何処に行く、原油、ビットコイン、ドル円、金の相場

原油、ビットコイン、ドル円、金(ゴールド)の相場の関連性は直接的にはないのですが、今、その動きがそれぞれ注目されています。ドル円は1年3か月ぶりに111円台を付けたと報じらています。原油は2018年以来の高値でさらに上昇し、この先100ドルをつけるとされます。ビットコインは3万ドルがアルマゲドン(=宗教的な意味合いの終末を意味する)とされ、一時29000ドルすら割り込んだもののその後、急伸し23日NY時間昼頃で34000ドル台をつけています。

金(ゴールド)はこのところ、スポットライトが当たっていないのですが、実はある秘めたテクニカルな背景があり、今後、注目される公算があるのですが専門家の意見はまっ二つに割れています。

先週金曜日のブログではパウエルFRB議長の発言を機に大乱調をきたした株式市場に関して次のようにコメントさせて頂きました。「株式市場はどうなるか、ですが、このショックからはほどなく立ち直るとみています。よく考えればパウエル氏の記者会見でまた爆弾を落とされたものだということに気がつくのでしょう」。実際、ナスダックは23日に史上最高値、S&Pも最高値圏に戻しています。

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長年、投資をしていて最近変わったな、と思うのは長期的視点はともかく、短期的視点がぶれまくっていることでしょうか?原油は昨年4月に相場がマイナスになりました。私はあの時、テクニカルな理由なので戻ると申し上げました。そこまで追い込まれたのは心理面が大きく、悪材料に対して過剰反応を示した典型的例でありました。メディアはそれに追い打ちをかけるようなネガティブトーンの記事を打ち込まくりました。こういうのを「ニュースの順張り」と私は称しています。悪い時にはもっと悪い雰囲気の記事を出すと読み手が増えてメディアにはプラスなのです。一方、私はそこで原油関連に資金をどっと振り向けたのです。一部は売却しましたが多くはまだ買い持ちです。

なぜ、原油関連をいまだに買い持ちするのかといえばSDG’sでバイデン政権のアメリカでは投資家も銀行もシェールオイルにはカネを出しにくい、だからアメリカの産油量は激減し、原油相場の主導権はOPECの動向が再度注目されるだろうと。そしてOPECプラスワンのロシアはあまのじゃく的でありますが、多分、これぐらいの原油高では満足しないだろう、よって一定の減産で妥協し、原油高を継続させ、連れ高となるガス価格の上昇を狙っているとみています。

ビットコインはどうでしょうか?この数日の動きは中国当局のビットコイン採掘に対する規制強化に伴う下落であります。世界のビットコインの7割を採掘するとされる中国は今年、電力事情が悪化しています。ビットコインの採掘エリアの電力事情とどう関係するかは別としても政策的にやらせないようにするわけです。これを衝撃的なネガティブニュースと捉えた市場は4万ドルを越えていたところから一気に30%近く下げるのです。これも心理面なのですが、多分暗号資産の投資家は「中国がビットコインを潰そうとしている」と思ったのだろうと察しています。

これは解釈の仕方が違います。中国はビットコインのような無政府型で担保価値もない暗号通貨を支持せず、「デジタル元」を前面に出すという政策の強い意志の表れであります。アリババの金融子会社の上場を直前で止めさせたのは習近平氏とされますが、それが事実かどうかはともかく、中国で許されるものは中国政府、共産党が認知し、完全支配するもの以外は駄目という姿勢であります。

ではビットコインのマイニングが中国でシャットアウトされたらどうなるか、と言えば一つは西側諸国のコントロール下になること、採掘の方法で環境負荷を下げたものがどんどん生まれていることで長期的にはプラスの効果が出るだろうというのが私の読みです。

ではドル円。自国通貨安を喜ぶのは先進国では日本ぐらいなのですが、昨日のブログの通り海外の製品、原材料の価格が高くなるだけではなく、購入できなくなるリスクがあるのです。円安に向かうということは通貨としての魅力がないともいえるのです。かつて円が買われたのはスイスフランと同様、安全通貨という意味合いでした。昨今の世界情勢で安全通貨が俎上に上がらなくなったのは政府紙幣を代替する暗号資産や資金のヘッジ方法が増えてきたことがあります。

いわゆるドル相場は世界の主要通貨に対して基本的には弱含みなのでシーソーの関係にある日本円は本来なら買われなくてはおかしいのにそれでも円安に振れるということは日本のファンダメンタルズと日本の政策姿勢が世界に届いていないということだと思います。但し、ご記憶にあるかと思いますが、主要国の為替が年間何十%も動いたのはふた昔前で今は年間5%から動いても10%ですので円安がこのままどんどん進んでいくとも思えないのです。

最後に金(ゴールド)ですがこれは6月28日から欧州の銀行に適用され始めるバーゼルIIIに答えがあります。国際的金融機関の健全性を維持し、金融危機への対応強化を図るバーゼル規制の第3弾です。この規制の中で金を含むプレッシャスメタルがティア3からティア1に変更されるのです。ティア1は現金と同等資産です。それまではリスク資産だったのが現金同等になるわけです。これでなぜ金が買い上げられることになるか、風が吹けば…的な要素もあり、非常にテクニカルなので説明は省きますが、現金同様になれば金を取引する銀行は一定比率の金を確保しなくてはならなくなるため、買わざるを得ないというのが上がると主張する側のシナリオです。

お前はどう思うのか、と言われるとわかりません、としか答えられないです。理由はあまりにも多くのファクターが内包しており、銀行や金取引事業者が金をバーゼル規制に基づき金の持ち高修正に動くのか、「やーめた」というのかわからないのです。

上記にあげた4つの例は投資や相場のごく一面です。つまり、これだけの魑魅魍魎とした世界が渦巻いている中で裏の裏をかきながら相場を読みぬくのはもはや素人には厳しすぎる時代になったともいえます。ミセスワタナベが最近おとなしくなったのも為替FXはあまりにも難しく、そのリターン/リスクのレシオが悪すぎるのです。北米で一部のミーム銘柄に個人投資家が突っ走るのは背景が極めてシンプルだからともいえそうです。

政府は個人にも投資の促進を図っていますが、私のように46年も相場の世界にいて、明らかにレベルは格段に難しくなったと感じている中、初心者にはハードルが高すぎる気がしないでもありません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年6月24日の記事より転載させていただきました。