読売新聞オンラインが『不適切な「自撮り」できないスマホを…政府、事業者に要請』と6月12日に伝えた。
スマートフォンで裸の写真を送らされる「自画撮り」の被害が拡大していることを受け、不適切な写真を撮影できない技術をスマホに取り入れるなどの取り組みを事業者に促した。
というのだが、本当だろうか。
記事のもとは、政府が6月7日に決定した『青少年インターネット環境整備基本計画(第5次)』である。
基本計画には、不適切な写真を撮影できない技術などとは書かれていない。あるのは、「青少年保護・バイ・デザイン」を念頭に置いた新たな機器等の開発を事業者に求めていくということだけである。「青少年保護・バイ・デザイン」とはわかりにくい表現だが、要するにデザインの段階から青少年保護に留意するという意味だ。
読売新聞は、「青少年保護・バイ・デザイン」から想像を膨らませすぎたようだ。
基本計画には、「SNS事業者等による自主的取組の促進」という項目もある。
不適切な写真を送るようにと求める「悪いおじさん」たちはSNS上を跋扈しているが、「悪いおじさん」を見つける技術はすでに存在する。僕が責任者を務める『安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築』研究開発領域で、東京大学の鳥海不二夫氏らが開発した技術がそれだ。
SNS上のほとんどのメッセージは、家族や友人といった限られた人の間で交わされる。これに対して、「悪いおじさん」は、これはというターゲットを見つけると、知らない相手であってもDMを送信する。
このメッセージの送り方のパターンに注目すると、メッセージの中身を見ることなく、「悪いおじさん」と疑われる利用者が早期に検出できるというわけだ。
「自撮り禁止スマホ」よりも「悪いおじさん」への警告・排除機能のほうが導入は容易で効果が期待できるだろう。