財源論としての統合型リゾートIR

#横浜STARTUPは、将来の増税を防ぐためにも経済・財政政策の1つとして、統合型リゾートIRの横浜誘致を進めます。

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横浜市民のIRについてのアンケート(神奈川新聞社・JX通信:回答者1006人)によると70%の市民が「反対」、「どちらかと言うと反対」だといいます。残念なのは、IR=カジノ、統合型リゾートのイメージが浮かばない、財源論が棚上げされている、若い人の意見が入っていない、その中でのアンケート結果ということです。更に1000人の回答者の内80%が50歳以上です。

横浜市の長期財政見通しによると20年後、2040年には1500億円の収支不足が生じると言われています。少子高齢化社会、人口減少社会の影響は、横浜市にも深刻な影響をもたらすということです。ギャンブル財源を当てにして、子育てや社会保障の費用を捻出するとは、何事ぞ、という意見を述べられる方もいます。気持ちもわかるし、否定はしませんが、お金に色はついていないのも事実です。

高齢者にとって介護保険料の負担が3年毎に高まっています。基準月額の推移をみると現在は月6200円。介護保険がスタートした時、僕は横浜市会議員として施策の議論を行っていましたが、確か月3600円だったと思います。それが、今や6200円、更に上がることが予測されます。子育て環境を充実させていくにも、財源が必要となります。小児医療費助成の拡充、中学校給食の在り方、保育施設のアンマッチング是正等、やるべき事がたくさんあります。例えば、保育所の半数以上が定員割れとなり、空き枠は3000人以上、一方で希望園に入れず隠れ待機児童(保留児童)も1407人います。今後、本格的になるインフラの修繕も同様です。

財源は、気合や根性といった「思い」で集まるわけではありません。ましてや、ほっといていつの間にか集まるものではありません。そこには「神の見えざる手」は存在しないのです。つまり、足りなくなれば、保険料や税金を増やすことで穴埋めするしかないのです。将来の横浜のためにと言う理由で、財源が不足した時に時の納税者たる横浜市民に負担を強いる事になるのです。

あえて、統合型リゾートIRによる財源を捨てる必要はないと思います。もちろん、IRだけに頼らずに他の経済政策を行っていう事は言うまでもありません。横浜市によると、IRによる横浜市への納入財源は820億円~1200億円、中身の内訳は発表されていませんが、固定資産税、都市計画税、法人市民税、入場料収入(1人6000円)、納付金(賭け金総額から顧客への払戻金を引いた金額の15%)の合計です。専門家の皆さんに聞くと、納入金の多くは納付金という事です。

金額が大きくイメージが掴めないと思うので仮の計算をしてみました。仮にIRの誘致を止めた場合、固定資産税や都市計画税は、場所にかかる税金なので、他の施設でも税収になります。納入財源の下限である820億円から、上記2税の除いて、800億と仮定します。更に景気変動を仮定し、厳しく見積もって、納入金額を30%を削減すると560億円となります。IRをやらないので、入場料収入、納付金はゼロになり、残された法人市民税で560億円を集めなくてはなりません。

「法人市民税で年間560億円を集める」どれだけ大変かわかりますか?

法人市民税は、法人税×横浜市で働く従業員の割合×法人税割の税率+均等税割という計算で算出されます。これでも良くわからいので、具体的にいうと、トヨタ自動車本社(法人税額6800億円)が横浜市に移転し、全従業員(36万人)が横浜市で働く、その為には転居が必要ということになりますが、それで570億円の法人市民税が得られるということになります。つまり、現実的にはとても大変だということです。

将来にわたる財源を市民の皆さんの増税や保険料金の増額で賄うのか、IRの利用者から賄うのか?僕の答えは、IRの利用者からの財源で先ず賄うべきです。捨て去る必要はないということです。もちろん、僕の経済・財政政策はIRだけではありません。スタートアップを支援し、開業率を増やす施策を進めたいと思いますが、その施策については、別途記します。本当に統合型リゾートを取り下げてしまう必要があるのか、冷静に考えて欲しいと思います。そして、アンケートに回答していない10~40歳代のこれからの横浜を担う人達に「本当に良いのか」問いたいと思います。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2021年7月15日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。