コロナ危機下で政策論争が不在の自民党総裁選が再び

時代遅れの政治体質を変えよ

9月末の任期満了に伴う自民党総裁選に向け、岸田前政調会長、下村政調会長、高市前総務相らが立候補の構えを見せています。

自民党本部ビル 自民党HPより

総裁候補の人気投票では下位か、泡沫扱いの人物ばかりなのが不思議です。しかも首相になったら、新型コロナ対策を含め、どのような政治をするのかの態度表明もありません。揺さぶってみるが目的ですか。

新聞・テレビの政治ジャーナリズムも、そのことを指摘しません。部外者からみる妙な政治も、自民党政治に浸かっている政治ジャーナリズムにとっては「別に問題を感じるほどのことではない」のでしょう。

有力候補は早期に挙手すると、潰されるのか、沈黙しています。まともな民主主義政治が機能していれば、河野、石破、小泉氏らもきちんとした政策綱領を明らかにして、党員を含めた投票をするのでしょう。

官房長官だった菅氏が有力派閥の支持で、あっという間に総裁が確定した時も、菅氏の政策綱領の事前の発表はありませんでした。談合政治です。総裁になってから、やっとハンコを廃止する、デジタル庁を創設する、縦割り行政を改善するなどの方針を明らかにしました。

政策を事前に発表するのではなく、選挙が終わってから、何をするのかを明らかにする。順序が逆です。政策そのものや政策立案能力でトップを選ぶ自民党政治ではありませんから、朝令暮改のコロナ対策が次々に打ち出され、国民はあきれはて、政権支持率が下落するのです。

菅氏に代る人物が首相になったとしても、コロナ危機は長期化し、早期には収束しないから、新首相の支持率も上がらない。それなら菅氏をしばらく担いでおき、いつでも下ろせるような態勢にしておく。そう自民党の上層部は考えていても不思議ではない。

横浜市長選(22日投開票)で、菅氏が推す小此木氏が負けるようであれば、「菅氏では総選挙は戦えない。やはり新総裁で選挙に臨もう」となるかもしれません。結果は間もなくはっきりします。

横浜市長選は不思議な話です。カジノ誘致に賛成から反対に回った小此木氏を、カジノ誘致に賛成だった菅氏が支援するという構図です。菅氏はカジノ誘致派だったはずなのに、いつ転向したのかを言わない。

菅首相は何も説明しない。横浜市民の多くはカジノに反対、誘致活動をしていた自民党議員は逮捕、そのうえコロナ危機が重なった。誘致を掲げると選挙で勝てないということなのか。それにしても首相は、説明責任を果たさない。妙な政治手法です。

解散・総選挙の時期は、新型コロナの感染拡大との関係がありますから、菅首相は目いっぱい先に延ばすのでしょう。衆院の任期満了の10月21日に解散、11月28日の投票が取りざたされています。

解散を先送りすると、その前に総裁任期の9月30日がきてしまう。だから総裁選は実施する。実施するけれども、また安倍、麻生、二階氏らの談合でとりあえず菅政権を存続させるというシナリオでいくのでしょうか。

菅政権のコロナ対策は、ワクチン接種と緊急事態事態宣言の連発という組み合わせです。7月末に宣言を延長した際、「これを最後とする覚悟で」と言いながら、8月後半には「9月12日までの再延長」宣言です。

「他にもやるべき重要な医療行政の改革があるだろう」という批判が強まっています。「新型コロナを感染症法の2類でなく5類に下げ、医療現場への負荷を軽くする」「病床はあり余っているのに、コロナ対応ができる病院が少ない。集約して医療逼迫の原因をなくす」などは重要な問題です。

「救急車を呼んでも、救急医療を受けられない」ことの一因は、「救急車は無料なので、重症でない人までがやたらと呼ぶので、救急医療が逼迫する。先進国には有料の国もある」との指摘もあります。

「霞が関(中央省庁)は崩壊のサイクルに入った」との指摘も貴重です。「生産的とも思えない国会質疑の下働きに官僚を酷使するので、若手の公務員離れが進んでいる」「国会では政治家同士の議論こそ、もっとする必要がある」などの声も聞きます。

総裁選をやるのなら、「国民の安心安全、命を第一に優先する」など具体性に欠けることは言わず、「どこをどう変えていくのか」をはっきりさせてほしいのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。