「ポスト・コロナ社会」の理想と現実:2022年の地政学リスクから読み解く(原田 大靖)

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グローバル・インテリジェンス・ユニット シニア・アナリスト 原田 大靖

2022年に入り、世界各地で地政学リスクの高まりがみられている。中央アジアのカザフスタンでは、年明けから大規模な反政府デモに揺れており、事態鎮静化のためにロシアの精鋭部隊が派遣される展開となった。他方、西側ではウクライナ情勢を巡って緊張が続いている。我が国では大きく報道されていないものの、ロシアは、ウクライナを巡る米国との安全保障協議が暗礁に乗り上げていることを受け、このまま緊張が続けばベネズエラかキューバに軍を派遣することも示唆している。

炎上したアルマトイの市庁舎
出典:Reuters

そうした中で、毎年のことであるが、米コンサルタント会社「ユーラシア・グループ」は2022年の世界「10大リスク」を発表し、我が国でも大きく報道されていた(参考)。さらに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の卒業生によって運営されている地政学リスクに関するwebサイト「Global Risk Insights」も同様に2022年の地政学リスク・トップ11を掲げ、2022年の世界を展望している(参考)。

いずれの展望でも「COVID-19」「中国問題」「エネルギー」「テロ」「巨大IT規制」などの項目を掲げているが、付け詰めるところ、焦点は「グローバル」「金融資本主義」「デジタル」の三点に帰結するものと分析できる。

特に、最も恐ろしいリスクとして懸念されるのが、これら三点すべてに影響を与え得る「COVID-19」であろう。「Global Risk Insights」は、この点、より毒性が強く、ワクチン耐性のある変異株の出現が2022年の最も恐ろしいリスクとする中で、特に、腺ペストの発生が人類最大の脅威となりうるとの懸念を示している。

去る(2022年)1月15日には、トンガでの大規模噴火を受けて、地球はかつてのように、巻き上げられた火山性エアロゾルにより太陽光が遮断され寒冷化する「火山の冬」が起こるのではないか、という分析もある(参考)。寒冷化がもたらす負のフィードバックとしてやはり懸念されるのが、感染症の流行であるところ、人類と「COVID-19」との戦いは、今後生じ得る新たな「パンデミック」との戦いの序章に過ぎないのかもしれない。

2022年1月のトンガ大噴火
出典:Indian Express

かつて14世紀、フィレンツェから起こったペスト(黒死病)では、当時の中世ヨーロッパの人口のうち3分の1が犠牲になったという。この時の要因としては、よく14世紀のヨーロッパは「小氷河期」の始まりで気候が寒冷期に移行しつつある中で、冷夏が続き、農作物は不作続きで、食糧は不足し、飢饉が拡大していた、ということが挙げられるが、この度のトンガの噴火がフラクタルに当時の惨禍を再現することも十分考え得る。

また、中世ヨーロッパで起きたペストのインパクトは、生き残った農奴の地位向上に伴う経済構造の転換から、死生観の転換によるルネサンスの胚胎など、まさに世界史の転換を伴うものであった点も忘れてはならない。

今次パンデミックもこうした世界史の転換に位置づけても過言ではない中で、上述した2022年の各リスクといかに対峙していくかが、この転換を乗り切るカギとなるのではないか。

14世紀、ペストの流行を背景に広まった絵画『死の舞踏』
出典:Wikipedia

「ポスト・コロナ社会」は、決してコロナ前の平和な日常が戻ってくるのではなく、むしろさらに複雑化・多様化した社会が到来するということが明らかである。

そうした中で、中世ヨーロッパでは「生き残る」ことのみが求められていたのに対して、今次パンデミックでは、「グローバル」「金融資本主義」「デジタル」という3つのリテラシーを駆使して、新たな時代を切り開くことが求められるのではないか。そして、これらのリテラシーをもたぬ者は、早晩、「ポスト・コロナ社会」からの脱落を余儀なくされることになろう。

原田 大靖
株式会社 原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科(知的財産戦略専攻)修了。(公財)日本国際フォーラムにて専任研究員として勤務。(学法)川村学園川村中学校・高等学校にて教鞭もとる。2021年4月より現職。