黒坂岳央(くろさか たけを)です。
先日、人気YouTuber31人が緊急事態宣言下で飲酒を伴う大宴会をしたことで、謝罪に追い込まれる事態が起きた。さらに謝罪動画は通常の動画以上に再生回数と視聴維持率が増す傾向があり、そこで広告を付けたことで「さすが転んでもただでは起きない」「反省していないのでは?」と揶揄する声も見られた(尚、広告はYouTubeプラットフォームが自動的に付けたとする説もある)。
そんな中、YouTuberのゆゆうた氏が自身の動画チャンネルで「世間はYouTuberを過大評価しすぎ。彼らは影響力を持ってしまっただけの素人に過ぎない」とバッサリ切った。その様子はネットメディアでも取り上げ、話題を呼んでいる。「YouTuberはもっと過小評価されるべき」というのは、同業者が言うからこその説得力があるし、筆者も小さな小さなYouTube動画チャンネルを運営する一人として、この主張に賛同できる。
芸能人とYouTuberの違い
近年において、肌環境レベルでYouTuberの有名人化が進んでいると感じる。筆者の周囲の10代、20代の若者からは「憧れの人物」はYouTuberの名前が出てくる。かつてはこれがテレビに出演している芸能人だった。
YouTuberと芸能人、同じ有名人だが似て非なる存在と言える。それは芸能人は、パブリックの場に出るプロだということだ。所属事務所のルールに従う必要があり、スポンサーとのCM契約や出演番組などが絡んでくる。テレビ番組など、公の人の目に触れる振る舞いを理解している。だが、YouTuberは違う。普通の一般人がYouTubeというプラットフォームを通じて、動画に出演しているだけに過ぎない。YouTubeの規約違反をしなければ、しがらみも忖度も必要ないのだ。
芸能人はパブリックの表舞台で振る舞う、「作られたプロ」であるのに対してYouTubeは「素人」だ。
YouTuberはチャンネル登録者が多い方が偉い
ゆゆうた氏は「YouTuberにはチャンネル登録者が多い方が偉い、という気持ち悪い縦社会がある」と言っている。確かに視聴者からすると、「YouTuberの格」のようなものが内容ではなく、チャンネル登録者の数字で判断される節があるだろう。また、同氏は「チャンネル登録者の多いYouTuberが、少ないYouTuberを罵倒している」という。
ネット社会においては、SNSではフォロワー数、YouTubeではチャンネル登録者数がその人の持つ影響力の判断基準になる傾向がある。厳密なことをいえば、ネットメディアをビジネスで活用する上では視聴者の「数」ではなく、属性との「質」こそが重要だ。しかし、こと影響力の範囲だけでいえば、数は武器に成る点は否定できない。
YouTuberの格はチャンネル登録者で判断されるのが、実情だろう。
YouTuberは勘違いする?
これをいうと批判を受けるかもしれないが、筆者は「YouTuberはファンとの交流の中で自分が偉いと勘違いしてしまう要素がある」と感じている。もちろん、ほとんどのYouTuberは謙虚であり、そのような勘違いをする人は極めて限定的であると考えている。だが、ゼロではないだろう。チャンネル登録者が増えることで、あたかも自分が芸能人になったような勘違いをしてしまうYouTuberも出てくる。しかし、本人の立場になるとそれも無理からぬと感じる。その裏付けを話したい。
上述の通り、筆者もYouTube動画を運営している。過去記事では、視聴者側が知らない「YouTuberだけが見えている風景」というものを書いたことがある。有名人YouTuberと比べると規模は極めて小さく、えらそうな振る舞いなどするつもりは毛頭ない。だが、自分のような「超」が付く弱小YouTuberでも、「自分はファンだ」と言ってくれる相手がおり、特別扱いを受ける。リアルセミナーを開くと、サインや握手、記念写真を求められ「先生」と呼ばれ、一部の視聴者からは熱烈な応援メッセージやご当地グルメの贈り物まで来る。筆者のような小規模でこうなのだから、有名人ともなるとどうなっているのかもはや想像もできない
このあたりの話は、チャンネル登録者の数だけではない。YouTubeというネットメディアに「見える化」しているか否かの話だ。筆者の知っているブロガーは、パニック障害に苦しむ様子をブログ記事に綴って克服する奮闘記を書いていた。結果、熱烈な読者のファンが付いたという。オフ会を開けば数十人が押し寄せ、とうとう熱心な読者と結婚してしまった。この人物は別に有名ブロガーなどではないが、それでも熱心なファンが付くものなのだ。
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筆者は「YouTuberは過大評価されている」という自己認識は必要だと感じた。「自分はマーケットから過大評価されている素人に過ぎない」と自覚しておくことで、行き過ぎた行為で炎上することもなくなるだろう。
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