米10月雇用統計・NFPは堅調も、年末商戦の臨時雇用が押し上げか

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<本稿のサマリー>

米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は堅調に増加したものの、2021年1月からの増加トレンドで最も小幅な伸びとなりました。一方で、家計調査の就業者数は4カ月ぶりに減少米10月チャレンジャー人員削減予定数が前月比と前年同月比で増加した動きと整合的です。また、雇用形態別ではフルタイムと複数の職を持つ者が減少し、年末商戦の臨時雇用が入りやすい季節要因からかパートタイムのみが増加していました。

失業率は20年2月以来の低水準に並んだ前月から上昇労働参加率が低下していたほか自発的な離職者数も減少しており、Fedの積極的な利上げを受けた需要低下を背景とした解雇が増えた様子が明らかになりました。平均時給は、前年同月比で鈍化しており、人手不足が指摘されつつ労働参加率が低下するなか、10月公表分のベージュブックで指摘があったように企業の大判振る舞いは幕を閉じつつあるようです。

堅調なNFPの増加ペースに反応し、市場関係者は再びタカ派のFedを織り込みつつあります。FF先物市場によれば、12月13~14日開催のFOMCの50bp利上げの確率は52.0%と、前日の61.5%から低下。逆に75bp利上げ確率は48.0%と、前月の38.5%から上昇しました。とはいえ、2023年末までのFF金利見通しは変わらず。2023年2月に50bp、同年3月の25bp利上げを行いFF金利誘導目標レンジを5.0~5.25%に引き上げた後、2023年12月まで利下げはないと織り込んでいます。

チャート:2023年以降は据え置き予想が引き続き優勢、4%以上への追加利上げ観測は低下

(作成:My Big Apple NY)

米10月雇用統計のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・NFPがは堅調なペースで増加
・過去2ヵ月分のNFPが上方修正

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・平均時給、前年同月比の伸びは鈍化(購買力の観点でネガティブも、インフレ落ち着きの観点ではポジティブ)
・失業率が上昇
・労働参加率は低下
・不完全就業率は過去最低から上昇
・フルタイムの労働者が減少(複数の職を持つ労働者も減少、パートタイムは増加)
・週当たり労働時間は横ばい
・長期失業者の割合は、20年8月以来の低水準(ただし、労働市場から退出した可能性も)米10月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比26.1万人増となり、市場予想の20.0万人増を上回った。前月の31.5万人増(26.3万人増)に届かず、2021年1月以降の増加トレンドで最も低い伸びに。とはいえ、2019年平均の16.4万人増を超え、堅調なペースを維持した。

8月分の2.3万人の下方修正(31.5万人増→29.2万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で2.9万人の上方修正となった。8~10月の3ヵ月平均は28.9万人増となった。経済正常化に合わせ、2021年平均の56.2万人増を6ヵ月連続で下回った。

非農業部門就労者数(NFP)は20年3~4月に2,199万人減少したが、22年7月にこれを打ち消した。20年5月以降、今回で2,280万人の雇用を取り戻した結果、NFPは1億5,302万人と20年2月を51,4万人上回った。

チャート:20年2月の水準を回復するまで、2年と5ヵ月を要した格好。

(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比23.3万人増と市場予想の20.0万人増を上回った。前月の31.9万人増(28.8万人増から下方修正)を含め、22ヵ月連続で増加した。民間サービス業は20.0万人増、前月の27.1人増(24.4万人増から下方修正)を下回った

チャート:NFPは堅調な伸び続く、失業率は20年2月以来の低水準に並んだ前月の3.7%から3.5%へ低下

(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中で7業種が増加し、前月の全業種を下回った。今回最も雇用が増加した業種は教育/健康で、2位は娯楽/宿泊、3位は専門サービスだった。一方で、政府を始め金融が減少したほか、年末商戦前の臨時雇用が前年以下が目立ち輸送・倉庫、小売も落ち込んだ。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・教育/健康 7.9万人増、30ヵ月連続で増加<前月は9.1万人増、6ヵ月平均は9.1万人増(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は7.1万人増、16ヵ月連続で増加<前月は8.1万人増、6ヵ月平均は7.5万人増)
・専門サービス 3.9万人増、18ヵ月連続で増加<前月は5.2万人増、6ヵ月平均は6.1万人増(そのうち派遣は1.2万人増、18ヵ月連続で増加<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は0.8万人増)
・娯楽/宿泊 3.5万人増、22ヵ月連続で増加<前月は10.7万人増、6ヵ月平均は5.9万人増(そのうち食品サービスは●9.0万人増>前月は8.1万人増、6ヵ月平均は7.2万人増)

・政府 2.8万人増>前月は0.4万人減と3ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は2.9万人増
・卸売 1.5万人増、27ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
・その他サービス 0.9万人増、4ヵ月連続で増加<前月は2.0万人増、6ヵ月平均は1.0万人増

・輸送/倉庫 0.8万人増、3カ月ぶりに増加>前月は1.1万人減、6ヵ月平均は1.1万人増
・小売 0.7万人増>前月は0.8万人減と4ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は0.4万人増
・情報 0.4万人増、8ヵ月連続で増加<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は1.4万人増

・金融 0.1万人増、16ヵ月連続で増加>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・公益 0.1万人増、7カ月連続で増加=前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.1万人増

―横ばいの業種

なし

―減少した業種

なし

財生産業は前月比3.3万人増と前月の4.8万人増(修正値)を下回った。18ヵ月連続で増加した。業種別をみると、製造業が18ヵ月連続で増加した。建設は6ヵ月連続で増加。油価が景気後退懸念で80ドル台を中心とした推移が続くなか、鉱業・伐採は横ばいだった。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 3.2万人増、18ヵ月連続で増加>前月は2.2万人増、6ヵ月平均は2.9万人増
・建設 0.1万人増、6ヵ月連続で増加<前月は2.2万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・鉱業/伐採 横ばい(石油・ガス採掘は400人増)<前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.4万人増

チャート:セクター別、就労者の増減

(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は前月の0.9%増→1.1%増と5ヵ月連続でプラス圏をたどると共に上げ幅を広げた。11業種中、7業種が当時の水準を超えた。

今回、初めて教育・健康が0.4%増とプラスに反転。そのほか、8月にプラスに転じた卸売(0.5%増、3カ月連続)、輸送・倉庫(12.6%増、25ヵ月連続)、専門サービス(5.1%増、13ヵ月連続)、情報(4.8%増、11ヵ月連続)、小売(1.5%増、10ヵ月連続)、金融(1.1%増、9ヵ月連続)となる。また、7業種中では金融以外がすべて前月の伸びを上回った。

財部門は前月の0.9%増と、前月の0.7%増を超え4ヵ月連続でプラス圏を守った。建設(1.3%増)が6ヵ月連続でプラスとなっただけでなく、製造業(1.1%増)も5ヵ月連続で増加した。製造業はプラス圏を回復して最も力強い伸びとなる。鉱業・伐採は7.6%減と下げ幅をは変わらなかった。

 

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.4%上昇の32.58ドル(約4,710円)と、市場予想の0.3%を上回った。21ヵ月連続で上昇している。前年同月比は54.7%上昇し、市場予想と一致、前月の5.0%を下回り2021年8月以来の低水準だった。生産労働者・非管理職の前年同月比は5.5%上昇、21年8月以来の低い伸びとなり賃金インフレのピークアウト感を示した。

チャート:平均時給は、生産労働者・非管理職の前年同月比でピークアウト感が漂う

(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は、5カ月連続で34.5時間だった。一因は、前述したようにパートタイムの増加が一因とみられる。2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を下回り続けた。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.0時間となり、5カ月ぶりの長さとなった。ただし、コロナ禍で最長となった2月の40.4時間以下が続く。

全体の労働者の約7割を占める民間サービスは2カ月連続で33.5時間、20年4月以来の低水準に並んだ8月の33.4時間を上回り続けた。とはいえ引き続き低水準にあり、雇用主が従業員の確保を狙い、就業時間の柔軟性を与えていると考えられよう。2006年以降で最長を記録した21年5月の33.9時間以下が続く。

チャート:週当たり平均労働時間は、短縮傾向

(作成:My Big Apple NY)

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数の伸びが前月以下だったものの、週当たり労働時間が横ばいだったため、前月比0.2%増だった。一方で、平均時給は上昇が続いた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.5%増だった。

失業率は3.7%と、市場予想の3.6%のほか7月に続き20年2月の低水準に並んだ前月の3.5%を上回った。失業者が30.6万人増と増加に転じたことが背景にある。自発的離職者数は5カ月ぶりに減少した。

チャート:自発的離職者数は前月比4.8%増の86.2万人と、7ヵ月ぶりの高水準だった前月から減少。つれて失業者に占める自発的離職者数の割合は14.6%と、1990年4月以来の水準へ上昇した前月の15.9%から低下。

(作成:My Big Apple NY)

労働参加率は62.2%、前月の62.3%を下回った。なお、コロナ感染拡大直前の20年2月は63.4%である。労働力人口は前月比35.3万人減と、前月の増加を打ち消した。

就業率は2カ月連続で60.1%を経て、60.0%へ低下。コロナ感染拡大直前にあたる20年2月の61.2%に距離を残す。

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合などの項目は、今回から削除された。

6~7月に、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就労者数の乖離について指摘した。今回はNFPが26.1万人増に対し、家計調査の就労者数は32.8万人減とNFPに反し減少。両者の乖離が一段と明確になった。

チャート:NFPに反し、家計調査の就労者数は前月比で減少。

(作成:My Big Apple NY)

家計調査の就労者数を雇用形態別でみると、フルタイムと複数の職を持つ者が減少したためパートタイムの増加を打ち消していた。フルタイムは過去7カ月間で5回目の減少。複数の職を持つ者も減少に転じた。逆に、パートタイムは過去4カ月間で3回目の増加となり、10月公表分のベージュブックが示すように、採用凍結などを受け雇用の質が変化している様子が見て取れる。

チャート:パートタイムと複数の職を持つ者が増加、肝心のフルタイムは減少傾向続く

(作成:My Big Apple NY)

チャート:複数の職を持つ労働者、コロナ以前の20年2月以来の高水準となった前月から小幅減。

(作成:My Big Apple NY)

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は1994年の統計開始以来で最低を更新した6~7月の水準に並んだ前月の6.7%から6.8%へ上昇。家計調査で、就業者のうちパートタイムが増加した結果と整合的である。

2)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.2%と、前月の62.3%および20年3月以来の高水準だった8月の62.4%を下回り当時(62.7%)を下回った。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

チャート:不完全就業率は過去最低水準から上昇、労働参加率と就業率は改善

(作成:My Big Apple NY)

3)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は8.1週と前月の8.5週を下回ったが、3~4月の7.5週超えを維持。一方で、27週以上にわたる失業者の割合は19.5%と1回目の失業保険給付上乗せが終了直後の2020年8月以来の低水準だった前月の18.5%を上回った。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、2020年8月以来の低水準

(作成:My Big Apple NY)

4)賃金 採点-△
今回は前月比0.4%上昇し、2Ⅰカ月連続で上昇。前年比は4.7%と2021年8月以来の水準に鈍化した。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で3カ月連続で0.4%を経て0.3%へ鈍化。前年比は5.5%上昇し、21年8月以来の低い伸びだった。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年11月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。