前回の新型コロナは本当にインフルエンザより「危険」なのか?では、分科会のメンバー同士で正々堂々と議論を行い、科学的で正確な結論を出していただきたいとお願いしました。
その願いがかなったのか、12月21日に開催された第111回アドバイザリーボードでは、もはや季節性インフルエンザ(以下、季節性は省略)より「危険ではない」という数値が示されているようです。
これで一安心かと思いきや、なぜか公式の発表ではこの点が明確ではありません。
アドバイザリーボードの見解
現時点でのアドバイザリーボードの公式見解は、第111回アドバイザリーボードの資料4(P1)にあります。
- COVID-19による死亡インパクトを考えるにあたっては、超過死亡を考慮する必要がある。
- COVID-19と季節性インフルエンザの致死率や重症化率を比較することについては、現在示されているデータは、ほとんどの場合異なる方法で集められたものであり、直接比較するにあたっては留意が必要である。
しかし、この文章はいくら考えても理解できませんでした。
まずは、1についてです。
最近になって「超過死亡」が大幅に増えていることは、多くの人が指摘しています。もし、その増えた理由が「隠れコロナ死」だとするなら、ワクチンの有効性は「ほとんどゼロ」なはずです。少なくとも、論理的にはそうなります。かつて、ワクチンの有効性は95%だったと記憶にありますが、最近はほぼゼロになったのでしょうか?
次は、2についてです。
もし、新型コロナとインフルエンザの危険性を「直接比較するにあたっては留意が必要」なら、いままでの比較は不正確だったということです。少なくとも、論理的にはそうなります。なぜなら、最初からずっと同じ方法で比較してきたからです。過去の数字も全部否定するつもりなのでしょうか?
ということで、これらの文章は専門家が書いたとは思えない「意味不明」な内容です。そう感じるのは私だけでしょうか?
3県のデータを読み解く
もっとも、素直にデータを見ていけば、そういう謎も割と簡単に解明できるはずです。
まず、この記事の冒頭の新型コロナとインフルエンザの比較結果を再掲しておきましょう。石川県、茨城県、広島県の3県のデータによるものです。
一般的に危険性は「致死率」(死亡率)で比較します。
新型コロナの死者数は、直接の死因でなくとも―言い換えれば「間接」の死因でも―カウントされることになっています。対して、インフルエンザの死者数は、「直接」の死因だけに限定されます。
つまり、インフルエンザによる死者数のカウントは、新型コロナよりはるかに厳しいのです。
そこで、これら2つの致死率を正確に比較するためには、死因の基準をきっちり一致させる必要があります。
新型コロナの直接死の割合は、第111回アドバイザリーボードの資料3-10-②(P9)にあります。
それによると、2022年7月~8月の直接死の割合は67.6%になるようです。よって、これで新型コロナの致死率を補正すると、60歳未満ではゼロ、60・70歳代では0.18%×67.6%=0.12%、80歳以上は1.69%×67.6%=1.14%となります。
インフルエンザの致死率は、それぞれ0.01%、0.19%、1.73%ですから、新型コロナはいずれもこれらの数値を相当下回り、もはやさほど「危険ではない」ようです。
大阪のデータを読み解く
念のため、大阪府の数値も出してみることにします。
根拠となるデータは、12月7日に開催された第109回アドバイザリーボードの資料3-7-②(P3)にあります。
第7波による60歳以上の死亡率(致死率)は0.75%であり、インフルエンザの0.55%よりやや高いようです。
大阪の場合は、新型コロナの死者のうち「直接」の死因の割合が、第110回アドバイザリーボードの資料3-7(P19)で公表されています。
それによると、
第七波(令和4年6月25日~9月26日公表分)の死亡例1,297名のうち、直接死因がコロナであった者は689名(53.1%)、直接死因がコロナ外であった者は608名(46.8%)であった。
のだそうです。
インフルエンザの60歳以上の致死率は0.55%ですが、これに相当する新型コロナの数値に補正すると、0.75%×53.1%=0.40%となるはずです。つまり、オミクロン株による致死率は、第7波では既にインフルエンザを下回っていたことになります。
以上の結果を整理したのが次のグラフです。
巷間よく言われているように、オミクロン株に変異した新型コロナは、相当に弱毒化したようです。つまり、これらの結果から判断すると、「新型コロナは、もはやインフルエンザより危険ではない」ということになります。
アドバイザリーボードの方へのお願い
もちろん、以上は私のような素人の計算ですから、本当は違うのかもしれません。
しかし、それをきちんと整理して説明するのが、「専門家」としてアドバイザリーボードの役割なのではないでしょうか。また、いままで書いたように、根拠となる数字があちこちに分散していることも理解できません。
しつこいようですが、前回のお願いを繰り返します。
新型コロナの危険性について、アドバイザリーボードのメンバー同士で正々堂々と議論を行い、どうか科学的で正確な結論を出していただきたい。この点について、再度強くお願いしたいと思います。
なお、この他にも、アドバイザリーボードの資料にはいくつか疑問を感じています。
たとえば、
1. オミクロン株対応ワクチンの「有効率」は本当に71%なのか?
2. ワクチン接種後に感染しやすくなる「魔の2週間」は存在するのか?
その他にも、
3. ワクチン接種で感染が「爆発」する可能性はあるのか?
これらについては、次回の記事で説明するつもりです。
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