これまで外国人の入国は原則認めないという「鎖国政策」を取っていた日本が、経済界や交換留学制度に大きな支障をきたしている大学関係者の要請などを受け、やっと開放への流れが出てきた。
ビジネス入国、月内に先行緩和 留学生含め1日1000人超(日経新聞2022年2月12日付)
私が日本の解放方針を見て違和感を覚えるのは、まず「人数ありき」で話が進んでいることである。
私は各国の入国規制の状況についてこれまでアゴラに何度も記事を投稿してきた。最新の記事は以下のものである。
これまで各国の状況、特にヨーロッパの入国規制に関する文章を読んでいて、私は日本との感覚の違いに最初は驚いた。日本は「規制をどの程度緩めるか」という視点からしか議論されていないのに対し、ヨーロッパでは「入国制限を正常化させた(returned to normal)」という表現が取られていたことだ。そこから「入国制限を正常化させたい」という各国の意思が読み取れた。
そもそも入国者数を人数で縛ることにどういう意味があるのか。入国時の検査体制に限界があるということだろうが、今の検査体制が必要なのかということは議論にすら上がっていないように感じる。検査体制が緩めば、入国時の人数はもっと増やせるのだ。
コロナ対策の入国規制で「CIQ」のどの条件で適用させているのか、ということを以前アゴラに投稿した。
本来、防疫上の理由で外国人の入国を拒むのであれば「Q」条件、つまり検疫で入国に制限をかけるべきである。現状のように「I」条件であるビザを発給しないという方法で感染症の流入を防ぐというのは、理屈が通らない。ビザの発給条件は本来政治的な要因で決めるべきものなのである。「ビザは発給するが検疫条件を満たさないので現実入国ができない」という状態に持っていくことが正常である。「とりあえずビザは出すが入国人数に制限があるので入国できない可能性がある」と事前に通告しておけば、大きな問題にはならないだろう。現実問題、飛行機のチケットが取れなければ入国が不可能であり、今は飛行機の座席数で1日の入国者数を制限している。
その上で現在の検疫方法が妥当なのかを議論すべきだ。たとえばアメリカは入国条件を満たしているかを外国を出発する飛行機の搭乗時に航空会社が調べることになっていて、アメリカ入国時にはなんの検査もされない。これは私が昨年5月にアメリカに入国した時の話なので多少変わっているかもしれないが、こういう制度にすれば入国時に人数制限する必要性は全くない。
また私が一昨年11月に帰国した時には、アジア諸国など感染度が低いとされていた国からの入国者は検査不要で入国できた。私はヨーロッパからソウル乗り継ぎで福岡から入国した。その便では乗客のほとんどがアジアから(ベトナムからの研修生が大多数)であったため、入国時に検査を必要としたのは私を含めて2人だけだった。こういう方法だって考えられるはずだ。
今の日本国内の議論は、入国者のリスクに応じた入国者数ということではなく、リスクに関わらず入国者を絞ることが目的で、それを何人に緩和できるかという内容で、全く科学的に成り立たっていない。それに疑問を呈する報道が全く見られないのが残念だ。
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