ウイルス感染の偽装警告詐欺にあわやの体験記

yamasan/iStock

片言の日本語から不審察知

ウクライナ情勢が緊迫化する中で、米欧機関やアノニマス(匿名のハッカー集団)がロシアにサイバー攻撃をかけ、政府や軍組織の機能マヒを狙っています。一方、ロシア側はフェイク・ニュースをネットに流し、ウクライナのイメージ・ダウンを画策しています。

パソコンでウクライナ情勢をチェックしていましたら、突然、トップページの6割くらいの大きさの画面が割り込んできました。ガーガーと何かを叫んでいる音声付きです。ハッカーにやられたかと思い、画面を凝視しました。

「Windowsからの警告メッセージ」というタイトルです。「あなたのパソコンはウイルスに感染しました。至急、下記の番号に電話をして、対策を講じて下さい。講じないと、クレジットカードの番号、預金口座番号などの個人情報が盗まれます」と。

同じことを音声で繰り返ししゃべっています。これは詐欺だろうと判断し、割り込み画面を削除しようとしても、「×」のマークがありません。トップページの画面を閉じようとしても、いつもはある「×」マークが消えています。

音声は「途中で電話を切ると、あなたのパソコンは再稼働せず、使えなくなります」と、がなり立てます。もしそうなら困ったことになる。電話をとりあえずしてみるか。スマホで電話すると、スマホもウイルスに感染すると思い、固定電話を使いました。

電話をしてみますと、女性の声で英語で「しばらくお待ちください」とかいっている。なかなかつながらないので、電話を切り、2,3度かけ直すうちにつながり、今度は男性の声です。「パソコンを使っているのは個人ですか、企業ですか」と聞く。「個人ですよ」。

「あなたはユーチューブをみることがありますか」。「ありますよ」。「ユーチューブで変態を見ましたか」。変態とは何か。ポルノ動画のことかなと思い、「見ないことはありません」。「外人の動画を見ているうちに、ウイルスの感染しましたね」。「外人なんて見てませんよ」。

「変態」といい、日本人の日本語でないことから、これは詐欺目的のハッカーだろうと判断しました。音声は「電話を途中で切らないでください。切るとパソコンが使えなくなります」と、繰り返す。仕方なく男性の声を聞いていると、「こちらで解決してあげます」。

電話をきると、先方からまたかかってくる。2度も。同じ男性だ。しつこいなあ。しょうがないから聞くことにする。

「近くにコンビニがありますか」、「ありますよ」、「何分くらいのところですか」、「10分です」、「待っていますから、コンビニでグーグル・プレイ・カードを買って下さい。グーグル・プレイ・カードを知っていますか。知らなければ、メモをして下さい」。ご丁寧な話だ。

「カードは見たことはある。買ったことはない」、「3万円分を買い、戻ってきてください。この電話は切らずに、待っています」。もう15分はかかっている。ますます怪しい。3万円がサポート代金という名目か。詐欺にしては、下手な詐欺だ。

そこで「あなた、詐欺だな。最近、よくある」、「いえ、違います。私を信用して下さい。一日数十件のトラブルを解決してあげています。信用して下さい」。もう面倒だ。20分もあきらめていない。パソコンのダウンを覚悟で、電源の強制終了のボタンを押す。画面が全て消えました。

恐る恐る再起動すると、いつも通りに動きだしました。なんだ、やはり脅しか。カード代金の3万円は、数字か何かを入力させ、詐取するつもりだったのだろう。

この顛末をfacebookに投稿すると、似たような経験をしている人が多いらしい。「がなり立てるあの音声には驚かされた」、「画面をシャットダウンするには、タスクマネージャーを起動し、タスク終了をクリックするとよい」といった助言も頂きました。

グーグルで検索すると、「電話サポート詐欺、偽装警告文に注意」、「テクニカルサポート詐欺から身を守る方法」、「絶対に電話をしないで下さい。マイクロソフトのサポートではギフトカード形式で料金を請求するようなことはない」。

タスクマネージャーは「Ctrl, Alt, Dltを同時に押すと、起動できる。タスク終了を押す」とも。「遠隔操作を許可すると、個人情報が盗まれたり、不必要なプログラムをインストールされる」と。

ネット検索すると、消費者庁が2月、「コンビニなどで前払い式の電子マネーを購入させ、コード番号を連絡させ、詐取する。電話の多くが片言の日本語です」と、注意を喚起しています。

下手すぎる日本語、ポルノと言わず変態といったり、詐欺にしては、素人ぽい感じでした。それにしても、どうやって私のパソコンに侵入してきたのか不思議に思っています。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年3月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。