共産党の罠にはまった立憲民主党

立憲代表選の結果

9月30日の立憲代表選の結果、中道とみられる泉健太氏が新代表に選ばれた。各種報道によれば、泉新代表は懸案である共産党との「野党共闘」の在り方については、総選挙敗北の結果を受けて、再検討する意向のようである。

泉健太氏・立憲民主党新代表
本人twitterより

しかし、党内には共産党との「野党共闘」に積極的な旧社会党系の左派グループも存在し、一筋縄ではいかず紆余曲折が予想される。早速、泉新代表の統率力・指導力が試されよう。

筆者は、今回の立憲の総選挙敗北の主たる原因は、以下に述べる通り、共産との「閣外協力」に対する国民の「共産党アレルギー」(「共産党拒絶反応」)によるものと分析している(11月8日拙稿「立憲民主党を惨敗させた共産党アレルギー」参照)。

「閣外協力」の認識の食い違い

立憲・共産・れいわ・社民の野党四党は、9月8日市民連合を介して安保法制廃止など20項目の「共通政策」の合意をした。そして、9月30日には立憲・枝野代表と共産・志位委員長は、立憲が政権を取った場合には、共産が20項目の「共通政策」の実現のために「限定的な閣外協力」を行う合意をした。

しかし、その後、「閣外協力」合意の解釈をめぐって、立憲は「限定的」な合意により共産とは政権を組まないことを明確にしたとの認識であったが、共産は「閣外協力」の合意は野党連合政権の一形態である「政権合意」との認識を示し、両党の認識に大きな食い違いが生じたまま選挙戦に突入し、立憲は敗北し、共産も議席を減らした。

「限定的な閣外協力」の実態

立憲と共産の20項目の「限定的な閣外協力」合意の共通政策は、(1)「憲法・平和」(2)「コロナ対応」(3)「格差・貧困」(4)「環境」(5)「ジェンダー平等」(6)「権力私物化」となっている。具体的には、安保法制違憲部分廃止・辺野古新基地建設反対を含む外交安全保障政策、消費税減税・富裕層増税を含む経済財政政策、医療・公衆衛生整備を含む社会保障政策、原発廃止・脱石炭火力を含むエネルギー環境政策、選択的夫婦別姓を含むジェンダー平等政策、モリカケ桜を含む権力私物化問題、日本学術会議会員任命問題など、広く国政全般に及んでいる(9月10日付「しんぶん赤旗」参照)。

したがって、枝野前代表が主張するような「閣外協力」の合意が「限定的」なものとは到底言えず、合意の内容・実態は国政全般にわたる極めて包括的なものである。そのうえ、これらの20項目の共通政策を具体的に法制化し実現するにあたっては、当然のこととして、「閣外協力」をする共産党との事前の意見調整や政策等の「すり合わせ」が必要不可欠であり、共産党の方針やイデオロギーが反映されることは避けられない。

「閣外協力」の実態は立憲・共産の「野党連合政権」

したがって、「閣外協力」の内容・実態が上記のものであるとすれば、「閣外協力」は立憲・共産の事実上の「野党連合政権」の性質を有することは否定できない。その意味では、共産・志位委員長の前記「政権合意」の認識が筋が通っている。

今回、共産党が立憲と「閣外協力」の合意をした理由は、同党の革命戦略である「統一戦線戦略」(党綱領四参照)を実践するためである。同党にとっては、社会主義政権への過渡的政権である統一戦線の政府すなわち「民主連合政府」の樹立を当面の目的としているからである(10月4日拙稿「ついに共産党と閣外協力する立憲民主党:社会主義政権への第一歩」参照)。

共産党の罠にはまった立憲民主党

結局、立憲は、共産との「閣外協力」が共産の革命戦略である「統一戦線戦略」の実践に他ならないことを警戒せずに甘く考え、これに対する与党側からの激しい批判攻撃や、国民の「共産党アレルギー」(「共産党拒絶反応」)を軽視した結果、敗北したと言わざるを得ない(11月13日拙稿「立憲は共産党アレルギーを甘く見てはならぬ」参照)。

すなわち、立憲は、不用意にも、社会主義政権を目指す「閣外協力」という名の共産党の「統一戦線戦略」の罠にはまったのであり、これは共産の責任ではなく、すべて立憲・枝野前代表の責任である。

大阪10区で落選した立憲・辻元清美前副委員長も「共産党が政権に入るかどうかだけがクローズアップされ、与党の逆宣伝に利用された。」(12月5日付「朝日新聞」参照)と述べている。また、和歌山2区から立候補し落選した立憲・元和歌山弁護士会会長藤井幹雄候補は「農村部においては想像以上に共産党アレルギーが強かった」(立岩陽一郎元NHK特派員「総選挙レポート」参照)と述べている。小選挙区で敗れ比例復活した立憲の中堅議員の一人も「徹底的に共産党と一緒にやっているとネガティブキャンペーンをされた。共産票の単純な足し算にはならなかった。」(11月28日付「朝日新聞」参照)と述べている。

泉新代表には、こうした現場の声を聴き、共産党との「閣外協力」合意の破棄を含め、早急に共産党との「野党共闘」について再検討すべきであろう。もし、このまま「閣外協力」を継続すれば、立憲にとって来年の参議院選はさらに厳しい結果となろう。