議員任期延長についての憲法改正条文案づくりに入ろう

玉木 雄一郎

Moeru Matsunoo/iStock

今国会初となる衆議院憲法審査会が開催されました。昨年は2月10日に開かれましたが、今年は立憲民主党や共産党の反対により、3月にずれ込んでしまいました。国民の代わりに議論する代議士であるにもかかわらず、会議を開くか開かないかに注力していた時代に先祖返りしたのは残念です。

国民民主党は12月14日に権力統制のための緊急事態条項の条文案を取りまとめており、今回の憲法審査会で資料として配付することができました。これまでも何度か審査会での資料配付をお願いしてきましたが、実現していませんでした。これからも具体的な提案を通じて国会での憲法論議を先導していきたいと思います。

3月2日の衆院憲法審査会で配付した緊急事態条項の憲法条文資料

憲法審査会発言要旨(2023年3月2日)

今国会、初めて憲法審査会が開会されたことを歓迎するが、せっかく昨年の通常国会では2月10日以来、2月中も4週連続で定例日に開催されていたにもかかわらず、今国会の初会合が3月にずれ込んだことは残念。もう「開かないこと」に力を使うのではなく、「開いて議論し成果を出すこと」に力を使おうではないか。

また、今後は、緊急事態条項、とりわけ議論が積み上がってきている「議員任期の延長規定」についてテーマを絞って議論し、残された論点について意見を集約した上で、具体的な憲法改正の条文案づくりに入ることを提案したい。

私たち国民民主党は、昨年12月、包括的な緊急事態条項についての条文案を党内で取りまとめた。改めて、我が党の考える緊急事態条項について、配付資料をもとに説明させていただく。

まず、何度も繰り返し申しあげているように、我が党の基本コンセプトは、「権力行使の容易化条項」としての緊急事態条項ではなく、むしろ、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、権力の濫用等に対する立法や司法による統制を明らかにする「権力行使の統制条項」としての緊急事態条項である。

まず、緊急事態の要件として、

① 外国からの武力攻撃
② 内乱・テロ
③ 大規模自然災害
④ 感染症の大規模まん延

の4つのカテゴリーを原則としつつ、「その他これに準ずる事態として法律で定める緊急事態」を設けている。さらに、単にこれらの事態が事実として発生するだけでなく、「通常の統治機構の運用によっては事態の収拾が著しく困難であるとき」という要件を加重している。

また、宣言を発令する際の手続きとしては、原則国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることとしている。宣言の期間は「30日以内」として、国会の事前承認で延長可としている。

次に、緊急事態が宣言された時の「効果」における、手続的統制と内容的統制について述べたい。手続的統制の第一として、まず、国民民主党では、「国会機能の維持」を大前提とし、国会中心主義を貫くこととしている。

具体的には、国会が開会している時の閉会禁止と、閉会時の召集義務を課している。また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定を考えている。これは、緊急事態の時だからこそ、国会の立法機能や行政監視機能を可能な限り維持しようとする趣旨である。また、解釈で認められたオンライン出席について、明文で規定すべきと考える。

それでもなお、定足数を満たすことが難しいなど、国会がその機能を果たすことができない場合には、ドイツにおけるミニ国会のような「両院合同委員会」による国会機能の代替についても規定している。この両院合同委員会において採られた措置は、国会の事後承認がない場合には、その効力を失うとしている。

このように可能な限り国会機能を維持する対応をしてもなお、「法律制定・予算議決を待ついとまがない特別の事情があるとき」には、「あらかじめ法律の定めるところにより」内閣が緊急政令・緊急財政処分を行うことができることとしている。これらの緊急政令や財政処分については、速やかに国会の承認が必要としている。

加えて、任期満了時に緊急事態が宣言された場合であって、「長期にわたって全国一斉の選挙の適正実施が困難であると認めるとき」は、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、議員任期の延長と選挙期日の特例を定めることができる規定を設けている。緊急事態条項のうち、この「議員任期の延長」規定については、これまでかなり議論の積み上げが進んでおり、条文化に向けて最優先で議論するテーマだと考える。

そして、この「議員任期の延長」に関して、国民民主党案であえてペンディングにしている論点が5つある。まず、①参議院の緊急集会の位置付け、②加重要件である「選挙実施困難要件」の具体的要件、③任期延長期間の上限、④解散後の前衆議院議員の身分復活のあり方、⑤延長における最高裁判所(司法)の関与のあり方について。これらは各党からさまざまな意見が出てきていると認識しており、今後、当審査会で議論を深め合意を得ていきたい。

次に、手続的統制の第二として、「裁判所による統制」を設けている。

国民民主党案では、まず一番最初の入口の段階で、緊急事態宣言の要件が満たされているのどうかの「要件充足性」について、いずれかの議院の4分の1以上による申し立てがあったときは最高裁が宣言を解除すべき旨を「勧告」できるようにし、内閣や国会の恣意的な宣言発令を抑制できるようにしている。

さらに、緊急事態宣言発令中に採られた法令、命令、条例及び規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断ができる規定を設け、最高裁が事実上の憲法裁判所しての機能を発揮できるようにしている。

続いて、緊急事態宣言の「効果」に関する「内容的統制」について概要を述べたい。まず、いかなる場合であっても「絶対に制限してはならない人権」を明記している。何度か当審査会でも紹介した、いわゆる「デリゲートできない権利」に関する規定である。

まず、ドイツ憲法のように、「各人権の本質的内容」の絶対的制限禁止を規定するとともに、「自由及び権利の制限は必要最小限のものでなければならない」旨も規定している。その上で、判例や学説の多数の見解等を踏まえ、奴隷的拘束、思想・良心・信教の自由の内心部分への制約や、検閲、拷問・残虐な刑罰の絶対的禁止を規定している。

最後に、国の基本法である憲法は落ち着いた環境の中で議論し手続きを進めるべきと考え、スペインやフランスの憲法を参考に、緊急事態宣言の発令中は、憲法改正、発議、国民投票ができないとの規定も設けている。

以上、国民民主党案の全体像を説明させていただいたが、我が党としては、特に、これまでの議論で合意点の多い「議員任期の特例」についての議論をまず急ぐべきであり、残された論点について意見を集約し、改正条文案の作成に入るべきと考える。

残された論点も、先ほど述べた5点に集約されてきたと思う。そこでまず、憲法54条2項の参議院の「参議院の緊急集会」を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、仮にできるとして、期間や権限などその限界はどこまでなのかなど、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したい。

なお、我が党は、緊急集会を仮に任期満了時にも開催できるとしたとしても、その機能は一時的、暫定的であって、その期間や権限には限界があり、例えば「70日を超える長期」にわたってまで、緊急集会の規定を濫用すべきではないと考える。現に、国会法102条の2では、内閣総理大臣が求めた事案の処理が終わると緊急集会は終了するとされている。

最後に、国民投票法に、実効性あるネット広告規制をどのように盛り込むべきかを判断するにあたって参考になるのが、2016年の米国大統領選挙でSNSを用いて投票行動を操作したとされる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」である。SNSにおけるフェイクニュースが民主主義に与える影響を考えるため、ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏を憲法審査会に呼んで話を聞くことを、改めて提案したい。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2023年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。