菅総理との初の党首討論で大規模経済対策を提案

6月9日に菅総理とは初めてとなる党首討論を行いました。

まず、東京五輪について聞きました。菅総理は安心・安全と言うばかりで具体策が見えないから国民は不安になると指摘した上で、感染拡大防止と経済社会活動の両立を図る方策として2つ提案しました。

ワクチン・パスポートの五輪への先行導入

1つ目として、ワクチン接種歴や検査陰性をQRコードで証明する「ワクチン・パスポート」について提案しました。

世界では、自由な移動や渡航の切り札として、導入が進んでいます。国民民主党は4月9日にまとめた「コロナ三策」で、検査陰性やワクチン接種を証明する「デジタル健康証明書」を導入し、併せて差別等を防止するガイドライン作成などの制度設計を検討することを提案していました。

先週(6月4日)のG7保健大臣会合でも、「デジタル健康証明書」を多国間での相互認証に取り組むことが合意されました。であれば、安全・安心を確保するための水際対策として、「ワクチン・パスポート」を東京五輪で先行的に導入してはどうか、と総理に提案しました。

菅総理からは、ワクチン接種記録については世界でもいろいろな動きが出ており、官房長官の下で検討しているとの答弁で、五輪に先行導入するかどうかについては明確な答えはありませんでした。五輪関係の入国者には全員、ワクチン接種を義務付けるくらいのことをしなければ、選手や大会関係者間の感染を抑えることはできません。逆に、全員接種していれば、管理もシンプルになります。

GPSによる行動管理は本当に「厳格」なのか

2つ目は東京五輪で最大9万人ともいわれる入国者の水際対策についてです。

立憲民主党の枝野代表との討論の中で、菅総理は「海外メディアについて、スマートフォンのGPS機能などで厳格に行動管理をする」と述べましたが、これは現在でも「特段の事情」により今も1日平均1,500人以上入国している外国人や日本人帰国者に要請している内容と実は同じです。

OELアプリによる1日2~3回の位置情報確認はスマホを友人に預けて外出することも可能ですし、Googleマップ等による位置情報履歴の保存も陽性になった場合に行動履歴を事後的に確認するためのものに過ぎません。

もし現在の水際対策によって入国者を「厳格に行動管理」できているなら、島国の日本で次々と新たな変異株が発見、流行することはないはずです。つまり、不十分と言われる現在の水際対策をそのまま五輪にも適用すると言っているだけなのです。

これでは五輪で押し寄せる最大9万人の選手や大会関係者、メディアなどの「厳格な行動管理」はできないと総理に指摘したところ、担当大臣に確認するとの答弁が返ってきました。日本国民の生命と安全を預かる総理として極めて心許ないと言わざるをえません。

世界の経済回復に遅れを取る日本

次に、日本が世界の経済回復に遅れを取る中での大規模経済対策の必要性を提案しました。

5月末に発表されたOECD(経済協力開発機構)の最新の世界経済見通しによれば、今年の日本の経済成長率はG7だけでなくG20でも最低になっています。さらにワクチン接種が進んでいるはずの来年でも、G20で下から2番めという深刻な事態です。菅総理はワクチン接種に血眼になっていますが、今後ワクチン接種が進んだとしても日本は世界の経済回復から取り残されつつあるのです。

米国の高成長には理由がある

米国は高い経済成長が見込まれていますが、それには理由があります。バイデン政権は、ワクチン接種が進み始めた今年3月の段階で、1人約15万円の追加現金給付を含む約200兆円の大型経済対策「米国救済計画」を実施に移しました。ワクチン接種の進展による経済活動再開のタイミングに合わせて、しっかり経済対策を打っているのです。これはイエレン財務長官の唱える「高圧経済」の考え(5月31日のブログを参照)に基づくもので、世界の経済政策の潮流も積極財政に大きく転換しています。しかし、日本だけが、コロナという危機にあっても、財政健全化を気にして経済対策が小出しになり、しかも遅く、インパクトに欠けるものになっています。

日本もワクチン接種が進む今こそ大型経済対策を

日本も、ワクチン接種が軌道に乗り始めた今こそ、コロナで困っている事業者や個人、特に、若い現役世代を全力で支えることが必要です。総理には、今国会を延長し、国民民主党が主張する、現役世代への10万円追加給付を含む最低でも30兆円規模の補正予算を編成すべきと提案しました。

しかし、菅総理からは「昨年度の補正予算など約30兆円を新年度に繰り越しているので、そうした状況を見てから」との答えしか返ってきませんでした。

これに対しては「基本的認識が間違っている」と厳しく指摘しました。そもそも昨年度(令和2年度)の予算は3月31日までに執行しておくべきものであって、余っているから次の補正予算が編成できないというのは、「本来やるべき宿題ができていないから、次の宿題もできません」と言っているようなものです。届けるべき支援は速やかに届けた上で、次の対策を打つべきなのに、残念ながら菅総理の答弁には世界経済から取り残されることへの危機感も、打つべき経済対策のスピード感もどちらも欠けていました。

総合支援資金はさらに延長すべき

最後に聞いたのが、月最大20万円の貸付が無担保・無利子で受けられる「総合支援資金」の延長です。緊急事態宣言は3回目なのに、支援策はだんだん小さくそして複雑になるばかりです。今回、新たに設けられた30万円の「生活困窮者自立支援金」も対象が20万人と狭すぎます。今、私の元にも「総合支援資金」の3ヶ月延長の要望がたくさん来ています。何とかもう3ヶ月分60万円、貸付枠を拡大して欲しいという切実な声です。

最後に、その声に応えて欲しいと総理に答弁を求めましたが、総理の手は挙がらず、持ち時間が終了となりました。とても残念です。

党首討論はやはり必要

5分間と大変短い党首討論でしたが、皆さんからいただいた思いをできるだけ総理にぶつけようと最大限挑戦してみました。まだまだ、菅総理と議論したいことが山ほどあります。感染が収束していない段階で、国会だけ閉会して夏休みというわけにはいきません。国会を延長し、大規模経済対策に必要な予算と病床確保に必要な法律を成立させ、コロナ危機に対する立法府としての責任を果たさなくてはなりません。政府・与党に通常国会の大幅な延長を求めていきます。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2021年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。