日本人が気づいていない自分達の重要性とは

谷本 真由美

ウクライナ戦争が始まってから欧州だけではなくイギリスの報道はウクライナの情勢一色である。

今回私が大変気になっていることは、多くの日本人がある重要なことに気がついてないことである。

それは日本が北米と欧州、オセアニアの先進国において重要な仲間の一員であるということが強調されている点だ。それを当の日本人たちが十分に認識していないのだ。

例えばその象徴的なことが先日ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で演説を行ったことであるが、フランスに先んじて行われたということの重要性を理解していない人があまりにも多い。

これはどういうことかと言うと、ウクライナだけではなく他の先進国も日本に期待をしているということのジェスチャーなのである。

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各国が日本は憲法の縛りがあって武力協力をできないことが分かっている。資金援助など日本が出来る範囲で貢献をしてほしいというメッセージなのであるが、今回の場合はいつものように単なる金の支援を要請しているのではなく、日本がアジアにおける自由主義社会の最後の砦であるということを強調しているのだ。

私の著書「世界のニュースを日本人は何も知らない3」にも書いたが、そもそも東アジアだけではく、アジア全域でまともな民主主義国家であり、資本主義を実践し、法律がきちんと機能する法治国家は日本だけである。

海外の企業が日本と取引する場合は、日本政府が資産を突然国有化するような心配をしなくてよいし、従業員が突然逮捕されることだってない。出張者の発言や行動を監視されることもありえない。税関や空港、倉庫で賄賂を要求されることもないのだ。暴動や政変も起きない。

子供の誘拐だって本当に稀だし、下水が爆発したり、いきなり停電になることは稀だ。シャワーを浴びても水のせいで体が痒くなることもない。スーパーやコンビニのものを食べても食中毒にもならないのだ(これが理由でイギリス人である夫は、アジアでは日本以外の国には行きたくないと言っている。お腹が弱いのである)。

仰々しいことを書いたが、残念ながらアジアにおいて日本以外の国ではこれが結構珍しくない。

一応先進国認定されているシンガポールだって、独裁国家で監視国家なので、お色気ページがある日本の写真週刊誌さえ自由に輸入ができないのだ。台湾は国があまりにも小さく、日本に比べると私生活でもビジネスでもトラブルが多い(これは実体験である)。

そしてアジアだけではなくアフリカ、南米、中東に目を向けてみても、まともな民主主義国家はゼロだ。まともな法治国家も殆どない。どこも汚職と政変と大気汚染と社会不安だらけで平均余命が短く医療も教育もレベルが低い(悪口だらけだが本当だから仕方がない)。

つまり非白人圏で、非キリスト教徒の国で、民主主義で、まともな資本主義で、まともな法治国家なのは本当に日本だけなのだ。

その重要性を理解していない日本人はあまりにも多い。

そしてアジアは欧州に比べても政治的に恐ろしく不安定なところだ。北米や欧州が問題視している国が集まっている。そんな国に囲まれているのが日本なのだ。

日本はそういった国の中において自由主義と民主主義の防波堤の役割を担っている。アジアの命運は日本にかかっているといってもいい。

日本が独裁国に飲み込まれてしまったら、アジアの民主主義と自由主義はそこで終わりだ。

日本がロシアの隣りにあり、領土紛争を抱えているということをもっと真剣に考えねばならない。ちなみに私はウラジオストックまで富山の伏木から船で行ったことがあるが、その近さを体感しゾッとしたことを覚えている。