コロナワクチン接種後の死亡は、本当に無関係なのか?

鈴村 泰

コロナワクチン接種後に死亡した人は、厚労省の発表では、7月2日の時点で556人です。6月27日までの453人の報告例の分析では、因果関係が否定できないものが1件、情報不足等のため因果関係が評価できないものが451件となっています。簡単に言えば、「ワクチンが原因で死亡した可能性がある人は、一人のみ」と、厚労省は公表しています。

taa22/iStock

この見解に対して、一部の医師や週刊誌(123)が、疑問を投げ掛けています。疑問の主たる根拠は、死亡は接種後3日以内が多いという事実です。厚労省が主張するように、これらの死亡が偶発的なものとするならば、接種から死亡までの日数は、もっと均一になるはずです。

根拠は他にもあります。555例の死亡者の詳細なデータが公開されています。接種回数に着目してみます。接種1回目後の死亡が397例、2回目後が127例、不明が31例となっています。偶発的死亡であれば、1回目と2回目は、ほぼ同数となるはずです。ただし、この時点で2回目の接種を終えた人が少ないため1回目の死亡が多くなった可能性があります。今後、このデータがどのように変化していくか、確認が必要です。

次に、ワクチンと死亡が、どのように関係するか考察してみます。死因で多いのは、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などです。これらの疾患の主な原因は、動脈硬化です。そして、身体的・精神的ストレスが誘因(引き金)の一つとされています。コロナワクチンはインフルエンザワクチンに比べて、発熱や倦怠感などの強い全身性の副反応が生じやすいという特徴があります。強い副反応は、強い身体的ストレスとなります。したがって、副反応が脳出血などの発症の誘因になる可能性は十分にあります。

アストラゼネカ製ワクチンでは、ごく稀に血栓症が生じる事が報告されています。ファイザー製ワクチンでは、現時点では同様の報告はありませんが、微小血栓が生じる可能性は否定できません。微小血栓の発生は、脳梗塞や心筋梗塞の発病確率を高めます。

死亡例については、専門家が分析しています。偶発死亡例とワクチンによる死亡例を、正確に鑑別できるどうかについては、個人的には大きな疑問があります。「ワクチン接種の因果関係は、個々の症例では証明できない」と解説している医師もいます。そこまで断言できるかどうかの是非はともかく、鑑別は多くの場合、困難であるのは確かです。どのような所見を満たしますと、因果関係ありとなるのか、不明な部分が多いです。その証拠に、専門家の判定は、ほとんどγ判定(評価不能)です。因果関係の判定は、ランダム化比較試験や死亡率の例年との比較によって成されるべきものなのです。

厚労省が、ワクチンと死亡が無関係と考える最大の根拠は、例年と比べて、脳出血や心筋梗塞などの死亡率の上昇がない事です。ワクチンが死亡の原因と考えた場合は、この理屈は成立します。しかし、ワクチンが死亡の誘因と考えますと、話は違ってきます。近い将来に死亡する危険があった人が、ワクチンが誘因となり、発病し死亡した可能性があるわけです。この場合、数日から数週間ほど死期が早まっただけで、死亡者数は変化していません。一定期間で死亡率を比較した場合に、あまり差が生じない事になります。したがって、死亡率の上昇がない場合、原因の可能性は否定できても、誘因の可能性までは否定することはできません。国内での突然死は、年間約9万人、1日だと約247人と推定されており、決して荒唐無稽な話ではありません。

「ワクチンは、死亡の原因とは言えないが、誘因の可能性がある」と、私は考えています。ただし、成人のワクチンの中止や延期を提言するつもりは全くありません。何故ならば、死亡者数は激減しており、現時点ではメリットがデメリットを上回るからです。

問題は遺族感情です。ある日突然死亡した場合は、遺族は運命だったと諦めがつきます。しかし、ワクチン接種の翌日に死亡した場合は、ワクチンに殺されたと、遺族が感じたとしても不思議ではありません。しかも、政府は「ワクチンと死亡は、無関係」と、取り付く島もないのです。遺族が政府に不信感を抱くのは当然です。政府が何か重大な事を隠蔽していると考えるかもしれません。そして、この不信感は増幅され、いずれ反ワクチン派を利することになります。政府は遺族に対して、もっと丁寧な説明をするべきです。

最後に、政府・厚労省に対して、いくつか提言してみたいと思います。

  1.  死亡例、入院例については、全身性副反応の有無を明記する。
  2.  報告バイアスを避けるため、接種後1週間以内の死亡例・入院例の報告は義務化する。
  3.  入院例が義務化された場合は、発病率を例年と比較する。
  4.  ワクチン休暇を確実にとれるように、周知徹底させる。
  5.  症例データは、分析しやすいように、エクセル形式でも公開する。
  6.  1回目で強い全身性副反応が生じた場合は、中和抗体を測定してから、2回目を実施するかを決める。(1回目の全身性副反応の意味については、前回の解説を参照)
  7.  高齢者の場合、接種投与量を減らす事を検討する
  8.  疑い例の症例報告一覧で、接種回数を明記する。

鈴村 泰
医学博士、第一種情報処理技術者、元皮膚科専門医、元漢方専門医
1985年名古屋大学医学部卒業。
アトピー性皮膚炎などの漢方薬治療と医療情報処理を得意とした。
現在はセミリタイア。画像アプリ「皮膚病データベース」を公開中。