契約の電子化に反対の朝日新聞は社会の流れに逆行する

朝日新聞は5月31日付で「契約の電子化 消費者保護に逆行する」という社説を掲載した。「消費者と業者が取り交わす契約書面を、消費者の承諾を条件に、電子メールなどで交付できるようにすること」は不適切だと主張している。

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それでは、契約の電子化は消費者保護にどんな問題があるというのだろうか。朝日新聞の主張は次の一文に集約されている。

電子化は時代の流れだが、紙に比べて内容の点検がおろそかになりがちで、手元に実物が残らない欠点もかかえる。

まずは内容の点検について。消費者は紙の契約書であれば熟読するのだろうか。そんなことはない。消費者は電子的な契約書を斜め読みで済ますかもしれないが、紙の契約書も消費者の大半は真面目には読まない。

少々古いが内閣府の世論調査(2013年)によれば、契約書の「内容を理解するまでよく読む」と答えた者の割合が16.2%,「ざっと読む」が40.3%,「その時々で違う」が21.2%,「ほとんど読まない」が21.2%だった。その前の1998年調査と比較すると、「内容を理解するまでよく読む」は25.1%から16.2%に低下し、一方、「ざっと読む」は31.3%から40.3%に上昇したそうだ。

不動産取引では重要事項説明のオンライン化が先般3月に本格実施されたが、これは対面での説明とオンライン説明は等価と国土交通省が認めたからだ。

紙であれば内容の点検が進むという根拠はどこにあるのだろう。

次に手元に実物が残らない点について。社説は「ジャパンライフ事件が摘発されたが、契約書面があったため、弁護士や消費生活相談員が不当な内容に気づくことができた。これがメールでもよいとなれば、察知が遅れたり被害立証が難しくなったりすることが考えられる。」という。

弁護士や消費生活相談員はメールを読めないというのであれば、この主張は正しいが、今そのように言うのは弁護士や消費生活相談員を侮辱することだ。

電子契約が成立するには「消費者の承諾」が必要だが、「ネット利用に不慣れな人が業者に誘導されて安易に与えてしまう恐れ」があると社説は言う。しかし、ジャパンライフ事件も業者に誘導されて契約してしまった結果ではないか。

契約の電子化に反対する朝日新聞は社会の流れに逆行しているとしか思えない。