麻生太郎先生の健康に暮らすことの経済学

麻生太郎先生は、本人の言によれば、病院の世話になったことは、ほとんどないそうである。この健康至極な先生は、かつて、健康保険に言及し、健康維持の努力している人と、逆に不健康な生活習慣をもつ人との間には、保険料負担の不公平性があるという主旨の発言をしたことがある。

つまり、発言は、健康に努力しない人は、そのことで疾病率を上昇させ、健康保険の保険料を引き上げる方向に寄与し、逆に、健康に努力している人は、疾病率を低下させ、保険料を引き下げる方向に寄与しているから、そこに不公平があるという主張であって、要は、モラルハザード論を展開しているわけだ。

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より厳密に表現し直せば、病気の危険には、予防医療的な努力によって制御できる部分と、制御できない部分があって、後者については、保険の一般理論が適用になるにしても、前者については、モラルハザードが発生しないような制度的工夫がいるということである。

具体的には、被保険者集団に、健康維持のための努力度に応じた区分を設け、それぞれの集団ごとに保険料率を算定すればいいのである。こうすれば、自分の保険料を下げようとする方向に利益誘因が働くので、国民全体として、健康維持のための努力が促され、疾病率の低下につながって、総医療費の削減が図られるのである。

さて、こうして、健康保険料負担の公平化と総医療費の削減が実現したとして、それが経済全体に与える影響はどうであろうか。治療に要する費用が削減されても、それ以上に予防に要する費用が増加しないだろうか。社会保障費全体として、医療費の削減以上に、年金費用の増加はないだろうか。飲み過ぎや食べ過ぎなどの不健康な消費の減少と、健康食品やスポーツなどの健康な消費の増加とを比較したとき、どちらが大きいだろうか。これは難問ではなかろうか。

しかし、実は、難問ではない。健康に長生きするのはいいことだ、それだけの超簡単な話であろう。

 

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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