いつまで硬貨の発行を続けるのだろう

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6月9日午後、財務省の行政事業レビュー公開プロセスが実施された。テーマは二つ。酒類業振興関係事業と貨幣の鋳造に必要な経費である。

酒類業振興関係事業の対象は主に日本酒の酒蔵である。国内需要の減少・従事者の高齢化といった構造的課題、新型コロナウイルス感染症の影響などに立ち向かい国内外の新市場を開拓する経営改革・構造転換を促す補助金事業である。

「農林水産物及び食品の輸出促進に関する法律」の下、政府は農林水産物の輸出促進に取り組んでいる。酒類業の主務官庁は財務省だが、財務省は政府全体の活動と連携しているのだろうか。

僕は次のような意見を出した。

海外イベントへの出展支援は、ジャパンフードフェアなど政府全体で実施するイベントと連携しての出展が好ましい。また現地の酒蔵団体(例えばアメリカ人醸造家が組織した団体)とも連携して、現地における日本酒への関心喚起を進めるのがよい。

インバウンド(訪日観光客)向けに実施する酒蔵ツアーは、個々の酒蔵で、あるいは京都伏見のように地域内の酒蔵共同で実施しても効果は限られる。インバウンド向けに全国各地の酒蔵ツアーに関する情報を地図や動画を添えて提供すると共に、外国人インフルエンサーなどの利用も含めソーシャルメディアで広報するなど、デジタル活用が重要である。

公開プロセスの結論は「事業内容の一部改善」となった。事業の効果検証をしっかり行い、事業成果を業界全体にフィードバックする情報発信が重要と指摘された。

貨幣の製造に必要な経費の「貨幣」とは「硬貨・コイン」のことである。キャッシュレス化が進展する中で、いつまで硬貨を製造していくのだろうか。

僕は次のように指摘した。

5年、10年単位で考えれば、キャッシュレスの進行と共に硬貨の需要量は減少していく。しかし、造幣局が製造した硬貨は銀行を経由して流通するので、造幣局が市場の需要量を直接知ることはむずかしく、余裕を持って生産せざるを得ない点が課題である。

関東地方に限定して供給量を絞り硬貨不足が生じるか社会実験するなど、市場の需要量を把握する試みを行ってはどうか。製造設備の老朽化が進んでいるというが、需要量が把握できなければ設備更新計画も立てられない。海外動向調査も含めて、需要を把握する努力を進めていただきたい。

公開プロセスの結論は「事業内容の一部改善」となった。老朽化した設備を更新しつつコスト削減に取り組むこと、キャッシュレス化など社会情勢による需要の変化を踏まえたうえで発行規模を決めることが指摘された。