米2月小売売上高、インフレ加速が仇となり前月から鈍化

米2月小売売上高は前月比0.3%増と、市場予想の0.4%増を下回った。21年5月以来、8ヵ月ぶりの力強い伸びとなった前月の4.9%増(3.8%増から上方修正)に届かなかったものの、過去7ヵ月間で、6回目のプラスとなる。自動車とガソリンを除いた場合は0.4%減と、前月の5.2%増(3.8%増から上方修正)からマイナスに反転。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は1.2%減と、市場予想の0.4%増を下回った。こちらも、前月の6.7%増(4.8%増から上方修正)から減少に転じた。

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チャート:米2月小売売上高、前月比で過去7ヵ月間で6回目のプラスに

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(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、主要13カテゴリー中、前月比で7種が増加し、前月の10種を下回った。最も力強い伸びを示したのは価格上昇が際立ったガソリン・スタンドで、その他、外食、雑貨、スポーツ用品など、服飾といった経済活動正常化で恩恵を受ける費目が目立った。一方で、前月に増加が顕著だった無店舗を始め、ヘルスケア、家具などが減少した。費目別の詳細は、以下の通り。

(プラス項目)

・ガソリン・スタンド→5.3%増>前月は1.7%減と9ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は2.3%増
・外食→2.5%増、3ヵ月ぶりに増加>前月は1.0%減、6ヵ月平均は0.4%増
・雑貨→1.9%増、2ヵ月連続で増加<前月は2.1%増、6ヵ月平均は1.5%増

・スポーツ用品/書籍/趣味→1.7%増、3ヵ月ぶりに増加>前月は1.3%減、6ヵ月平均は0.2%増
・服飾→1.1%増、過去6ヵ月間で5回目の増加<前月は1.4%増、6ヵ月平均は0.5%増
・建築材/園芸→4.1%増、7ヵ月連続で増加>前月は1.2%増、6ヵ月平均は2.2%増
・自動車/部品→0.8%増、過去6ヵ月間で5回目の増加<前月は6.9%増、6ヵ月平均は1.6%増

(マイナス項目)

・一般小売→0.2%減、過去4ヵ月間で3回目の減少<前月は4.5%増、6ヵ月平均は0.1%増
(*百貨店は1.6%増、2ヵ月連続で増加<前月9.8%増、6ヵ月平均0.2%減)
・食品/飲料→0.5%減、減少に反転<前月は1.0%増、6ヵ月平均は0.4%増
・電気製品→0.6%減、過去4ヵ月間で3回目の減少<前月は2.1%増、6ヵ月平均は1.7%減

・家具→1.0%減、減少に反転<前月は7.5%増、6ヵ月平均は0.2%増
・ヘルスケア→1.8%減、4ヵ月ぶりに減少<前月は0.2%増、6ヵ月平均は0.2%減
・無店舗(オンライン含む)→3.7%減、減少に反転<前月は20.6%増、6ヵ月平均は1.7%増

チャート:米2月小売売上高、前月比のカテゴリー別

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(作成:My Big Apple NY)

小売売上高の前年同月比は17.6%増と2桁増を維持。それだけではなくバイデン政権下で施行された追加経済対策でのバラマキを実施した21年3月以降で最小だった前月の14.0%増から再び伸びが広がった。

チャート:1月、費目別の前年比は、21年2月以来の低い伸び

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:1月小売売上高、費目別の20年2月比

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(作成:My Big Apple NY)

――米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が2011年9月以来の水準に落ち込み、購入見通しも自動車が3ヵ月ぶりに過去最低更新にブレーキを掛けたとはいえ、住宅や大型家電を含め低迷を保つ割りに、小売売上高は1月の高水準に続き、プラスを維持しました。アトランタ地区連銀によるGDPナウは、3月17日までに公表された小売売上高を含む経済指標に基づけば、1~3月期実質GDP成長率は1.3%増とし、従来の1.2%増から上方修正されました。

また、米疾病予防管理センター (CDC)が2月25日に事実上のマスク着用義務化を解除し、3月8日のハワイ州を最後に全米50州で同措置が緩和されるなか、人出が徐々に戻りつつあります。3月18日時点では全米で20年2月比で10.0%減と、感染者数がピークをつけた1月半ばの21.3%減からマイナス幅を半減させています。特に公園が15.6%増とプラスに転じており、未だマイナスなのは在宅勤務が引き続き優勢とみられ駅・乗り換えと職場がそれぞれ25%減と下押ししているためです。

チャート:米国の人出、徐々に回復中

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(作成:My Big Apple NY)

国際航空運送協会(IATA)がロシアによるウクライナ侵攻が開始した2月24日以降の3月1日に公表した見通しによれば、北米の航空機利用者数は2019年比94%と、アジア太平洋の68%、欧州の86%を上回ります。

何より、航空会社大手3社はそろって1~3月期売上見通しを上方修正しています。デルタ航空の最高経営責任者(CEO)は、油価の上昇により航空券の価格を約10%引きげる必要があるものの、航空需要につき「今まで経験したことがないほど力強い」と発言。ユナイテッド航空は、ビジネス顧客の力強い需要回復を支えに、1~3月期の売上がレンジ上限に到達すると見込みます。

他にも、外食の回復が目覚ましい。オープンテーブルによればテキサス州は19年比、7日平均で24.2%上昇し、NY州でも7.8%とプラスに転じています。全米でも4.1%と、2月後半以来のプラスへ戻しつつあります。

チャート:レストラン予約状況、テキサス州やNY州で19年比プラス

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(作成:My Big Apple NY)

問題は、以前から指摘させて頂くように消費者の裁量消費余地があるか否か。コロナ禍におけるモノへのペントアップ需要が一巡しサービス部門へシフトするならば、個人消費は2021年のような勢いを維持できないでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年3月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。