政府肝いりの「経済安保法案」が審議入り

インテリジェンス強化と罰則担保なしに、実効性は保てるか

こんにちは、音喜多駿(日本維新の会 参議院議員 / 東京都選出)です。

本日から衆議院で、今国会の目玉とも言える「経済安保法案」が審議入りしました。

もとより重要法案の一つであったことは間違いありませんが、ロシアの軍事侵略によってさらに状況は一変。

政府原案は「最低限の一歩」ではあるものの、極めて不十分な内容にとどまることから、維新は対案として議員立法を提出。同時に審議入りすることになりました。

維新 経済安保法案の対案 衆院に提出 国の調査権限強化など
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220314/k10013531421000.html

現状認識と課題について、青柳代議士の代表質問の内容を元に、いくつかの主要点を本ブログでも取り上げておきたと思います。

1.
ロシアはウクライナ侵攻にあたり、いわゆる「ハイブリッド戦」を仕掛けていると言われています。

ハイブリッド戦とは、2014年のクリミア危機によって世界に広まった新たな戦争の概念で、戦争行為を軍事だけでなく、経済制裁の拠り所ともなる貿易、金融、資源、経済援助といった経済分野に加え、外交、サイバー、情報といった非軍事・超軍事領域まで拡大して捉える考え方です。

安全保障の裾野の拡大を受けて、各国は経済安全保障に関する法制度や体制の整備を急速に進めてきています。

こうした中で日本は周回遅れの状況にあり、各国並みの体制を早急に構築する必要があります。

しかしながら、今回の法案に含まれる経済安全保障の分野は、原料・物資のサプライチェーン、基幹インフラの確保、官民の技術協力及び特許の非公開という4つの施策のみであり、最低限の防御といえる程度に留まっています。

基本法制の制定で終わらせずアップデート等、随時の見直しと拡充が必要不可欠であると言えます。

2.
また経済安全保障を実現するためには、政府のインテリジェンス強化が求められる。

本法案が施行されると、安全保障上の重要性が高いと認定された原料・物資、技術及び産業等は、特別な措置により保護を受けることになります。

この際、何を重要性が高いと認定し、特別扱いするかについては、高度な分析に基づく合理的な選定が行わなければなりません。

一方、かつて半導体の重要性を理解できずにその優位性を完全に失い、経済安全保障上の危機を招いた今の政府に、今後それができるとは到底思えません。

経済安全保障を実効性のあるものにしていくためには、適切な対象を見分ける組織的なインテリジェンスが不可欠と考えますが、政府案ではその点に対する危機意識が欠如しています。

3.
最後に、罰則の適用について。

維新は経済成長やイノベーション創出への影響を最小限とするため、経済安全保障の対象となるものは戦略的かつ限定的に選定されるべきとする一方、ひとたび選定されたものについては、その実効性を高めるべく、「刑事罰を含む厳しい罰則」を適用することを提言してきました。

政府案では施策に様々な罰則が適用されています。しかし、最も肝心なサプライチェーンに関する事業者等の報告・資料提出義務については罰則が除外されています。

これについては公明党の要望により、与党内の協議を経て罰則が削除されたとの報道がありました。

悪意を持つ事業者が、努力義務のみで政府に対する情報提供を自発的に行うと、本当に考えているのでしょうか。

もしそう考えているのであれば、昨今の厳しい国際情勢の中で、政府与党はあまりにも楽観的かつ非現実的な前提で安全保障を捉えており、国民の生命と財産を託すに値しないと言わざるを得ません。

ブログでは主要な3点にテーマを絞りましたが、全編はぜひ青柳代議士の質疑動画を御覧ください。

維新が対案として提出した議員立法では、こうした政府案の欠陥を補う内容(新たな国際秩序形成の促進、インテリジェンス強化、罰則の規定等)となっています。

単に政府案を批判するだけでなく対案を提出し、それが同時に審議入りをしているのですから、建設的で生産性の高い国会に向けた変化への第一歩も踏み出しています。

法案審議・政策論争の行方にぜひご注目いただければ幸いです。

それでは、、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2022年3月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。