岸田首相が1月4日の年頭記者会見で「異次元の少子化対策」に取り組むといったことが、大きな話題を呼んでいます。これはよい子のみなさんにも関係ありそうですが、何をするんでしょうか。
Q. 少子化って何ですか?
少子化というのは、生まれる子どもの数が減ることです。次の図のように出生数は戦後、一貫して減っており、2022年は80万人を切って史上最少になる見込みです。
図1(日本経済新聞)
Q. なんで出生数がそんなに減ったんですか?
1人の女性が一生の間に何人の子どもを生むかという合計特殊出生率をみると、図1のように2005年が最低で、その後はちょっと増えています。ところが婚姻件数(結婚の回数)が戦後最低になったため、出生数が減ったのです。
図2(読売新聞)
Q. なんで結婚が減ったんですか?
2020年から21年にかけてはコロナで行動制限した影響が大きいと思いますが、それまでもずっと減り続けています。特に生涯未婚率が上がり、男性の4人に1人が一生独身です。女性も16.4%が一生独身。結婚しなくても自活できる人が増えたんでしょう。
Q. 少子化はよくないことでしょうか?
結婚だけが人生ではないので、独身が好きならかまいませんが、人口は減ります。図3のように2050年には人口が1億人を切り、15~64歳の生産年齢人口が約5000万人になります。
図3(国立社会保障・人口問題研究所)
Q. 人口が減っても、暮らしが悪くならなければいいんじゃないですか?
日本の平地の人口密度は世界最高レベルなので、人口が減ること自体は悪いことではありません。たとえゼロ成長になっても、これだけ人口が減ると一人あたりGDPは増えるので、平均生活水準はそれほど落ちないでしょう。
問題は社会保障です。2050年には図3のように生産年齢人口が今の2/3から半分に減って、お年寄りと子どもが半分になります。今は働く人2人でお年寄り1人を養っているのですが、30年後には働く人ひとりでお年寄りひとりを養うことになります。
Q. ぼくの暮らしはどうなるんですか?
今はサラリーマンの国民負担率(税・社会保険料の国民所得に対する比率)は約45%ですが、このまま少子化が続くと、成長率1%としても2050年には国民負担率は70%を超えます。給料の7割が天引きされ、手取りが3割しかなくなるわけです。
図4(鈴木亘氏)
Q. ぼくらの世代はどうすればいいんでしょうか?
よい子のみなさんにできることは、結婚して子どもをつくることぐらいでしょう。でも政府にできることはいろいろあります。
その一つは、結婚しなくても子どもをつくれるようにすることです。婚姻件数が減っても、事実婚やシングルマザーで子どもを育てる婚外子が増えればいいのです。図5のように、フランスでは出生数の56.7%が婚外子ですが、日本はたった2.3%です。
図5(舞田敏彦氏)
Q. でも日本では、結婚しないで子どもを産むと差別されるんじゃないですか?
昔は婚外子は財産を相続できないなど差別があったのですが、2013年の最高裁判決と民法改正で婚外子の差別はなくなり、法的な権利は嫡出子(法的な夫婦の子)と同じになりました。
でもこの判決に対して、自民党の高市早苗政調会長(当時)は「ものすごく悔しい」とコメントし、夫婦別姓にも反対して「日本の伝統を守る」と主張しています。こういう「家」制度を守ろうとする自民党の古い支持層が婚外子の差別を生み、少子化の原因になっているのです。
Q. 「異次元の少子化対策」って何ですか?
今のところ、出てきたのは子育て給付金ぐらいですが、これは異次元とはいえませんね。東京都は来年度から、子どもひとり毎月5000円の給付金を出しますが、毎年6万円のお金がもらえるから子どもをつくろう」と思う親がいるでしょうか。
Q. ではどうすればいいんでしょうか?
図1をみてもわかるように、合計特殊出生率は不況だった2005年に最低を記録しましたが、2006年から景気が上向くと回復しました。つまり子どもの将来の生活不安があると、出生率は減ってしまうのです。
だから大事なのは給付金をばらまくことではなく、図3のように現役世代がお年寄りの生活を支える負担を軽くし、子どもの将来に希望をもたせることでしょう。そのためには、子育て給付金のために社会保険料を値上げするなんてとんでもないことです。