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ウォール街のヨーダことブラックストーンのバイロン・ウィーン副会長が1月4日、4年連続でジョー・ジドル最高投資ストラジテスト氏と共に2023年版のビックリ10大予想を発表しました。
ウィーン氏にとって38回目となる今年、以下の10項目を挙げています。一般の投資家が定義する”ビックリ=サプライズ”な出来事は30%の確率で起こること、ウィーン氏の場合は50%以上と定義していますが、どのような内容か、早速みていきましょう。
1)2024年米大統領選で、民主党と共和党それぞれからニューフェイスが登場。
2)Fedは金融緩和への転換を棚上げし、FF金利誘導目標をPCE価格指数を上回る水準まで引き上げ、実質金利はプラスへ反転。
3)Fedはインフレ退治に成功するも引き締め寄りな金利水準が長引き、米国は穏やかな景気後退入りへ。
チャート:NY連銀の試算では22年11月時点での1年先の景気後退確率は38.1%、サインが点灯する25%超え
4)米株相場は年央に底打ち、2009年に匹敵する上昇相場へ向かう。
5)赤字がインフレを引き起こすと証明された結果、現代貨幣理論(MMT)の信用が失墜。
6)Fedのタカ派姿勢維持を受け、ドルは対円や対ユーロで上昇へ。米国投資家などドル保有の投資家にとって日本やユーロ圏の投資に妙味も。
7)中国は5.5%の成長目標に向け米欧との貿易関係再構築に邁進、コモディティなどを押し上げ。
8)米国は石油生産と輸出拡大を受けWTI原油価格は50ドルへ下落、ただし世界景気の回復に伴い2023年以降に100ドル超えも。
チャート:2021年の原油生産量、上位10カ国で米国は1位。なお、米国はロイター試算によれば2023年に天然ガスで輸出1位になる見通し
9)ウクライナ停戦に伴う領土分割の交渉が開始。
10)イーロン・マスク氏、年末までにツイッターの業績回復に成功。
以下は、ビックリ予想10選から漏れた”ありえそうなこと”4選となります。昨年の3選から1つ減りましたが、2021年の水準に戻った格好です。
1)医学の進歩により自分の死因となった病気の治療法が発見されたときに解凍されることを期待し、低温埋葬を選択する人々が増える。
2)石炭火力発電所から排出される二酸化炭素削減の技術が飛躍的に進化し、気候変動や地球温暖化の懸念が後退した結果、新興国が再生可能エネルギーに移行する必要性低下。
3)インド、米中関係の不確実性における勝者となり製造業拠点として台頭。
——いかがでしたか?FF先物市場では12月の利下げ見通しが最有力のなか、Fedの引き締め政策継続との見方からドル高を予想してきました。米景気後退入りでもドル高というのは、金融緩和のピボットなしという観点で説明がつきます。金融引き締め継続でも下半期の米株ラリーを予想するのは、確かに”ビックリ”に値するかもしれません。
ただ、ドル高で日本とユーロ圏への投資妙味拡大というのは、疑問が残ります。2022年はご存知の通り円が対ドルで30%超も急落しましたが、日経平均が年間で9.4%安と4年ぶりの陰線引けでした。2022年にこれだけ円安が進んでも外国人投資家が殺到していないなら、今年もそうなるような気がするのは筆者だけでしょうか。
さて、2022年の”ビックリ10大予想”の結果を振り返ると・・・筆者には2022年と同じく1勝5敗4分だったようにみえます。
とはいえ、引き続きウィーン氏の予想は複数盛り込まれるため判断が難しいというのが実情です。気になる方は、是非2022年版を始め過去の一覧をご確認してみて下さい。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年1月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。