ブラック・フライデーのオンライン売上高は過去最大、その背景にBNPLあり?

インフレ高止まりに喘ぎながら、年末商戦見通し通り米消費者は家族や友人向けのクリスマス・ギフト購入に躊躇していないようです。

アドビ・アナリティクスによれば、感謝祭当日のオンライン売上高は前年比2.9%増の52.9億ドルと、事前予想の51億ドルを上回り過去最高を記録しました。

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ブラック・フライデーのオンライン売上高も好調で、前年比2.3%増の91.2億ドル。事前予想の1%増の90億ドルを超える伸びだっただけでなく統計開始以来で初の減少だった2021年から増加に転じ、過去最大を更新しました。

スマートフォンが占めるオンライン売上高の割合も、過去最高を記録しています。ブラック・フライデーは48%と、コロナ規制が残る2021年の44%を上回りました。感謝祭に至っては、家族や友人と七面鳥を囲んでいる事情もあって55%だったんですよね。

アドビ・アナリティクスはサイバー・マンデーにつき前年比5.1%増の112億ドルを予想、同日から開幕するサイバー・ウィークは同2.8%増の348億ドルを見込みます。2021年のサイバー・ウィークは同1.4%減だっただけに、ブラック・フライデーと共に雪辱を果たす見通しです。

消費者を取り巻く環境は厳しさを増しているなかで、この数字は驚きに値します。振り返れば、Fedの積極的な利上げを受けクレジットカードの平均金利は7~9月期には16.3%と、FRBがデータを公表して以来で最高でした。クレジットカードの債務残高もQ3に前年同期比15.0%増の9,250億ドルと過2019年Q4に次ぎ過去2番目の高水準で、伸び自体はデータ取得以降で最高だったものです。さらに、実質ベースの平均時給は10月に前年同月比で18カ月連続でマイナス、貯蓄率も9月に3.1%と2008年4月以来の低い水準近くでした。

チャート:クレジットカードの平均金利、Fedの積極的な利上げに合わせ急伸

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:クレジットカードの債務残高、22年Q3に過去2番目も高水準

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(作成:My Big Apple NY)

それでも、ブラック・フライデーの売上高が過去最高を塗り替えたことには理由があります。

ブラック・フライデーの売上高を押し上げに貢献したのが、Buy Now Pay Later=BNPL、ツケ払いサービス)です。ブラック・フライデーを挟んだ11月19~25日週のBNPL経由の注文件数は前週比78%、売上高ベースでは同81%増に及びました。途中経過ながら、アドビ・デジタル・インサイツのヴィヴェク・パンデヤ氏は「ブラック・フライデーのオンライン売上高が過去最高だったとはいえ今年は消費者の間で支出額を意識する兆候がみられ、家族や友人のためのギフトを購入する上で例年以上にBNPLに頼っている」と分析していました。

ウォルマートのように、レイアウェイからBNPLへシフトする動きもBNPLでの売上を押し上げています。通常のレイアウェイの場合、買い手にが頭金を支払い、月賦での支払いを終えてから漸く商品を持ち帰ることができましたが、BNPLであれば購入後すぐの商品受け取りが可能となり、クリスマスにバッチリ間に合わせられますものね。

消費者金融保護局(CFPB)のレポートによれば、アファーム・ホールディングス、アフターペイ、クラルナ、ペイパル、ジップなどの5大BNPLサービス会社が米国で組成したBNPLローン件数は2019年から2021年にかけて10.7倍増の 1.8億件、ローン組成額は11.9倍増の242億ドルを記録しました。チョプラ局長は9月に「BNPLは、クレジットカードに近い代替手段として急速に高まっている」と発言していたものです。

特に若い世代を中心に利用するBNPLが、今年のブラック・フライデーのオンライン売上高を押し上げたといっても過言ではないでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年11月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。