5歳から11歳の子どもに新型コロナワクチン接種を推奨する根拠は?

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厚生労働省は、5歳から11歳の子どもへの新型コロナワクチン接種について、接種を受けるように努めなければならないとする「努力義務」の適用を9月6日から開始しました。

同時に5歳から11歳までの子どもに対する3回目接種も開始されています。5歳から11歳に接種されるのは、従来型ワクチンですが、一方12歳以上への接種ワクチンは、従来型ワクチンからオミクロン対応ワクチンへ変更されることになりました。

このような政府の方針に合わせて、日本小児科学会からの提言も、5〜11歳のワクチン接種に対して、それまでの“意義がある”という表現から“推奨する”という表現に変わりました。

小児科学会はワクチン接種を推奨する理由として、

  1. 重症例や死亡例の増加が見られること
  2. 小児に特有な疾患であるクループ、熱性ケイレンのほか脳症や心筋炎などの重症例の報告が見られること
  3. 重症化予防効果が40〜80%見られること
  4. 副反応が12歳以上と比較して軽いこと

を挙げています。加えて、推奨する根拠となる国内外の研究論文を紹介しています。

本稿では、紹介された論文を詳細に検討することで、小児科学会の提言の妥当性を検証します。

「重症例や死亡例の増加が見られる」

2022年8月末までの、わが国で把握された10歳未満小児の新型コロナウイルスによる死亡者数は16人で、10歳未満の小児人口100万人あたりでは1.4人です。一方、米国の10歳未満小児の新型コロナウイルスによる死亡者数は643人で、人口100万人あたり16.3人とおよそ日本の10倍です。

ワクチン接種を含めて、わが国も米国と同じようなコロナ対策をとることを主張する専門家もいますが、米国の小児と日本の小児とでは致死率に大きな違いがあることを考慮する必要があります。

10歳未満のコロナ死亡例の16人のうち、11人については基礎疾患の有無が記載されていましたが、基礎疾患がなかったのは4人のみでした。4人のうち急性脳症の1例以外は死因が記載されていませんでした。

また、生まれつきの病気があって、コロナの感染を契機に、肺炎や呼吸不全でなくなった子どもが2人報告されています。救急で入院したところ、血液病に罹患していることが判明した2人は、同時にコロナ検査が陽性でした。この2人は血液病が原因で死亡しましたが、コロナ感染による死亡とされています。

現状では、交通事故死でもコロナ検査が陽性ならコロナ死に計上されています。小児の死亡例が増加していることがワクチン接種を推奨する理由とされていますが、コロナ感染による死亡者数については、水増しがあることも考慮する必要があります。

ところで、子どもにとって、コロナウイルスは他のウイルスと比べて、どれほど脅威なのでしょうか。そこで、0〜19歳における新型コロナウイルスとインフルエンザの重症者数と死亡者数を比較してみました。

表1 新型コロナウイルス感染とインフルエンザ感染による死亡と重症化リスクの比較
第74回アドバイザリーボード提出資料を改変

0〜9歳では、小児人口100万人あたりにおけるインフルエンザの年間死亡患者数、重症患者数は5.2人、71.1人で、新型コロナウイルスの0.43人、12.0人の12倍、6倍でした。

今回は、インフルエンザにおける重症の定義をコロナウイルスの定義と合わせるために、人工呼吸やICU管理を必要とする場合とされていますが、インフルエンザによる重症患者の多くを占めるのは、脳炎や急性脳症患者です。

小児科学会は、コロナウイルスによる急性脳症の増加を指摘していますが、把握されている脳症による死亡例は1人です。インフルエンザ脳症は、2016年/2017年には166人、2018年/2019年には266人、2019年/2020年には254人発生しており、その多くは小児です。インフルエンザ脳症の死亡率は30%、重篤な後遺症の発生率は25%程度とされており、小児にとって、インフルエンザはコロナよりずっと重篤な病気です。

「重症化予防効果が40〜80%見られる」

ワクチン接種を推奨する理由として重症化予防効果が40〜80%見られることが挙げられています。

日本においては、コロナウイルス感染時における重症の定義はICUに入室あるいは人工呼吸管理が必要な場合とされています。小児科学会からの提言には8つの海外論文が引用されていますが、うち重症化予防効果の記載があるのは2つのみでした。

1つは米国からの論文で、その論文では、12〜18歳において79%と高い重篤化予防効果が見られたものの、非重篤例の予防効果は20%に過ぎませんでした (N Eng J Med.2022,19;386:1899)。

イタリアからは2回接種後50日以内の重症化予防効果は44%と報告されていますが、対象となった644人の重症者のうちICUへの入院は15人に過ぎず、死亡も2人のみであり、重症の定義が日本とは異なるようです(Lancet. 2022, 9;400:97)。

オミクロン株流行期における5〜11歳に対する発症予防効果については6つの報告があります。接種後2ヶ月以内では、40〜70%と比較的高い予防効果が得られていますが、2ヶ月を過ぎると25%以下に低下しています。なお、研究期間は2022年4月までであり、BA.4/BA.5が蔓延する2022年5月以降の患者は含まれていません。

国内からは、5つの報告が引用されていますが、BA.5流行期における小児のワクチンの有効性を検討したのは静岡県からの報告のみでした。この報告も重症化予防効果は検討されていません。

「副反応が12歳以上と比較して軽い」

5〜11歳におけるワクチンの安全性については、米国における予防接種安全性監視システム(VAERS)に登録された副反応が紹介されています(The Advisory Committee on Immunization May 19,2022;)。

副反応の多くは、注射部位の局所反応や発熱、頭痛などの全身反応で、重篤な副反応は9001件の副反応のうち251件(2.8%)でした。国内における副反応報告は107件で、うち重篤例は25件です。(第81回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料)

5〜11歳で副反応が軽いのは、ワクチンの接種量が12歳以上の1/3であることによると思われます。5歳から11歳におけるワクチン接種後の死亡例が、米国からは7人、日本からも1人報告されていますが、小児科学会の提言にはなぜか触れられていません。

死亡とワクチン接種の因果関係は8人ともに不詳とされていますが、うち4人は複数の基礎疾患を抱えていました。重症心身障害などの基礎疾患がある小児にはワクチン接種が推奨されていますが、基礎疾患によっては、ワクチン接種後の死亡リスクが高いことも保護者に知らせるべきです。日本の死亡例は11歳の女児で死因は心筋炎でした。ちなみに、日本ではワクチン接種後の10歳代の死亡が10人報告されています。

保護者の多くは、ワクチン接種による局所反応や全身反応よりも、中長期の副反応を懸念しており、この点に関する情報も提供する必要があります。小児科学会の提言には「現時点では新型コロナワクチンの長期的な安全性に関わる情報は少ないので、今後も注意が必要です」としか記載されていません。具体的に、中長期的にはどのような副反応が起きる可能性があるかについても触れるべきでしょう。

ワクチン接種による中長期の副反応の可能性としては、自然免疫の低下によって免疫監視機構が低下することから、ウイルスの再活性化や、がんの発生や再発が増加することが考えられます。成人では、水ぼうそうウイルスの再活性化が原因である帯状疱疹の増加が報告されています。そのほか、自己免疫疾患の増加にも注意を払うべきです。

図1 新型コロナワクチン接種による中長期的な副反応の可能性

予防接種法で、ワクチン接種後の副反応を医療機関やワクチンメーカーは報告することが義務となっています。そこで、わが国におけるコロナワクチンとインフルエンザワクチン の副反応の頻度を比較してみました。

コロナワクチンは2021年から2022年の間に、わが国では2億8千万回接種されています。2016年から2020年の間に2億6千万回接種されたインフルエンザワクチンの副反応報告と比較してみました。

表2 インフルエンザワクチンとコロナワクチンの副反応の頻度の比較

副反応、重篤例、死亡例の発生数は、コロナワクチンはインフルエンザワクチンと比較して、それぞれ、13倍、13倍、50倍でした。

個々の副反応についても心筋炎や代表的な自己免疫疾患であるギランバレー症候群を例にすると、心筋炎はコロナワクチンの760人に対して、インフルエンザワクチンでは1人、ギランバレー症候群はコロナワクチンの222人に対してインフルエンザワクチンでは33人と大きな違いがみられました。

スウェーデンなど一部の国では、健康な5〜11歳の小児にコロナワクチンの接種を最初から推奨していません。接種を行っていたイギリスでも、最近、ワクチン・予防接種合同委員(JCVI)の勧告に従い、健康な5〜11歳の小児へのワクチン接種を中止しました。

欧米各国と比較して、コロナ罹患者の致死率が低いわが国の小児におけるコロナワクチンの必要性については、保護者が十分納得できる説明が必要と思います。