科学の欠如した分科会を継続するのか?コロナウイルスに対するT細胞免疫の重要性
今週号のNature誌に「Pre-existing polymerase-specific T cells expand in abortive seronegative SARS-CoV-2」というタイトルの論文が掲載された。
コロナ感染に罹患しなかった医療従事者にはコロナウイルスのポリメラーゼに特異的なT細胞が存在していたという内容だ。
日本の科学力のない分科会は、素人でも考え付くような対策しか打ち出せなかった。
私はアジアや中東では、日常的に(中国から?)コロナウイルスが流入しているので、それに対する免疫を持っている人が多いので、感染者数が少なく、致死率が低い可能性を指摘してきた。
特に短期間で減弱する抗体に対して、メモリーT細胞による免疫は年単位で継続するので、これを検証すべきだと言ってきたが、声は届かなかった。
核酸の合成酵素(ポリメラーゼ)が変異を起こし、機能不全になると、ウイルスにとっては致死的となるので、結果的にはウイルスの生存に重要でないスパイクタンパクのなどの変異が見つかることになる。
それゆえ、多種のコロナウイルスゲノムの中で、遺伝子配列が維持されている部分に対するT細胞免疫を活性化することが、長期的な免疫の維持につながると期待できる。
人間では、人種間で多様性の高い免疫系の遺伝子群と比較して、細胞の複製に関わるDNA合成酵素の遺伝子多型は極めて少ない。
COVID-19とSARSやMARSとを比較して、ほとんど遺伝子が変異していない部分がある。
これらの部分の細胞免疫を高めれば、スパイクタンパクに対する抗体よりもさらに安定したコロナウイルスに対する免疫を維持することができる。
もちろんコロナウイルスゲノムの情報を速やかに入手することも重要だ。
ゲノムの専門家も、人間の免疫に対する専門家もいない感染症ムラで国難が乗り切れるのか。新内閣の英断を期待したい。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年11月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。