露の安保理常任理事国の資格停止を

ウクライナの首都キーウ北西部のブチャで民間人と思われる多くの遺体が発見され、クレバ外相は3日、「ロシア軍のジェノサイドだ」とし、ロシア軍の戦争犯罪として徹底的に調査する方針を明らかにした。ウクライナ当局によると、これまでブチャ、イルピン、ホストメルで410人の遺体が発見されたという。

奪還したブチャに入るウクライナ警察(2022年4月2日、ウクライナ国家警察の動画から、ウィキぺディアから)

両手を絞られ頭部を撃たれて殺された男性の遺体もあったという。多くは路上に放置されていた。同虐殺事件を目撃した老人は西側ジャーナリストの質問にパニック症状を呈し、体を震わせ、声が出ない状況だった。

オーストリア国営放送の旧ユーゴスラビア特派員だった記者は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争(1992~95年)でセルビア人勢力がスレブレニツァでイスラム教徒系の男性約8000人を殺した通称「スレブレニツァ虐殺事件」に言及し、「ブチャの虐殺が戦争犯罪であるか否かを慎重に調査し、文書化しなければならない」と述べていた。

遺体が放置された地域には地雷が敷かれ、遺体を片付けようとした人が犠牲になるように仕掛けられているという。その残忍な殺人行為はロシア軍の通常兵士ではなく、チェチェンから派遣された過激な武装勢力やシリアで戦闘してきた戦争請負人による行為ではないかという声も聞く。

ウクライナ南東部のマリウポリはロシア軍の侵攻前は約43万人の都市だったが、ロシア軍の攻撃が開始され1カ月後、市の風景は完全に一変し、住居から病院まで全て破壊された。3月16日、ロシア軍は1000人以上の市民が避難していた同市の劇場に空爆した。同市当局は先月25日、「300人以上が亡くなった」と発表したばかりだ。その中には多数の子供たちが含まれていた。

ブチャの虐殺、マリウポリの空爆は明らかに民間人を狙った殺人であり、戦争犯罪に該当する蛮行だが、ロシア側はこれまで「ウクライナ側が工作して、演出したものだ」と述べ、その軍事活動を否定してきた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、「明らかにジェノサイドだ。メルケル氏(独前首相)とサルコジ氏(元仏大統領)はブチャを訪問して、自分の目で見ればいい。政権時代に推進してきた親ロシア政策がどのような結果をもたらしたかが分かるだろう」と語っている。

ちなみに、ゼレンスキー氏が言いたかった内容は、2008年のブカレストで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会談でメルケル首相(当時)とサルコジ大統領(当時)がウクライナのNATO加盟をロシアへの配慮から拒否したことを指す。ゼレンスキー大統領の批判に対し、メルケル前首相は4日、広報担当者を通じて、「当時の決定は正しかった」と語ったという。

ドイツのショルツ首相は、「民間人殺害は戦争犯罪だ」と非難し、徹底調査の必要性を訴えた声明文を発表。また、グテーレス国連事務総長は、「独立した調査によって、説明責任がしっかりと果たされることが不可欠だ」と主張した。ブリンケン米国務長官は、「米国はロシアが戦争犯罪を犯しているという結論に至っている。戦争が続く限り、ロシアは毎日戦争犯罪を行っている」と指摘し、「それを終わらさなければならない」と強調している。同長官がCNNとのインタビューの中で語った。

それでは具体的にどのような対応が可能か。ロシアの経済活動への追加制裁は考えられるが、ウクライナのロシアへの併合というファンタジーの確信者プーチン氏にそれ程効果があるかは疑問だ。国連の関与にいたっては、ウクライナ戦争の当事国であるロシアが国連安保理事会で拒否権を有している限り、何もできないことは明らかだ。法的拘束力のない国連総会の非難決議を何度採択しても解決にはならない。

現時点で考えられるシナリオは、①ロシアの常任理事国の資格を停止することだ。国連憲章で明記されているように、国連は世界の紛争解決と平和を構築する使命を有した機関だ。ロシアは国連憲章の精神に反している、②ロシアから天然ガスと原油輸入をストップする。代替エネルギーが十分ではない国にとって、輸入ストップは厳しいが、相互援助して乗り越える以外にない。原油・天然ガスの輸出からの巨額の収入がプーチン氏の戦争資金となっているからだ。

プーチン大統領が何を言ったかではなく、何をしたかが重要だ。ブチャやマリウポリの戦争犯罪を犯しながら、「ウクライナの仕業」と堂々と白を切るロシアに対し、常識の論理や制裁では埒が明かないのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年4月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。