生きがいをもって自分の職業とするとき

人には多様な顔がある。家族の一員としての自分、地域社会の一員として活動する自分、学校の同窓会の一員としての自分、馴染みの居酒屋の常連客の一員である自分、趣味を同じくする同好会の一員としての自分、世界市民社会の一員として環境問題を考える自分などは、自分にとっては大切な自分なのである。

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人は、普通は、自分の何であるかを問われたとき、所得の源泉や専門的知見をもって答える。しかし、本来は、所得の源泉や専門的知見を差し置いて、敢えて名乗るべき自分、真の自分があるはずである。

働き方改革においては、会社員の所得の源泉は多様化する。兼職が広く行われるようになれば、複数の会社に属する人だけではなく、会社員としての所得以外の収入を得る人も出てくるが、さて、そのような人は何をもって第一義的に自分の職業とするのか。

全所得のうち比重が最大のものをもって、自分の職業というのか。それとも、働くことに投じている全時間のうち比重が最大のものをもって、あるいは、知的活動の投入量は働く時間と関係ないから、むしろ、時間よりも知的活動量の比重のほうをもって、更には、人間にとって最も大切なことは働くことから得る感興や喜びだから、最も生きがいを感じることをもって、自分の職業とすべきか。

かつて、昭和の経済成長期において、会社員として働くことは、所得の源泉であり、同時に、生きがいでもあったであろう。そして、その調和が経済成長をもたらしたのである。今、人が生きがいをもって働き、結果的に、その生きがいから所得が生じるとき、新たな経済成長のあり方が見えてくるのであろう。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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