヵ月平均は2.3%増
・ガソリンスタンド→1.1%減、5ヵ月ぶりに減少<前月は10.2%増と4ヵ月連続で増加し20年6月以来の高い伸び、6ヵ月平均は3.7%増
・雑貨→1.1%減<前月は10.2%増と20年6月以来の高い伸び、6ヵ月平均は2.3%増
・スポーツ用品/書籍/趣味→3.6%減<前月は24.2%増と20年6月以来の高い伸び、6ヵ月平均は3.6%増
・一般小売→4.9%減<前月は9.7%増と2ヵ月ぶりの高い伸び、6ヵ月平均は1.0%増(百貨店は1.9%減<前月は12.6%増と2ヵ月ぶりの高い伸び、6ヵ月平均は1.9%増)
・服飾→5.1%減<前月は22.7%増と20年6月以来の高い伸び、6ヵ月平均は2.5%増
チャート:4月の業種別動向、現金給付やワクチン給付、経済活動の再開を支えに全て増加
――4月の小売売上高は、まさにサクラサクといった3月とは概ね正反対の展開を迎えました。ただし、20年2月以来の水準を戻していないカテゴリーは、引き続き外食のみ。2月にマイナスだった電気製品と服飾は、3月でプラスに転じたままとなっています。スポーツ用品などや自動車・部品などを始め、ペントアップディマンドの一服を表すか注視する必要がありそうです。
チャート:20年2月時点との比較
貯蓄率が上昇した分、ワクチン普及や経済正常化に伴い消費にまわすとの期待を低下させてしまいました。アメリカ人は前述した米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値の結果通り、インフレ懸念により財布の紐を固めたリスクをはらみます。一方で、サプライチェーンの途絶などで資材価格が高騰するだけに、需要爆発に伴うインフレ加速が回避されるという楽観シナリオもあらためて浮上。Fedは次のFOMCまであと1ヵ月の間に、どのようなサインを送るのでしょうか。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年5月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。