高齢者→現役世代への権限・財源移譲の困難と現実とは
こんにちは、音喜多駿(日本維新の会 参議院議員 / 東京都選出)です。
ここ数日間、経済学者の成田悠輔氏の「高齢者の集団自決」という過激な発言がネット上で話題になっていましたが、発言としては不適切な面があった一方、超高齢化社会の中でいかに若年層に政策予算と権限を移譲していくかは喫緊の課題です。
先日、大学ゼミのOBOG会がありまして。
私が10期生なので一番上の世代でもまだ40代。だいたい皆さん各界の最前線で活躍する働き盛り&子育ての真っ只中ということで、
「なぜもっと子育て支援・少子化対策にお金が使われないのか、重要なことは火を見るより明らか」
「高齢者だって理解をして、少しは我慢をしてくれるだろう」
「政治家はなぜそんな当たり前の決断をしないのか」
という内容で激論が交わされました。というより、その場に居たただ一人の政治家である私に質問や意見の集中砲火が浴びせられました(苦笑)。
で、ここで話しながら思い出したことを書き留めておきます。
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都議会議員時代、私はシルバーパスの見直しを強く主張していました。
東京都の例から考える高齢者だけが利用可能な「シルバーパス(敬老パス)」の廃止を検討した方が良い3つの理由
https://job.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no114/
年齢のみを理由に交通機関が無料になるシルバーパス・敬老パスの類は政策効果に疑念があり、本当に必要な人に限る一方、その予算は教育や子育てに振り分けるべきだと個人的には今でも考えています。
この論陣を張ったとき、共産党を先頭に都議会の各会派は猛反対。「音喜多は高齢者いじめ政策を主導している」と大反対キャンペーンを張られました。
すると何が起きたか。
朝、駅での街頭活動が終わって事務所に行くと、高齢者の方が複数人で待っているんですよ。
「おまえか、シルバーパスを無くそうってトンデモないことを言っている議員は!」
「そんなことをするより、政治家の給料を減らすなり、無駄遣いを失くすほうが先だろう」
「これまで社会を支えてきたのに、シルバーパスまで削るのは高齢者いじめだ」
などなどご意見をいただき、まあそこから小一時間政策議論をするわけですね。
その前に駅で立ってチラシを配っていても、若い人はほとんど見向きもしてくれないのに、この落差よ!!
それから毎日、とは言いませんが、ピークの時はけっこうな頻度で事務所に高齢者の方々が陳情に来られる日々が続きました。
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で、これらはしっかりと投票率や選挙結果に跳ね返っているのが今の日本。ここで高齢者におもねらずに政策を貫ける政治家がどれだけいるかと言えば、日本ではまだ少ないと言わざるをえないでしょう。
実際、私はシルバーパスについての主張を変えることもなく、若い世代にかなり振り切った政策を掲げて区長選挙に挑み、完敗したわけですね…(遠い目)。
理解して応援してくれる高齢者や先輩世代もいる、というのは事実でありますが、体感でいうと1割~2割くらいでしょうか。
やはり自身の負担が増えることについては、ほとんどの人が「気持ちはわかるけど、他にできることがあるはずだ」と反対されているように感じます。
これは規制改革系の政策でもそうですが、広く薄く恩恵が行き渡る政策は味方が少ない反面、改革によって権益が失われる層は非常に強く反発するので、ステークホルダーの数以上に反対派の声が強くなります。
加えて少子化対策については、そもそも絶対数が高齢者のほうが多いのですから、規制改革系の政策以上に厳しい闘いを強いられるというわけですね。
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この解決策には残念ながら、魔法の杖はないと思います。現代では姥捨て山も集団自決もありえませんし、当然に許されるものではありません。
愚直に政策を訴え、今はまだ1割~2割の高齢世代における理解者の数を増やし続けていく。現役世代への投票を呼びかけ、選挙を繰り返して、若い世代の声が反映される政治に近づけていく。
いずれくる転換点を少しでも早められるように、現役世代の心ある政治家たちと力を合わせて進んでまいります。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2023年1月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。