英国王室の多くの城や宮殿は英国のどこにあるのか

イギリスでは、ヘンリー王子とメーガン妃の騒動のあと、エンジンバラ公の死、カミラ夫人がチャールズ皇太子の即位後は、王妃を名乗るべきことの発表、そしてエリザベス女王のコロナ罹患と大きなニュースが続いている。

しかし、日本と違って、宮殿やお城が、全国やロンドン市内各所に散らばっているのでどこでのことか分かりにくい。

そこで、「世界史が面白くなる首都誕生の謎」(知恵の森文庫)では、それらの解説をしているので、そのさわりを掲載の地図のうち1枚とともに紹介する。

イングランドと英国は違うものかと聞かれたら、歴史に詳しい人でも「はて」と思うだろうが、少なくとも語源論からは、同一である。

だが、日本人は、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」のことをイギリスとか英国といい、本来のイングランドを指すときにはイングランドと言うことが多いので、本来は誤用なのだが受け入れてそのように使う。

アングロサクソン人はデンマークのユトランド半島からきて7王国(ヘプターキー)を建てたが、829年にウェセックス王エグバードによって統一され、アルフレッド大王によって統一王国らしくなった。

しかし、デーン人(バイキング)が侵入したりの混乱の後に、フランスのノルマンディー公だったギヨーム(ウィリアム1世)が1066年に征服した。以来、ウィリアムの子孫が女系相続もしつつ万世一系的な継承をしていまに至っている。

ノルマン征服(コンケスト)以前、ロンドンは最有力の都市だったが首都とはいえなかった。カトリックの首座はケント州のカンタベリー(ロンドンの東)に置かれ、アルフレード大王の本拠はハンプシャー州ウィンチェスターだった。

しかし、エドワード懺悔王はウェストミンスター寺院を創立し、ウィリアム王もここで戴冠式を上げ、ロンドン塔を築き王宮とし首都ロンドンが確定した。

そして、ノルマン家、プランタジネット家(もとはフランスのアンジューが本拠。分家がランカシャー家とヨークシャー家)のあと、ウェールズにルーツをもつテューダー家が王位に就き、ここからヘンリー8世やエリザベス女王が出てイギリスは世界へ雄飛した。ウェールズ人は海への関心が強く、商業が得意だった。

ウェールズは、13世紀にイングランドに征服され、王太子(のちのエドワード2世)がプリンス・オブ・ウェールズを名乗ってそれが伝統になっている。

スコットランドには、イングランド王が支配を及ぼそうと試みたが、スコットランドはフランスと組み抵抗した。とくに、ステュアート家のメアリー女王は、フランス王フランソワ2世の王妃となったが、王の死でスコットランドに帰った。しかも、メアリーはエリザベス女王は不倫時代の子で嫡出とは言えず、女王たる資格がないとイングランド王位まで要求したが、メアリーは息子のジェームズによって追放され、イングランドに逃れるが、そこでもエリザベス女王を陥れようとしたので処刑されたが、エリザベス女王には子がなかったので、ジェームズ(1世)が即位してステュアート王朝を開いた。

グレーター・ロンドンは、1,577平方キロメートルで、東京23区が25キロ四方に対して、40キロ四方だ。シティ(ロンドン塔や金融街)とウェストミンスター、そして31の特別区によって構成されている。人口は760万人。

かつてはロンドン市長といえば、シティの市長を指したが、2000年に大ロンドン市長のポストが創設され、ボリス・ジョンソン首相もこのポストの経験者だ。

ウエストミンスター区は、もともとは国会周辺だけだが、現在では、バッキンガム宮殿、首相官邸のあるダウニング街、東京で云えば銀座などの中央区の商業地区であるオックスフォード・ストリート、リージェント・ストリート、ピカデリー、ボンド・ストリート、歓楽街のソーホーなども含む。

西部はいわば山の手で、ケンジントン宮殿(ダイアナ妃が住んでいた)、チェルシーエリアなどの住宅街、ロイヤルアルバートホールやリッチモンド、テニスで有名なウィンブルドン、サッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムがある。

スコットランドの首都はエジンバラ。市内に日本の平山城のような形でエディンバラ城という要塞が聳えてランドマークになっている。ホリールードハウス宮殿は公式の王宮で、1565年、メアリー女王の前で彼女の秘書で愛人と言われたダヴィド・リッツィオの殺害が行われた部屋が残る。メンデルスゾーンはここで『スコットランド』交響曲の着想を得た。

プリンス・オブ・ウェールズの就任式はウェールズ北西のカーナボン城で行われるが、チャールズ皇太子は現地語でスピーチして話題になった。

王室が使う主な施設は、以下の通り。

バルモラル城
出典:Wikipedia

スコットランド北部のバルモラル城は女王の夏の別荘。カーナーヴォン城はウェールズ大公の戴冠式会場。イングランド東部の北海岸にあるサンドリンガム・ハウスは王室がクリスマスを過ごす場所。イングランド南西部のハイ・グローブハウスはチャールズ皇太子の郊外の住居。ウィンザー城は、むしろ女王の本宅というイメージでバッキンガム宮殿は都心のマンションと云ったイメージか。

グレート・パークから見たウィンザー城
出典:Wikipedia

ロンドン市内ではクラレンス・ハウスはチャールズ皇太子のロンドン住居、ケンジントン宮はウィリアム王子住居である。

【グルメ】
「フィッシュ&チップス」は、白身魚のフライとじゃがいもを揚げたもの。「スコーン」というビスケット、ミートパイ、スコッチエッグ、それからマッシュポテトもイギリス人は大好きだ。少し高級なところでは、ローストビーフとスモークサーモン。英国式のブレックファストは日本人にコンティネンタルより好まれそう。アフタヌーンティーも同様だ。