黙示録「獣の数字666の謎」:聖書最大の謎が判明?

聖書の新約聖書最後の「ヨハネの黙示録」第13章には有名な「666」の獣の話が登場する。「思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は、666である」と記述されている。聖書学者は数字「666」が誰を意味するのか、その秘密の解明に腐心してきたが、これまで誰にも理解できるように解き明かした学者はいなかった。

ローマ皇帝トラヤヌス帝の胸像(ウィキぺディアから)

それをウィーン大学古代史研究所のハンス・トイバー氏はその聖書の最大の謎「666」の獣の名はトラヤヌス帝(西暦53年~117年)だというのだ。世界史によると、ローマ帝国の全盛期、5賢帝のネルウァに次ぐ2番目のローマ皇帝だ。トラヤヌス帝(在位98年~117年)はダキアとパルティアに遠征し、ローマ帝国の領土を最大にした皇帝だ。

ローマ皇帝で悪魔の手先と考えられる皇帝は、キリスト信者たちを迫害した暴君ネロ帝(在位54年~68年)、ドミティアヌス帝(在位81年~96年)、ハドリアヌス帝(在位117年~138年)などの名前が浮かぶが、トラヤヌス帝という名前は予想外だ。トラヤヌス帝は治世時代は「よき君主だった」という評価が多い一方、トラヤヌス帝の宮廷は「サタンの館」と言われていたという「666」を裏付ける史実も確かにある。

この話はウィーン大学サイトに10月31日付で掲載されている。2016年4月の記事を再掲載したものだ。関心のある読者はサーチされたらいいだろう。タイトルは「666–des Ratsels Losung」(「666」の謎の解明)だ。

「666」の話は、エフェソスでの発掘調査中に「ハングハウス2」で明らかになった壁の落書きを翻訳したものだ。古代のゲーム参加者にとって、この「パーティーゲーム」に登場するパズルの解決は難しくはなかった。ギリシャ語のアルファベットの各文字には数値があるという原則に基づいていたからだ。alphaは1、betaは2を表す。名前を構成する文字の数値を加算することにより、元の名前を推測できるというわけだ。そしてトラヤヌス帝の数字は「666」だったというのだ。

トイバー氏らはコンピューターサイエンスの専門家たちの助けを借りて、小アジアで見つかった全ての人名の数値を計算し、古代の人名リストを作成した。このプログラムの助けを借りて、聖書の最大の謎の1つを突き止めていったわけだ。黙示録の第13章では、「怪物」(テリオン)が記述されており、それに対して「ドラゴン」(サタン)が説明されている。「ここに知恵がある。理解できる者は獣の数を計算すべきだ。それは人間の数であり、その数は666であるからだ」というわけだ。例えば、イエスはヘブライ語では「749」であり、反キリストは「666」だというのだ。

話は飛ぶ。ソ連共産党時代の最後の大統領、ミハイル・ゴルバチョフ氏の頭上には何か消された痣があった。当時、若くてインテリのゴルバチョフ大統領がソ連のトップに登場すると、世界は注目した。そのゴルバチョフの頭上に何かかき消されたような痣があったことから、悪魔を意味する「666」が書かれていたのではないか、という噂が広がっていった。

ペレストロイカを推進し、ソ連の民主化に乗り出し、今年8月30日、91歳で亡くなったゴルバチョフ氏にとって迷惑な話だったが、神を否定する無神論唯物世界を代表するソ連共産党のトップはサタンの手先だ、という思い込みがあったからだ。

ところで、「悪魔」は本当に存在するのだろうか。「神の存在」を問う人々は多いが、「悪魔の存在」について考える人は案外少ない。聖書では悪魔(サタン)という言葉が約300回登場する。有名な個所としては、「ヨハネによる福音書」第13章「悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていた」がある(「悪魔(サタン)の存在」2006年10月31日参考)。

悪魔は自身の存在を隠ぺいしてきた、というより「悪魔は存在しない」ということを言いふらしてきた。悪魔が存在すれば、それでは神は何処にいるのか、という声が出てくる。そのため悪魔は天地創造の神を否定するために「自分は存在しない」と思わせなければならない。「ヨハネの黙示録」では龍として登場し、地上の獣にその権力を相続させていく。そして「地上の神」は数字666が刻印されたサタン直系というわけだ。(悪魔『私は存在しない』」2021年6月23日参考)。

「黙示録」の「666」の数字が当時、ローマ帝国のトラヤヌス帝を意味していたとすれば、同帝の言動、その血統を辿っていく必要が出てくる。SF小説のようだが、トラヤヌス帝の血統を継承する人間が21世紀の「666」を刻印された人物であり、龍からその権力を得た獣ということになる。新約聖書の「マタイによる福音書」では、イエスの血統図が記述されている。同じように、「666」を表示したトラヤヌス帝の血統図を詳細に調査する必要がでてくるわけだ。

mellangatang/iStock


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。