前回の記事では、行政と佐倉市議会が、佐倉市に長嶋茂雄記念岩名球場を作ることを決め、市が様々な検討や交渉の結果、国からの交付金7億円とあわせて、総額約16億7,000万円の球場とすべく予算を策定したところまで紹介しました。
(前回:長嶋茂雄記念岩名球場議案の上程前夜 ②)
以上の内容を確定させるべく、佐倉市は2015年6月議会に「総額約16億7,000万円の球場建築予算」を上程しました。
議会審議の行方
この議会の前の段階で本球場の予算として公式文書で認められていたのは、佐倉市の実施計画に書かれた8億円まででした。前稿に書いたとおり、その後高野連や国との交渉で総額7億円の国からの交付金の積み増しがなされていたため、合計では、
【実施計画上の予算】約8億円+【国からの交付金】約7億円=15億円
ということになります。
一方、議会に上程された予算総額は約16億7,000万円ですから、上記の15億円との差し引きで1億7,000万円の差があります。
この部分について「増額の根拠は何か?」を問うことは、議会の役割として当然でしょう。しかし当議会では、質問せずとも執行部からは詳細な積算根拠が提示されており、金額の理屈はそれなりに通っていました。よって議会としては、その数字の妥当性が争点となるはずでした。
また私ならば、仮にこのような球場ができた場合に、佐倉市に与える経済的、文化的インパクトがどの程度のものになるかを質疑したと思います。しかし委員会や本会議の議事録を読む限り、当時の議会にはそのような質問をする議員はいませんでした。
委員会では「予算に賛成」したさくら会
2015年7月2日、以上について本件の審議委員会である建設常任委員会にて審議されました。
議事録をみると、主にさくら会と市民ネットワークが「議会への説明が不十分」という趣旨で質問をしていますが、結論としてはさくら会等の多数派の議員により「原案可決」つまり改築予算に賛成という形で議決されています。
しかし、そのわずか5日後の7月5日に行われた佐倉市議会本会議最終日には、なんとさくら会が16億7,000万円の予算を「0円」とする修正動議をあげ、その修正案が可決してしまう。この修正は、文字通り「予算案の否決」と同義です。
通常、委員会で賛成した議案を最終日の採決で否決することはしません。それは当然で、委員会の賛否とは、事実上議会の最終審査機関である委員会の審議の結果なされたものだからです。
もしどうしても賛否を変更するのであれば、「委員会から最終日までの5日間」で考えを変えた「変更理由」をしっかり討論で説明しなければなりません。
しかし、このときさくら会があげた「長嶋茂雄記念岩名球場改築費0円動議」に、さくら会の代表として賛成討論した櫻井道明議員の説明は、委員会の審議から一歩も動いていませんでした。
「同じ理由で賛否が真逆」である「さくら会の議」
議会最終日の委員会報告によれば、さくら会をはじめとする議会多数派は、委員会では「16億7,000万円の予算について説明不足」ではあるが、「市民に丁寧な説明するように」という付帯条件を付けて「賛成」しました。
それが、その5日後の議会本会議最終日にさくら会は、「16億7,000万円の予算について説明不足」であるため、「ここでは0円にすることが妥当」として「反対」したのです。
同じ理由で賛否が真逆という、一般常識では考えられない意見表明を、櫻井道明議員はさくら会を代表して高らかに討論したのでした。
この表をみると、「Step UP」というキャッチフレーズの元、佐倉市議会議員から千葉県議会議員選挙に鞍替え立候補して落選した村田じょうじ氏も、さくら会の一員として「〇」としているのが確認できます。なお、「予算0円」とする修正動議に賛成した議員は、現在も12名が現役で活動しています。
彼らが、新設される長嶋茂雄記念岩名球場について、佐倉市民と日本国民の期待を踏みにじった佐倉市議会議員たちです。
この結果により、「長嶋氏の名前を冠した球場を相応のものとすべく」内定していた国家予算7億円は、予算化されることなく雲散霧消することが確定しました。
【追記】
本案の議員の討論を紐解くと、球場建築費「0円動議」に「×」としている共産党や市民ネットワークや無会派議員は、いずれも原案の16億7,000万円には反対の立場で討論しています。ではなぜ「0円動議」に「反対」したのかという点は、当時の議事録を何度読み返しても理解できませんでした。いずれにしても、彼らは賛否の上では「0円動議」に「反対」していることは間違いありません。
(次回につづく)
【関連記事】
・長嶋茂雄記念岩名球場「予算0円」の闇 ①
・長嶋茂雄記念岩名球場議案の上程前夜 ②