大使、大使館員は早々に海外に離脱
新型コロナ対策、東京五輪パラリンピック、自民党総裁選による政治空白が重なる中で、日本は信じ難い失策をまた重ねています。アフガニスタンからの邦人、外国人スタッフの退避作戦の出遅れによる失敗です。
他国はすでに大規模な退避を実施しているのに、なぜ日本は出遅れたのか。官邸、外務、防衛省が連携して、早期に作戦を立て、実行すべきなのに、できていませんでした。コロナと五輪で頭がもう一杯なのか。
菅首相らは早急に記者会見をして、救出失敗について、隠蔽せずに説明する義務を負う。昨夜、岸防衛相が「退避の努力を継続する」と釈明しました。説明になっていません。さらにペーパーの棒読みです。重大事案での発言は、記憶してから肉声で語ってほしい。
菅政権は政策調整機能を喪失しています。退避できでずにいる邦人、大使館で働いていた現地職員・家族らが大勢、取り残されています。退避者は想定した500人に対し、救援機を3機出したのに、救出したのは1人です。しかも、退避活動はこれで終了です。
救出できていない人たちに万一のことや、人質にされるようなことはないのか。菅政権、政府の責任は重大です。コロナは医療面の危機管理の不備、今回は国際紛争に伴う危機管理対応の欠落です。
アフガンでタリバンが全土を掌握し、ガニ政権が崩壊したのが15日です。カブール陥落の15日には岡本隆大使はすでに現地におらず、大使館員、防衛駐在官ら12人も17日、英軍機で出国したとのことです(一部が現場復帰との報道)。救出すべき人たちを見捨てた行動は信じ難い。
難破した船の船長、乗り込み員が早々に脱出し、乗客は船内に取り残されているような状況です。取り残された数百人と連絡をとり、脱出の手配をすべき大使館員、武官が出国してしまい、どうやって彼らを救うのか。
英国は駐アフガン大使を現地にとどめ、ビザ発給などの作業を続けたとのことです。欧米各国は軍関係者が現地で情報交換を続けているそうです。日本はどうなのか。外相、防衛相には説明責任があります。
米軍撤退の期限がきて、退避活動は27日で終了です。ニュージーランドのアンダーソン首相は「全ての人をつれだすことができなかったことを悔やむ」と、記者会見で述べました。リーダーはこうあるべきです。
国際的にみると、コロナ対策の細かな発表より、この問題のほうがはるかに重大だし、政権トップの言動が比べられてしまう。菅首相、茂木外相、岸防衛相らは直ちに記者会見を開き、隠蔽をせず、説明責任を果たしてほしい。それができないような首相は総裁選に臨む資格はない。
報道では、救出人数は米国10万人、英国1・4万人、独仏伊が5000~2500人などです。日本の保守派、右翼言論人が小バカにする韓国は「現地スタッフ・家族ら希望者全員390人を救出した」そうです。日本はたったの1人です。韓国にも及ばない。
毎日新聞(ソウル発)によると、「韓国は救出作戦をする39人の特殊部隊を編成した。ミラクル作戦と称し、軍用機3機を派遣した。米国が現地で契約するバス6台を使い、大使館の連絡網を通じて、バスの待機位置、集合時間を知らせ、希望者を収容した」とあります。
今回の危機の基本的な問題は、「タリバンの暴虐、バイデン米政権の拙速な撤退」です。その上に救出活動に対する自衛隊法上の制約(現実に即さない安全確認、武力使用の制限)があり、韓国並みとはいかない。
それならそれを承知の上で、素早く救出活動の準備をしておかなければならない。それをしていない。官邸の責任は重いのです。他国は危機を想定して、準備し素早く実行に移した。日本はそれができなかった。今後、重大問題に発展するだろうし、残った人たちの救出も簡単ではない。
時系列でみると、米国が大使館員らの救出のため軍の派遣を決定(12日)、英国が自国民らの退避を開始(13日)、タリバンが全土掌握(15日)で、そのころ、官邸はどういう準備をしていたのか。自衛隊機の派遣決定(23日)、現地到着(26日)は、いかにも遅い。
現地大使の離脱、大使館員らの海外退避はだれが許可したのか。どの段階で、どのように、邦人及び現地スタッフの救出活動を始めるかを決めたのはいつか。他国と天地の開きがある救出活動には失望しました。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年8月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。