こんにちは、音喜多駿(日本維新の会 参議院議員 / 東京都選出)です。
国会においてはいわゆる「AV新法」の成立に向けた審議が佳境に入っています。本法案には様々な議論・課題があり、今後も不断の検討が続けられる必要がありますが、維新としても法案提出者=賛同者に加わっています。
AV新法とは何か?売春の「合法化」批判、セックスワーカーの「自己決定」とは
本法案や派生する事項への論点整理としては、長文になりますがこちらの記事がもっともわかりやすいのではないかと思います。
そうした中、質疑に立った立憲民主党議員の「AVにおける本番行為禁止」の主張と、それを補強するロジックが話題になっています。
性行為伴うAV禁止する法制定を別途検討 立憲民主党が方針 「テレビの殺人シーンで実際に殺さない」
AVにおける「性行為」を巡っては様々な論点であり、今回の法案とは別途、検討を続けられることは答弁の通り自由にされるべきだと思います。
しかしながら、立憲民主党およびその一部支援者・支援団体の方が傾倒されている「性行為」や「セックスワーク」そのものを忌避されるような主張・論理には非常に危うさを感じるので、本日はその点について私の考えを述べておきます。
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まず今回の立憲議員による「テレビの殺人シーンでは実際に人を殺さない」についてでありますが、言うまでもなく殺人は犯罪ですが性行為はそうではありません。
これを同列にして性行為という「表現の自由」にも密接にかかわる分野の禁止に踏み込もうとすることは、セックスワークの忌避・禁止・制限にもつながり兼ねない危うい考えだと思います。
実際、立憲民主党に大きな影響を与えていると思われる活動家・支援団体の一部には、性行為や性風俗そのものを「搾取」と捉えて禁止を求める活動が見られます。
しかしながらTweetでも指摘した通り、セックスワークの非合法化にはむしろ左派・リベラルと言われる方々が日頃より「日本は遅れている!世界では~」と標榜する国際人権団体も極めて慎重な立場を取っています。
例えば、アムネスティ・インターナショナルは以下の声明を発表しています。
アムネスティがセックスワーカーの権利保護に関する方針と調査結果を公表
アムネスティの方針は、2年以上にわたって行ってきた世界各地での各種団体との協議、検証済みの証拠、国際人権基準の慎重な検討、そして直接調査の集大成である。(中略)
またこの方針では、合意に基づくセックスワークの非犯罪化を勧告している。買春、客引き、一般的なセックスワークの組織化など、関連行為を禁ずる法律も対象に含む。このような法律(※セックスワークを禁止する法律)はかえってセックスワーカーの安全を脅かし、彼らを利用し虐待する側の不処罰を招いていることが、証拠で明らかになっている。
セックスワーカーが、罰せられることを恐れて犯罪被害を警察に報告できない場合が多いためである。したがってセックスワークに関する法律は、もっぱら搾取と虐待から人々を守ることに焦点を当てるべきで、すべてのセックスワークを禁止し、セックスワーカーを処罰するものであってはならない。
(上記声明文より抜粋、※注釈と強調筆者)
アムネスティが指摘するように、セックスワークを犯罪化・非合法化すると、それは「地下」に潜って犯罪の温床になり、かえって被害者の増加や深刻化をもたらすことが調査によって明らかになっています。
残念ながらと申しますか、人間の根源的欲求である「性」に関することについて、法律で禁止をすればなくなるというものではありえないわけです。
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AVでの性行為禁止についても、それが禁止を求める方々の言う「被害」「搾取」を撲滅することにつながるかといえば、それは甚だ疑問であると言わざるをえませんし、表現の自由や「自己決定」を毀損することにもなりかねません。
そもそもフェミニズム運動において、「Sex work is work(性労働も労働である)」という女性の自己決定に関する部分は極めて中核を為す提言だったはずなのですが…。
AV新法の成立後も、なお残る論点については、当事者の声も聞きながら引き続き精緻かつ建設的な議論と検討を続けてまいります。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2022年5月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。