ラテンアメリカのイスラエルのような国、コロンビア

 

コロンビアとイスラエルの親密な関係

ラテンアメリカにおけるイスラエルと言えば南米のコロンビアだ。これを言及したのはベネズエラのチャベス前大統領だった。

20世紀の初頭、特に冷戦時代からコロンビアは米国にとってラテンアメリカにおける重要な同盟国と見做されるようになっていた。2001年のアメリカ同時多発テロが起きた翌年2002年にコロンビアでウリベ氏が大統領に就任。同氏はコロンビア国内のコロンビア革命軍などゲリラ組織との戦いをテロリズムとの戦いだと称して米国とより協力してその撲滅に挑むようになった。それは同時に麻薬生産の撲滅でもあった。

この時点でイスラエルもハマスとヒズボラのテロリズムとの戦いに明け暮れていたということから、コロンビアも同じ境遇に置かれているとして親近感を持つようになりイスラエルはコロンビアに軍事面で協力するようになった。例えば、2002年から2006年の間にコロンビアがイスラエルから輸入した軍需品は2倍に増えた。イスラエルの戦闘機クフィルと小銃ガリルはコロンビア軍隊の主要兵器となっていた。

またコロンビア軍はイスラエルから軍事指導も受けた。更に、イスラエルの国際協力機構マシャフにはこの20年間で多くのコロンビア人が医学、農業、テクノロジーの分野において指導を受けた。(2020年8月31日付「BBCムンド」から引用)。

コロンビアはヒズボラからの攻撃の対象にされるようになっている

そして今、コロンビアが置かれている状況はこれまでのゲリラ組織との戦いに加え、ヒズボラの攻撃にも備えねばならなくなっている。というのも、隣国ベネズエラのマドゥロ大統領政権はヒズボラを匿うようになっているからである。

特に、イランの分身であるヒズボラはイランのコッズ精鋭部隊のソレイマニー司令官が2020年に米国とイスラエルの合同作戦によって殺害されたことを受けて、その復讐を誓っている。コロンビアとイスラエルの親密な関係からコロンビアで活動しているイスラエル人もその標的とされている。

それを証明するかのように、昨年6月末にコロンビアの首都ボゴターにてイスラエルの企業家2人がヒズボラによって殺害される計画があったことがコロンビアの関係当局によって明らかにされた。これが計画されたのは昨年4月のことで、イラン人ラウマ・アサディ氏がコロンビア人2人を雇ってそれを遂行しようとした。この殺害計画は頓挫したが、コロンビアにまでヒズボラの暗殺の手が伸びているということの証拠であった。それが計画できるのも背後にベネズエラが彼らを匿っているからである。(2021年11月13日付「インフォバエ」かたら引用)。

コロンビアのゲリラ部隊もイランと関係を持っている

またコロンビアのゲリラ組織民族解放軍(ELN)がイランと関係を持っている証拠も見つかっている。2020年10月に通称ウリエルと呼ばれているELNの指揮官のパソコンをコロンビア軍が手に入れ、その中で「彼らはオープンだ。我々が訓練を受けることができるように旅費などすべての費用は彼らが負担してくれる」と語っていたのが明らかになっている。同様に昨年7月29日にも今度はコロンビア革命軍(FARC)のヘンティル・ドゥアルテと呼ばれているリーダーのパソコンをコロンビア軍が押収することができ、そこにはイランと協力関係にあることが明らかにされている。

FARCとヒズボラとの協力関係は長い繋がりをもっている。1994年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでイスラエル共済会館(AMIA)がヒズボラの手によって爆破され85人が死亡し、200人以上が負傷したテロ事件では、レバノンから爆薬を持ち込むのにFARCと協力してコロンビア人のサルマン・ラオフ・サルマンがその為の仲介をしていたというのはよく知られている。

また2014年にもシリアとベネズエラの国籍を持つ人物が飛行機にミサイルと小銃AK-103をレバノンからベネズエラに持ち込んだことも明らかされている。それをFARCに渡す為だった。

今年、元ゲリラ兵がコロンビアの大統領に成る可能性がある

今年のコロンビアの大統領選挙ではゲリラ組織の元戦闘員だった現在上院議員のグスタボ・ペトロ氏が大統領になる可能性が高い。コロンビアで初めて左派政権が誕生する可能性が高いということである。そうなると、今後の米国との関係も新たな局面を迎えるようになるかもしれない。