2週間ぶりに憲法審査会が開会されました。せっかくこの国会では2月10日以来、4週連続で定例日に開催されていたにもかかわらず、先週開かれなかったことは残念です。
国会議員は税金をいただいて議論することを仕事にしている以上、「開かないこと」に力を使うのではなく、「開いて議論し成果を出すこと」に力を使うべきです。
オンライン国会の実現に向けた「出席」の憲法解釈は一定の結論を見ましたが、逆に解釈では限界があることも明らかになりました。大規模な感染症や災害などの緊急事態によって選挙ができない状態になったときに、任期切れで立法府の機能が停止することは避けなければなりません。
憲法審査会は休んでいる暇はありません。今後は毎週開催して、非常時に備える議論をしていくべきです。
衆議院憲法審査会発言要旨(2022年3月17日)
先週の定例日、特に開催しない理由がないのに憲法審査会が開催されなかったことは遺憾だ。せっかく定例日開催が定着してきたのに極めて残念だ。定例日の開催を原則とすることを改めて求めたい。
オンライン国会のフォローアップを
憲法56条の「出席」の解釈について、憲法審査会で「議論して結論を得る」ことがでできたことは画期的だ。しかし、その後の動きが悪い。
せっかく、森会長から衆院議長、議運委員長に報告し、オンライン審議を可能とする規則改正や本会議決議につなげることを提起したが、まだ動いていない。地方議会の本会議でもオンライン審議を可能とする地方自治法の解釈を明らかにする通知を総務省から出すことも含め、引き続き、憲法審査会としてフォローアップすることを会長に求めたい。
なお、ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン国会演説についても、当初、前例がないことを理由に難色が示されたようだが、我々国民民主党から衆議院の議院運営委員会で提起させていただき、ようやく実現の目処がたった。前例踏襲もいいが、そろそろ常時オンライン演説ができる国会に変えていくべきことは付言しておきたい。
憲法解釈の限界
今後も、具体的な成果を出せる議論を行っていくことを求めたい。今回問われたのは、いかなる事態の下においても、国会の機能を止めてはならず、そのための方策を緊急事態の発生前に事前に講じておくべきということ。今回は解釈でオンライン出席が認められたが、解釈で認められない限界も見えた。つまり憲法改正が必要な外縁も明らかになった。
昨夜も大きな地震があった。想定外のことが多発する時代だ。前例踏襲ではなく、想定外に備えて準備する姿勢が必要であり、憲法審査会でもあらゆることを想定した議論を積極的に進めておくべきだ。その意味で、次に議論が急がれるのは、緊急事態条項についての議論である。
緊急事態条項がないことの危険性
国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べたい。それは一言で言うと、「緊急事態条項自体が危ないのではなくて、まともな緊急事態条項がない中で、恣意的に権力が行使される余地が残されていることが危険である。」ということだ。
「緊急事態条項は危険」との印象を持つ方もいるが、それは憲法の規律性が乏しいことから生じる問題だと考える。確かに、一般的な「緊急事態条項」のイメージは、「行政府の簡易・迅速な権限行使」を可能とする“権限行使容易化条項“としての緊急事態条項である。
しかし、私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、緊急事態においては平時よりも強度な措置が必要とされる場合もあることを認めつつも、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として、行政府である内閣による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法府である国会や司法府である裁判所による統制を明示する“権限統制条項“としての緊急事態条項である。
“権力統制条項”の議論を急げ
この権限統制として、大きく2つのカテゴリーの統制が必要だと考える。
①原則国会の事前承認を求めるなどの「手続的統制」
②絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの「内容的統制」
の2つである。
こうした考え方を前提に急ぎ議論すべき論点を、2点提起したい。
1点目は、そもそも「緊急事態の定義」について議論すべきと考える。国民民主党は、権力濫用を防止する観点から、ある程度限定列挙すべきとの考えである。具体的には、
①外国からの武力攻撃
②内乱・テロ
③大規模自然災害
④感染症の大規模まん延
の4つのカテゴリーを原則とすべきと考えている。何を緊急事態とするのか、まずこの点について議論を深め共通認識を形成したい。
2点目は、前回も提案した「議員任期の特例」についての議論は特に急ぐべきだ。任期満了時に正常な選挙ができないような事態に陥った場合に、任期の特例延長の規定を創設すべきと考える。この点については、夏に参議院選挙を控えており、早急に議論して結論を得ることが必要な論点だと考える。
この点に関して、憲法54条2項の参議院の緊急集会は解散時だけでなく、任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、その解釈を本審査会で明らかにすべきだ。
私たちは、54条2項の文言上、緊急集会は任期満了時には開催を求めることができず、解散時以外にも開催を認めるのであれば、やはり憲法改正が必要だと考える。まず、この54条2項の解釈を確定するための集中審議を求めたい。夏までに早急に結論を得たい。
これ以外にも、「人権制限の限界」「人権の本質的内容の絶対的制限禁止」など、緊急事態条項については議論すべき論点が多々あるので、ことの緊要性に鑑み、次回からは緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。そして言いっぱなしではなく、具体的な結論を得られる審査会の運営をお願いしたい。
前回も申し上げたが、憲法は飾っておくものではなく、魂を入れて活かすことが必要。その息吹を吹き込む役割を憲法審査会が果たすべきである。そのためにも、憲法審査会を毎週開催することを、改めて求めて発言を終える。
編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2022年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。