11月20日毎日新聞朝刊に「焦点:APEC首脳会議、閉幕 米中対立「自由化」遠く」という記事が出ていた。米中対立に加えてロシアがからみ、アジア太平洋自由貿易圏構想に暗雲が漂っているというニュースだった。
このニュースの後段には「首脳宣言、苦肉のコピペ 「一致」優先、G20文言踏襲」という小見出しがついた。APEC首脳宣言の中にあるロシアによるウクライナ侵攻に関する表現が、先に開催されたG20首脳宣言と全く同じ、つまりコピペだったと、報じる内容だった。
毎日新聞が「コピペ」という表現を前回使ったのは、広島と長崎での岸田文雄内閣総理大臣のあいさつが広島」と「長崎」を入れ替えただけで、中心部分は一字一句同じだったと批判する記事。毎日新聞はコピペが大嫌いらしい。
首脳宣言を担当する外交官は一字一句に細心の注意を払って文案を作る。ロシアも参加したG20とAPECでウクライナ侵攻をどう表現するか、外交官は神経をすり減らしたに違いない。11月16日に終了したG20と19日に終了したAPECで異なる表現を用いることはできただろうか。それを「苦肉のコピペ」と批判するのは正しいのだろうか。
そもそもG20を構成する19か国(EUを除く)と、APECの21の国と地域とでは、9か国が重なっている。オーストラリア、カナダ、中国、インドネシア、日本、メキシコ、韓国、ロシア、米国である。それを見ずに「コピペ」といっていいのだろうか。構成は一部異なるが同じメッセージを出したことに価値があるのではないか。
広島・長崎も同様。日本を代表して核廃絶について世界に向かって出すメッセージについて、わずか三日の間に大幅に変えることができるのだろうか。ほぼ同一内容で当たり前ではないか。
一番わからないのは、小見出しから後ろの部分に「横山三加子」というクレジットが付いている点。実は毎日新聞の19日夕刊に「APEC閣僚声明、コピペ? G20宣言、露非難部分と同一」という記事が載っていて、内容は全く同一でクレジットは「バンコク高木香奈」となっている。横山記者と高木記者が同一人物なら構わないが、異なるとすれば、横山記者は高木記者の記事を丸写し、コピペして自分の名前を出したことになる。
それでも毎日新聞は他人のコピペを批判できるのだろうか。