日米競演:政治家親子の醜聞と報じない左派メディア

事実上の総理選びである自民党総裁選が29日の投票に向け終盤に入っている。が、ここへ来て目下トップを走っている河野太郎候補に中国スキャンダルが出来した。文春オンラインが21日、「河野太郎ワクチン相 “ファミリー企業”から6700万円の献金を受けていた」と報じたのだ。そのファミリー企業は「日本端子」という。

大手紙やテレビがこのニュースをスルーする中、フジサンケイGの「夕刊フジ」が21日の記者会見でこの問題について質問した。が、河野は「私の政治活動に影響を与えるということは全くない」と明言、同社株の保有についても「資産報告を毎回しっかりやっており、何の問題もない」と答えた。

同グループのネット番組「チャンネル正論」では23日、中国投資やM&Aに詳しい日本戦略研究フォーラム政策提言委員平井宏治が「日本端子」を詳説した。詳しくは同番組をご覧願うとして、ポイントは、売上高155億円の同社が、売上高2兆3千億円の中国巨大企業BOEとの6対4の合弁会社であること、筆頭株主の洋平ら河野一族が50%超の議決権を有していることなど。

「日本端子」の社長は太郎の弟二郎だが、太郎も93年には取締役であったし株式の一部を保有している。本社は平塚の河野邸敷地に所在し、中国には北京(合弁)、昆山(独資)と香港(出資)に工場や関係会社を有している。生産品目は、太陽光パネルや電気自動車向けを主とするコネクターや端子であり、21年3月期の推定税引き後利益22億円(売上高比率14%)は優良企業であることを示す。

合弁相手のBOE(京東方科技集団股份有限公司)は世界NO.1の著名な液晶パネルメーカーで、北京国有経営管理中心が11.7%を出資している。平井はBOEが規模のまるで違う日本端子と合弁するのは一般的には不釣り合いとし、言葉を選びつつも河野人脈の影響を示唆する。また総理候補一族のこの中国との濃密な関係は、根拠のない「モリカケ」などとは雲泥の差があるとも述べる。

つまりは、「モリカケ」をあれだけ執拗に取り上げ煽った大手メディアが、この件の報道に熱心でないことを難じているのだが、海の向こうの米国でもバイデン一族の火種がまた燃え出したようだ。政治メディア、ポリティコのニュースレターが21日(現地時間)、ハンター・バイデンのラップトップPCのメールの一部が事実だったことを報じたのだ。

バイデン大統領の息子ハンターの事件は、大統領選の投票を翌月3日に控えた10月14日、夕刊フジのようなタブロイド紙ニューヨーク・ポスト(NYP)がスクープした。が、主流メディアは挙ってこれをフェイクと断じ、黙殺した。その上、その時期には郵便投票の大半が返送済みで、間に合っていれば結果が変わっていた、とトランプ陣営を大いに嘆じさせた。

その意味では21日に火が付き始めた「日本端子」事件も、総裁選の党員・党友用投票用紙は28日の締め切りに向けて18日から順次配達されているから、気の早い者は既に返送済かも知れず、河野候補以外の陣営が昨年のトランプ陣営と同じ思いをする可能性がある。

ポリティコ記事の要点とハンター・バイデン事件の当時の大手メディアの対応をFoxnews(Fox)が現地時間22日、長文の記事で報じているので、それを紹介したい。

ポリティコのシュレキンガー記者は近著「バイデン一家(The Bidens)」で、ラップトップのメールを精査した結果、以下の事実を発見した。ただし、「今回のリークには本物のファイルが含まれているが、偽物が紛れ込んでいる可能性も残されている 」とも付け加えている。

  • ハンター・バイデンの電子メールに独自にアクセスした人物は、ジョー・バイデンに会う機会を得たことに感謝するウクライナのビジネスマンからの15年の電子メールを確かに受け取った。
  • 17年のメールも同様で、中国のエネルギー企業幹部とのベンチャー企業の株式内訳案には「大物のためにHが10個保有しているのか」という一行が含まれていた。
  • スウェーデンの政府機関が公開したメールも、流出したキャッシュのメールと一致しており、ハンター・バイデンと文通していた2人が、キャッシュのメールが本物であることを確認している。

Foxはリベラルメディアがこれまで一丸となってバイデン記事を否定してきたとし、ポリティコも劇的にトーンが変わったと皮肉る。当時のポリティコ記事は、今はCNNのバートランド記者の執筆で、ラップトップの電子メールには「ロシアの情報操作の典型的な特徴が全て揃っている」としていた。

Foxは今回のポリティコ記事で、これまでの大手メディアの報道ぶりが蒸し返され、それへの批判が高まっているとする。それを紙幅の許す範囲で挙げて稿を結ぶ。

ワシントンポストのサージェントはNYP記事の翌日、「トランプのフェイク、新しいバイデン醜聞」とし、疑惑を「笑えるほど脆弱」と呼んだ。氏は「トランプと彼のプロパガンダ担当はもっと説得力のあるスキャンダルを自慢したいに違いないがほとんど二の次だ」とスティーブ・バノンの関与を強調した。

ニューヨーク・タイムズは「情報機関は昨年末、ホワイトハウスに対し、ロシア諜報員がジュリアーニ弁護士をバイデンの大統領選出馬を弱体化させることを目的とした偽情報の発信源として利用していると警告していたと、米国の4人の現役と元政府関係者が述べた」と報じた。

NPRの編集長は、ハンターの記事を当時報道しなかったことを聞かれ、「ポストの報道には、ロシアとの関係の可能性を含めて『多くの赤信号』があった」、「率直に言って、これは政治的に動かされた出来事で、そのように扱うことにした」と述べた。

プロジェクト・ヴェリタスは先週、ザッカーCNN社長が10月16日、「トランプ・メディアは、(マイケル・フリンの)暴露が無意味だと判ったところから、最新の醜聞に移行し、皆がそれに従うことを期待している。が、右派メディアがそうだからといって、根拠のない中傷を繰り返すべきではない」と述べた電話会談の音声記録をリークした。

TVショー「60ミニッツ」ではレスリー・スタールが、選挙の数日前に放送されたトランプへのインタビューで、バイデンが「スキャンダルの渦中にいる」というトランプの主張を「そうではない」と笑い飛ばした。トランプは厳しく反応したが、スタールは否定し続けた後、「『60ミニッツ』だから検証できないものは載せられない」と述べた。

MSNBCのケイティ・ターはポスト記事を「爆弾のように落ちた」と嘲笑したが、「精査で枯れてしまい、実は爆弾のように落ちていない」とし、NBCのケン・ディラニアン記者は、ノートパソコンから送られてきた様々な電子メールや画像が「正当なもの」であることを認めつつ記事を「怪しい話」とした。

CBSの政治アナリスト、ジョン・ディッカーソンは「CBS This Morning」で、「トランプがバイデンに泥を塗る目的で、バイデン家に縄張りを移そうとした場合、ニュースサイクルは、今回の選挙戦の主題である新型コロナとそれに対する大統領の対応に戻り続け、国民はそれに非常に否定的な見方をしている」とし、「そして、この数字が続く限り、有権者は大統領にとって非常に悪い問題に焦点を当て続けることになる」と述べた。

きりがないのでこの辺にしておくが、Foxは同じ22日、ハンターに関する別の爆弾レポート(オバマ大統領によって凍結されたリビアの資産の回収を支援するために、ハンターが年間200万ドルの賄賂を求めていた)も報じている。

投票後1年以上が過ぎて事の真相が明らかになっても、失われた時間は取り戻せない。河野候補にはすぐにでも潔く総裁選から退場することを勧める。