防災と消防団①:岐路に立つ消防団システム

高橋 富人

我が国の消防・防災システムは、消防団の在り方に関する問題を背景に岐路にたっています。

今回の連載では、日本の防災体制を、論点の多い消防団を軸に確認していきます。

弱体化する我が国の消防団

消防団員数は、昭和30年に200万人を割り込み、平成元年に100万人以下となり、令和2年には約81万8千人となり減少はとまりません。また、減少とは別の問題として、消防団員の被災時の即応性の低下があげられています。

その主たる原因は

  • 消防団員の成り手となる若い世代の減少。
  • 社会構造・雇用形態の変化により、火災や災害といった緊急時に、駆け付けられる団員が減少したこと。

となるでしょう。

かつては主に地元の農家や自営業者の方々が消防団員として活動していましたが、平成29年には実に73.4%の消防団員がビジネスパーソンや公務員といった被雇用者となっています。例えば、私の地元の千葉県佐倉市で午後3時に火災や豪雨が発生したとしたら、東京に勤務している消防団員が即時に現場に駆け付けることは不可能です。

なお、私たちが「消防署員」と呼ぶ常備消防の職員数は、令和2年で約16万5千人です。

つまり、日本の防災・消防システムは、体制的に多くの課題を抱えながらも、消防職員の5倍近い数の消防団員に支えられている、という体制になっているのです。

日本の防災・消防と消防団

日本の防災・消防を担う組織は、消防組織法を背景に、常備消防機関と消防団の2種類が存在しています。

地区ごとに存在する消防団は、要員動員力・地域密着性・即時対応力併せ持つ、防災・消防の中核的存在です。

あまり知られていませんが、消防団員は一定の権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員であり、市町村の予算により年間報酬も設定されています。

しかしながら、国が公表している地方交付税の算入額では、一般の消防団員の年間報酬は36,500円であり、まさに「有償ボランティア」というべき額です。

また出動あたりの手当も予算化されていますが、地方交付税の算入額では出動あたり7,000円。佐倉市のそれはなんと1,500円です。

例えば洪水の折、朝から晩まで決壊した堤防に土嚢を積み、被災した家屋の泥を掻き出し、廃棄せざるを得なくなった大量の家財道具をトラックに積み込む作業をした対価が1,500円だったらどうでしょう?奉仕の精神が前提となっていなければ請け負えない仕事です。

災害の多様化・大規模化

日本では、消防団システムの弱体化と反比例する形で、災害は多様化・大規模化しています。

記憶に新しいところでは、先に熱海市を襲った土砂災害の原因となったような短時間強雨の発生回数は、ここ40年で約1.5倍程度にまで上昇しています。

その他、大規模地震、大型台風、火山噴火など、多様な災害の多発が想定されています。

そのような災害の折には、言うまでもないことですが、救助活動に加え、避難誘導や避難所運営支援活動等、多様な役割を担う人員が求められます。地域で機動的に動けるマンパワーの確保は欠かせないのです。

他方、昨今の報道では、消防団に対し批判的な論調のものが多くみられます。もちろん、全国で報告されているいわゆる「幽霊団員問題」や「排他的体質問題」など、議論すべき課題は多くあります。しかし、日本の防災・消防の現状を俯瞰したとき、そういった課題をあげて「消防団は必要ない」と結論するのは乱暴です。

次回原稿では、昨今地方自治の現場で多くの論争を巻き起こしている、「消防団に対する寄付」について考えます。

次回:「防災と消防団②」へ続く