「新卒全員職種別採用」なんて本当にできるの?と思ったときに読む話

城 繁幸

先日、大手電機のパナソニックが2023年卒予定者より新卒採用を全員職種別採用にするとリリースし、新卒採用市場に激震が走っています。

筆者も驚きましたね。ふつうこうした方針の大転換って、今から関係各所と協議、調整しつつ、まあ最速で2024年卒、普通に考えれば2025年卒からというのが相場でしょう。

パナソニック、事業会社別に採用 - 日本経済新聞
パナソニックは11日、2023年4月入社の新卒採用計画を発表した。22年4月から持ち株会社制度に移行することを受け、持ち株会社傘下の事業会社ごとに新卒者を採用する。大学・

【参考リンク】パナソニック、事業会社別に採用

それが2023年卒からとは、非常にピリピリした緊張感を感じてしまいます。それだけ劇的な変化がリアルタイムで進行中だということでしょう。

パナソニック株式会社 採用パンフレットより

新卒一括採用をぜんぶ職種別採用に切り替えたら何が起こるんでしょうか。そもそも、それは実現可能なんでしょうか。キャリアというものを考えるいい機会なのでまとめておきましょう。

「なんの職種に応募するか決めろ」と言われても困る学生が過半数

採用数が少ないと実質的に職種別採用みたいなものなので問題ないんですが、配属先が事務系から技術系まで多岐にわたり、しかも採用担当が採用業務に特化している大手だと、担当者は常にあるジレンマを抱えているものです。

「自分の行っている採用って、本当に必要な人材を選べているんだろうか」

そういう採用担当者にとって、職種別採用というのはある種の理想なんですね。誰でも一度はやってみたいと考えたことがあるはずです。

でも、同時に彼らはその限界もよく理解していることでしょう。

たとえば就活中の学生を100人集めた場合。

1.「自分の希望する職種が既に決まっており、かつ、そのために勉強やインターン等である程度のリソースを費やしている人材」

は、せいぜい10%くらいでしょう。

2.「希望する職種は〇〇です、とイメージで言うものの、それを選んだ理由が自分でもよくわかってない人、あるいはその職に就くために特になにもしていない人」

というのは、4割くらいいるはずです(ひょっとすると面接で問われて初めて頭に浮かんだ意見かもしれません)。

3.「本音ではなりたい職種ははっきりはわかりません」

という人達が半分くらいというのが正直なところでしょう。

別に日本の若者がぼんやりしているというつもりはありません。長年にわたり日本企業自身が新卒一括採用を行ってきた結果、そうなってしまっただけの話ですから。

20年前だったら「〇〇をやりたいです」なんて強く主張する学生は正直煙たがられてましたからね。

なんて書くと「最近はインターンも充実し、学生の意識もずいぶん変わったんじゃないの?」と思う人もいるでしょう。

確かに徐々に変わってきているのは事実ですが、現実問題としてそういう目的意識のはっきりした人は一括採用中心の大手にはあまりいかないので、採用する側から見て上記の割合は変わらない印象ですね。※

では、ここで急転直下、「当社は今後、新卒採用は全員職種別採用で行きます」と宣言するとどうなるでしょうか。

1番のグループは「待ってました!」と奮い立つことでしょう。2番は人によるでしょうね。でも間違いなく3番はひくと思います。「やりたいこともわかってないような奴はうちには来るな」と言われるようなものですから。

もちろん1番2番のグループは増える可能性はあります。でも元々の数を考えると、とても全体をカバーするほどではないだろうなという印象ですね。

恐らく今回の発表、トップダウンで決まったことでしょうけど、現場は相当頭を抱えているんじゃないでしょうか。

※逆に言うと、そうした人材をもっと集められるようになるというのが職種別採用にシフトする大きなメリットです。

以降、
人事が職種別採用をやりたがらないワケ
今後予想される職種別採用の流れ

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Q: 「現状からプラスアルファでキャリアを積みますには?」
→A:「やりようによってはすごく楽しいステージになるでしょう」

Q: 「管理職にならずに報酬を上げる方法はありますか?」
→A:「ジョブが一巡するまで待ちましょう」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2022年4月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。