ジョブ化なんて自分も含め周囲では誰も望んでないのにホントに実現するの?と思ったときに読む話

最近、ジョブ化に関する質問をホントによくいただきます。それだけ強いトレンドを肌で感じている人が多いんでしょう。

ただ、ジョブ化といっても人によってとらえ方も定義もまちまちな印象ですね。また「日本企業が右向け右で職務給に変われるとは到底思えない」という意見も根強いです。

今回はジョブ化に関するよくある質問に対する解説と、この流れの行き着く先について、突っ込んだ解説をしておきましょう。

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“ジョブ化”に関するよくある質問

「そもそもジョブ化なんて自分も含め、周囲に誰も支持してる人なんていないんですけど」

筆者の知人にもジョブ化と聞いて身構える人は多いです。たぶん社会人にアンケーととったら過半数の人が反対すると思います。

その理由は彼らが程度の違いこそあれ、年功賃金を既に持っている側だからです。毎年新卒採用やっている大手だって従業員の平均年齢はいまや40代が普通ですからね。

でも、これから先もずっと年功序列でいくためには、これから組織に入ってくる若手にも「そうだそうだ!年功序列で行きましょう!」と賛同してもらい、実際に一番下から丁稚奉公してもらわないといけません。

でもそういう若手は(少なくとも企業が欲しいと感じるターゲット層の間では)急速に減ってますね。

フォローしておくと、10年以上前から一部の優秀層には日本企業離れが既に見られました。でも現在は普通の東大生レベルで明らかに日本型雇用を敬遠する向きが広がっている印象です。

【参考リンク】今どき東大生が憧れる就職先は「MBB」 官僚は人気薄

結果的に日本企業も採れてるからいいじゃないかと思う人もいるでしょうけど、第一志望で入社してくる人材と滑り止めとして入ってくる人材では、その後の伸びが全然違いますから。

まとめると、いくら9割の中高年が支持したとしても、これから組織に入って支えてくれる若手や優秀者を納得させられないなら、もはや年功序列制度なんて維持できないということです。

「すべての仕事を明文化して切り分けるなんてまったくイメージできない。日本企業にはジョブ化は合わないのでは?」

合うも合わないも、もともと日本以外ではジョブ型が標準で、日本の「業務内容を明確化しない無制限のメンバーシップ型」というのが特殊なんですね。

「経済も組織もずっと成長し続けるのだから席にとどまる方が有利だ」という年功序列幻想が崩壊した今、ジョブ型に“正常化”するのは当然でしょう。

逆に非効率きわまりないメンバーシップ型なんかこれ以上続けたら、日本が末期のソ連みたいになるんじゃないですかね(すでにそうなってると言う人も多いですが……)。

「ジョブ型になったら解雇できるようになるの?」

日本の場合、解雇は出来ないですね……いや、出来ないこともないんですが、少なくとも今ジョブ化への見直しを進めている日本企業で「ジョブがなくなったら解雇する」ことを想定してやっている企業は知る限り一つもないです。

ほとんどが最低保障給みたいな下限を作るか、役割給の方だけを変動させてトータルの給料は一定額は保証する方法をとっています。

なので「ジョブが無くなっても雇い続けるなら本来のジョブ型じゃない」と言われればそうでしょう。でもこればっかりは規制緩和しないかぎり企業の努力では限界がありますね。

「解雇できないならジョブ化が広まっても採用数は増えないのでは?」

これについてはかなり採用数も増えるし多様化も進むと筆者は見ています。実際前回述べたようにそうした手ごたえは既に感じています。

今まで企業が40歳以降の中途採用に及び腰だったのは、年齢相応の賃金水準がすでに社内に存在し、それに相応しい役割、スキル、実績などを求めたからなんですね。

たとえば45歳だったら管理職として外から見てもそれなりに分かりやすい実績がないと採る側もなかなか手を出しづらかったわけです。これが“転職35歳限界説”と呼ばれていたものの正体ですね。

でもそれが「年齢じゃなく、本人の果たせる職責に応じて値札を決められる」という風になれば、極端な話、何歳であろうがいくらでも選択肢に入ってくるわけです。

従来は「人材として凄く見どころあるんだけど、年齢的にうちじゃ上がり目ないから採れないんだよね」と中途採用でぼやく採用担当者は多かったんですけど、これからどんどんそういうぼやきは減っていくことでしょう。

以降、
会社のジョブ化のレベルはここで決まる
20年後、サラリーマンは消滅しているか

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2022年2月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。