「シン・ウルトラマン」は日本の安全保障を真っ向から描く問題作だ

田原総一朗です。

先日、映画「シン・ウルトラマン」を観た。「ウルトラマン」シリーズがテレビで人気を集めた時代、映像の仕事はしていたので、円谷プロダクションの特撮には注目していた。ただ、アクション好きではなく、特にファンというわけではなかった。

しかし今回、スローニュース代表の瀬尾傑さんが、「(ジャーナリストの)津田大介さんと一緒に、観に行きませんか」と誘ってくれたのである。瀬尾さんは元講談社の編集者で、『現代ビジネス』を創刊し、編集長に就任。ジャーナリズムに真剣に取り組む、私が非常に信頼している人物である。

観る前まで、僕は「シン・ウルトラマン」を、わかりやすく楽しめる大娯楽作品だろうと予想していた。ところが、である。ストーリーが進んでいくに従って、僕の予想は完全に覆された。

「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が、日本の各地に次々と現れる。政府はスペシャリストを集めて、「禍威獣特設対策室専従班」を設立。そんなある時、大気圏外から、銀色の巨人、「ウルトラマン」が出現する。

「禍威獣」との闘いが描かれているのだが、これは決して絵空事ではない。映画では、アメリカなど国際社会は、武器は供与するものの、共闘してはくれない。通常兵器では太刀打ちできず、「禍威獣」に追い詰められた日本政府は、核兵器の使用も考える……。

日本の「専守防衛」を前提とする、安全保障にまともに突っ込み、警鐘を鳴らした大変な問題作だ。瀬尾さんがなぜこの映画に誘ってくれたのか、観終えたあと、深く納得したのである。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2022年7月5日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。