何が投資のチャンステイクで、何がリスク管理なのか

投資は、チャンス、即ち利益を得る機会に意図的に、自覚的に賭けることとして、チャンステイクなのであり、そこに、意図せざるものとして、チャンスを攪乱するリスクが付随するわけである。そして、リスク管理とは、意図せざるリスクの制御のことであるから、投資とは、チャンステイクとリスク管理の複合なのである。

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インデクス運用は、資産管理の重要な道具である。巨額に形成されてある国民資産は、何らかの形態で存在しているわけだが、そのすべてが積極的な価値創造に投資されるわけでもなく、また、それが物理的に可能なわけでもなく、多くの部分は単に効率的に管理されるだけにならざるを得ないのだから、インデクス運用が相応しい。インデクス運用は、チャンステイクというよりも、リスク管理の手法なのである。

また、投資の一つの考え方として、世界経済全体の成長に平均的に参画することで長期的に合理的な投資収益を実現できるとするときは、極めて広い領域に分散投資することになるから、様々な市場を代表するインデクス運用を組み合わせることが有効な手法である。このとき、投資家の好みや戦略により、配分に傾斜がつくから、その傾斜こそ、投資としてのチャンステイクといえる。

ヘッジファンドは、意図的に行うチャンステイクを純粋に実現させるために、リスク管理の手法としてチャンステイクに付随するリスクを全てゼロに向けて最小化する技法であって、リスクをゼロにすることがヘッジだから、ヘッジファンドと呼ばれる。

例えば、社債の信用リスクだけを純粋にチャンステイクの対象にするのならば、金利リスクは完全にゼロになるようにヘッジするということであり、株式の割安さだけをチャンステイクの対象にするのならば、株価変動のリスクがゼロになるようにヘッジするということである。

ヘッジファンドにおいては、チャンステイクの特定における高度な専門性が求められるだけでなく、付随リスクの完全なヘッジという極めて難易度の高いリスク管理技術も求められるから、確かに、投資の理想といえるわけである。しかし、実際には、理想の域に達したヘッジファンドは極めて稀であって、多くは、チャンステイクの特定が甘かったり、リスク管理が稚拙だったりするのである。

付加価値はチャンステイクから生まれるのだから、チャンステイクが決定的に重要であるはずだが、実際には、リスク管理の失敗が付加価値を一掃することや、リスク管理の越権によってチャンステイクが曖昧化することが多いので、適正なリスク管理も重要であって、要は、二つがそろわない限り上手な投資にはならないのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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