統一地方選の論点②:地方議員を甘やかさないために

【出典】筆者作成

統一地方選も後半戦。駅前にて演説会を行う候補者を見かけることが本当に多くなった。相変わらず「・・・をお願いします」「よろしく・・・のご支援を」といった声が連呼されている。何かしらメッセージを語りかけるよりも、名前を連呼することで人々の記憶に残ることを意識しているのかもしれない。

候補者の政策や公約を見てみると

「・・・図ります」
「・・・目指します」
「・・・応援します」
「・・・推進します」

といった文言が並ぶ。専門家として厳しい言い方をすると、地方自治体で実施されている内容・取り組みをただ並べているだけだともいえる。一部議員は公約実現のために熱心に活動していることも確かであるが、公約実現のために身を粉にしては活動しない議員も結構いたりする。そのような議員ばかりになってしまってよいのだろうか。

主権者はこれまで議員を甘やかしてきたのではないかとまで私は思っている。

(前回:統一地方選の論点①:この「まち」は消滅するの?

地方議員の限界と制約

選挙にあたって大事なことは、地方議員が国会議員とは違うと言うことは前提として理解してあげたほうがいい。役割も仕事も違うのだ。そもそも地方議員が「できること」が思った以上に少ない。

自治体は予算を組んで、住民サービスや公共事業などを行っている。その予算案を作成できるのは、知事、市長、町長、村長といったいわゆる「首長」のみである。議会には予算案の提出権限がない。わかりやすく言うと、議員は予算案を議論したり、賛成したり、反対したりことはできても、予算案を作成する権限は議員にはないのだ。もちろん、首長が作ってきた予算案の中身に対して主張できる、要望を伝える権利は持っている。

第一に、議員は議会が開会される前に、「要望」という形で伝えることができる。第二に、議会での質問において「こういう方向で予算を・・・」という形で伝えることができる。また、議員が伝えた予算に関しての要望が通らない場合は、首長にもう一度検討してもらい、議員の要望を反映した形で訂正してもらえるかもしれない。

しかし、実際のところ、首長の予算案が議会で否決されたり、修正されたりということはめったに無いというのが実態だ。

自治体で住民の行動に影響を与える、いわば自治体のルールである「条例」。これについても議員は議会に議案を提出することができる。とはいえ、議員による条例議案提出は非常にハードルがあり、事例として少ない。

その他、議員には監視機能があり、調査権を持っている。その調査権を使って、自治体の施策・事務事業・業務について調査を行ことができる。具体的には、関係者のヒアリングや資料の提出を求めることができる。さらに、人事の任命同意権を持っている。「議会の同意」という形で首長側が出してきた副市長、副町長、行政委員会の委員の人事案に対して「同意」または「不同意」することができるわけだ。

上記まとめると、予算案や人事案に対して賛否は示せるが、予算に対しては具体的に要望を伝えるくらいしかできない。頑張れば自分たちで条例も作ったり調査もできるが、現実としては難しい面がある。

国政と違って、トップが与党議員から選出できるわけではない。トップは首長選挙で選出されるので、議員ですらない。自治体の部局長は行政パーソンが務める。地方自治体は「2元代表制」という仕組みで動いており、地方自治体では、首長のほうが議員より圧倒的に権限を持っている。

他方、議員は主権者である住民の代理人として、住民と自治体をつなぐ役割、コミュニケーションの媒介者としての役割がある。自治体の広報公聴機能で不足する部分を議員が補足して活動するということだ。色々な住民の意見や要望を役所・役場に伝える、自治体の意見を住民に伝えるという媒介者としての役割を担っているといえよう。

主権者として地方議員に話しかけてみよう!

地方議員選挙おいて、主権者である住民はどういった理由で選んだっていい。例えば、(候補に)お世話になっている、自分たちのために動いてくれた、地域のために活動してくれそう、同級生だ、出身が一緒だ、近所に住んでる、見た目に親近感がある、政党の推薦があるから、(所属組織に)依頼された、などなど、投票する理由は、個々人の自由である。

ただ、投票する前に、おすすめしたいことがある。今回の選挙は4年に1回来るイベントであり、議員さんたちが街頭に立つ機会が多い。演説を少しばかり足を止めて聞いてみて見ると面白いかもしれない。

名前を連呼してるだけか?中身のある主張をしているか?

そのあとに、現場に残って、支持者たちが写真取ったりしている中、議員候補に近づいて話しかけることもおすすめしたい。自分の率直な疑問や意見、悩みをぶつけてみてみてもいい。主権者の意見に対して、議員さんはどう反応するのかを試すというわけだ。

真摯に対応してくれるか? 笑顔ではぐらかすか?
じっくり聞いてくれるか? 聞いたふりをするか?
明確に返事をするか? ごまかすか?
その場で終わるか? 後々意見をメールか何かで伝えてくれるか?

その反応を見るのも大事である。候補者から(是非投票してください!って)お願いされるのだから、それくらい試してもいいでしょう。主権者はこちらなのだ。少しばかり勇気がいるが、そうした主権者の主体的な活動が、結果として議員さんを育て、地域をよくすることにつながる。

学芸会みたいな議会をやっていて、活動実態も不明な議員を甘やかす余裕は、日本の各地域にはもうないのだから。

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