デサンティス vs トランプ:ワクチンを巡る論争の行方

トランプ氏とデサンティス氏
Wikipediaより

「上品なトランプ」

2024年米大統領選の共和党予備選は、デサンティス vs トランプとなるという見方が有力だ。

デサンティスは、「脳みそがあるトランプ」、「上品なトランプ」とも言われ、様々な問題を抱える粗暴な本家に愛想を尽かした支持者が乗り換え始めていると言われて久しい。

米国の既存大手メディアは、共和党を2つに割るために、その流れを加速させる報道を続けている感がある。

日本に於いても、今や自身が別件で渦中にあるが、国際政治学者の三浦瑠麗氏も昨年、トランプ氏は「全米規模ではオワコン」 米大統領選に出るべきはデサンティス氏? 「かなりいい」等と語っている。

外交経験のないデサンティスは、トランプ支持者の自陣への転向を狙う意味でも、外交に於いては恐らくトランプの諸路線をマイルドにしつつ引き継いで行くと思われる。だが、米国内の軍産複合体等の既得権力層にどう向かい合うのかはまだ見えていない。

さて筆者はと言えば依然、上品なトランプよりも本家トランプの方が、習近平やプーチン、あるいは国内既得権層と渡り合うためには優位と考える立場だ。

相手に、本気でこいつを怒らせたらヤバいと思わせる「マッドマン・セオリー」は、半分本物のマッドマンの要素がないと相手に対し脅しが効かず成り立たない。その意味では、上品なトランプさんよりも下品な本家の方が有効だろう。

デサンティスの行っている、違法移民をそれに甘いNY等のサンクチュアリ・シティーにバスで大量移送する等のワイルドな行動も、テキサス州のアボット知事の後追いの印象が強い。

このため筆者は、デサンティスに傾いた支持者も、時間の経過につれ、また国際情勢の混沌の加速等と共にトランプ支持に戻ってくるのではないかと考えていた。

ワクチンを巡る論争

ところが、デサンティスは、新型コロナワクチンに関して思い切った行動に出る。

昨年12月に、「新型コロナワクチンに関連してフロリダ州民に対して行われた可能性のある犯罪と不正行為」について調査を行うべく、州最高裁に大陪審の招集を求めた。また、州に公衆衛生公正委員会を立ち上げ、米疾病対策センター(CDC)や米食品医薬品局(FDA)、米国立衛生研究所(NIH)が出した勧告について精査させることを約束した。フロリダ州最高裁はデサンティス氏の要請を認め、調査のための大陪審を招集した。

また年明けの1月17日、「コロナ対策の義務から永久の自由を実現する」と題した声明で州内の企業や学校がマスクの着用を義務化したり、ワクチン接種を求めることを永久に禁止するなどの提案を発表した。

一方のトランプは、在任中ワクチンの強制的接種に強く反対しつつも、ワクチンの開発・投入を「ワープ・スピード作戦」と名付け推し進め、デサンティスと対抗する文脈でそれが米国人の命を救ったと現在も主張している。

さてこの論争はどちらに軍配が上がるのか?

端的に言って、もし下記不等式が成り立つ場合はデサンティスに上がり、ワクチンで手を汚しちまったことになるトランプは窮地に追い込まれる。逆に成り立たない場合にはトランプの主張に軍配が上がる。

ワクチンの副作用等のリスク > ワクチンによるメリット

なお、トランプもデサンティスも、新型コロナに関する中国の責任追及をして行く事については、その姿勢を鮮明に表し一致している。

戦争にも匹敵したコロナ禍は、今後高感染性・強毒化変異株が流行しない限り、世界に夥しい死者と後遺症患者を残しつつ終戦して行く。

共和党大統領選予備選の有力2候補の論争が、ワクチンのメリットとリスクについての解明を促進するなら、世界にとっても望ましい事だ。

デサンティスのワクチンに関する姿勢は製薬会社等の利益と対立することになるが、その姿勢を貫けるのか、トランプに対抗して差別化するための方便の要素が強いのか、あるいはJFKのような運命を辿るのか、ダイナミックで目を離せぬ展開が予見される。