1.はじめに
10月4日に臨時国会が開催され、岸田総理が誕生しました。その後の政治スケジュールは、
10月14日まで臨時国会を開催
10月31日に衆院選投開票
といったものが毎日新聞などで報道されています。
いずれにせよ政策について本格的な議論が始まるのは衆議院議員選挙が終わった後の臨時国会でしょう。
自民党が勝利すれば、ですが、総選挙後に開会される臨時国会で、岸田総理の肝いりの補正予算について与野党の白熱した議論が行われるはずです。
さて、予算のほかに、国会で議論されるもう一つ重要なものといえば法律です。
久しぶりに第1回:そもそも「政策」とはなにかを振り返ってみましょう。
政策とは「政府独自のリソース(手段)を使って、人の行動変容を促し、社会課題を解決する営み」であり、そのリソースのひとつとして「法規制」があります。
第一回では、政策を理解するために学校の教室がゴミのポイ捨てで汚れているという課題解決を取り上げ、法規制という手段についてこんな説明をしました。
(1)ルールをつくる(法規制)
人の行動を変える一番強い手段がルールです。
ゴミのポイ捨てを禁止するルールを作って、違反した人には罰金をとることにしましょう。
罰金をとらえるのは、みんな嫌ですから、きっとポイ捨ては減るでしょう。
そうです。「人の行動を変える一番強い手段」が法規制なんです。
このように、法律というルールを変えることで、人の生活やビジネス環境は大きく変わるため、より良い政策を提案したいと考える人たちは、法律の案が作られ、そして国会で可決承認されるまでのプロセスを知っておかなければいけないのです。
この記事では法案提出のきっかけ、政府内での議論、政府内で法案が作られてから、与党の部会で承認されるまでの一連の流れ、そして法律案の中身にどんな人たちが影響を与えているかについてご説明したいと思います。
2.法案の内容を簡単に先取りする方法
読者の皆さんの中には、「よりよい政策が日本で実施されるためにできることは何なんだろう」と真剣に考えている方もおられると思います。「自分たちの思いを政策に反映させたい、実際に行動するための具体的な手段を知りたい」と思っている方もいらっしゃるでしょう。あるいは「もう少し、自分たちの声を聞いてほしい」と、漠然と思っている方もいるかもしれません。
また「そこまではできないけれど、せめて政策の先取りをするヒントが欲しい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、「政策を先取りするヒントが欲しい」と考えている読者のためにひとつ手がかりをお伝えします。
法律は政府が作る法律の場合(国会議員が作る議員立法もありますが、日本でできあがる法律の約9割は政府が提出しています)、
(1)政府としての案を国会に提出し、
(2)国会で多数決で可決成立
して初めて法律になります。
とは言っても、衆議院、参議院ともに与党が過半数を占めている場合、ほとんど内容に修正が入ることなく、政府案が成立することがほとんどです。
つまり、
(1)政府としての案を国会に提出、の段階の政府案を見ておくと、今後の政策の方向性を予測することができます。
金融庁の例を用いて説明します。省庁のトップページを開くと、「法令・指針等」と書かれたタブを見つけることができます。
「法令・指針等」をクリックすると、「国会提出法案等」のタブがあるページに飛ぶので、この「国会提出法案等」のタブをクリックします。
そうすると、国会に提出され、可決された法案とともに、国会に提出され、審議される前の法案を確認することができます。下記の例は2021年5月1日時点の金融庁のHPの情報ですが、
これが国会で可決成立したあとの2021年7月1日時点のHPでは、以下のように成立日が追記されています。
このようなページには、法律の解釈に不慣れな民間の人でも理解できるように(それでも難しいことには変わりありませんが)概要や説明資料が貼付されています。これらの資料は、すべての改正事項が一応その資料から把握できるように作られているものなので、法案の概要を知る上では役に立つと思います。
法律が国会で成立しメディアで報道される前に、法案の内容を把握する方法をお伝えしました。さらにその前、政府の政策が法律案の形になる前の段階で政策の行く末を予測するための方法もあるのですが、その方法についてはこの後説明します。
ここからは政府内での法案作成作業から国会に法案を提出するまでの流れを説明します。その中で
- いつ法律を作ることを決めるか
- 政府内での議論のスケジュールはどうなっているか
- 政策内容に影響を与える人物はだれか
- 政策提案のタイミングはいつか
についてお伝えしていきます。法改正のスケジュールやキーパーソンの把握をしつつ、「自分の考えている政策を法律に反映するにはどうすればいいか」を考えながら読んでみてください。
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2021年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。